後から聞こえる声
「ほら、まだまだ行くぜ?《雷よ、貫け》」
ケアンが再び、呪文を唱える。
俺は対抗呪文を唱えようとした。
「《大地よ……!?》」
バリバリッ!!
「ぐっ……」
しかし、俺の呪文は発動せず、雷の槍が直撃する。
……精霊が応えない!?
「無駄だぜ。大地の精霊は抑えられてるからなぁ」
ケアンの言葉に、俺はブラッコを見た。
腕から血を流しながらも、呪文を唱え続けている。
成る程。
大地の呪文の使い手であるブラッコが、大地の精霊を抑えている訳か。
恐らく、俺がビズラの呪文を解除したのと同じ理屈だろう。
長い呪文を唱えれば俺に従う精霊も現れるだろうが、そんな暇は無い。
「それにしても……。普通の人間なら一撃であの世行きだってのに、しぶといな。まだまだ楽しませてくれよ」
ケアンが未だ、玉座に座したまま笑う。
…………。
「いつまで耐えられるかな?《雷よ、貫け》」
バリッ!
………………。
「レオン!? 何で避け無いんだよ!?」
俺の“後ろ”からキースの声が聞こえる。
確かに、俺なら避けるのは容易い。
しかし、キースやビズラ、ましてや餓鬼に避けられる物では無い。
ケアンはそれが分かっていて、わざと俺だけが避けられる速度に落としている。
「……やっぱり、“雷帝”ケアンの雷を避けられる奴なんか居ねぇんだよ」
ビズラが諦め切った様に呟く。
しかし、それにキースが反論した。
「雷帝でも何でも! レオンなら避けられるんだよ!!」
…………。
「おーおー、泣かせるねぇ。だが、魔王様は避けられないみたいだぜぇ?」
そう言って、ケアンは再び呪文を唱える。
「《雷よ、貫け》」
バリッ!
………………。
何度か喰らった雷の所為で、俺の身体は思うように動かない。
次第に、思考まで鈍り始めた。
……何でキースはあんなに必死なんだ?
俺はこの程度のダメージで死にはしないというのに……。
……何故?
……………………。
「《雷よ、貫け》」
「レオン!!」
バリバリッ!!
「ぐあっ……!」
…………?
雷は俺の元まで届いていない。
目の前ではキースが倒れていた。
………………………。
何故、キースが倒れている?
ひ弱な人間が、俺を庇ったというのか?
「ブハハハハ!!」
ケアンの笑い声が響く。
……俺は何をしているんだ?
何故、人間ごときに、膝を付かされている?
何故、勇者ごときに、見下されている?
何故、キースごときに庇われている?
…………何故、
俺様は、人間ごときに“手加減”している?
「ふっ……ハハハハハハ!!」
突然、笑い出した俺に、ケアンが怪訝そうな顔をした。
「何だ? 遂にイカれちまったか?」




