勇者は玉座に坐したまま
ケアンは玉座に座したまま呪文を唱える。
「《風よ、飛ばせ》」
ケアンの巻き起こした風が、降り注ぐ天井の破片を吹き飛ばした。
飛ばされた破片は俺を襲う。
「《風よ、飛ばせ》」
俺の風とケアンの風が部屋の中央でぶつかる。
「互角!?」
後ろからキースの声が聞こえた。
風は部屋の中央から動かない。
拮抗する2つの風に挟まれた天井の破片は、圧力に耐えきれず粉と化した。
……どーすっかな。
慣れてないとは言え、俺の呪文と互角とはな。
今度は床でも抜いてみようか……。
いや、クソ親父の呪いがある。
もし下に誰かいて下敷きにすると面倒だ。
考えていると、ブラッコが何か呪文を唱えようとしていた。
正直、風の力が拮抗している今、横やりを出されるのはありがたくない。
俺は風の呪文を持続させたまま、懐からナイフを取り出すと、ブラッコに向けて投げる。
「くっ……!?」
ナイフは正確に、ブラッコの腕を貫いた。
さて、そろそろケアンの呪文も途切れる頃だろう。
元々、そんなに長く続く呪文ではない。
ケアンも分かっている筈だ。風が止んだ瞬間が勝負だな。
お互いの風が徐々に収まる。
完全に風が止む直前。
俺はケアン目掛けて飛び出した。
一瞬で間合いを詰め、刀を振るう。
ガキィン!!
俺の一閃をケアンの剣が受け止めた。
ケアンがニヤリと笑う。
「《雷よ》」
バリッ!
…………!!
「へぇ、流石は魔王陛下。今のを喰らって呻き声一つ上げないとは」
ケアンの関心したような声を聞きながら、俺はケアンから飛び退いた。
……何だ、今のは?
この俺様が気付けない程、早いだと?
俺としたことが、雷の一撃を喰らってしまった。
足元がフラつく。
「さて、これはどうする? 《雷よ、貫け》」
ケアンの回りに雷の槍が現れ、俺に襲い掛かる。
……?
普通よりは早いが、先程よりは遅い。
俺ならば避けるのは容易いが、何故?
そう思った瞬間、ケアンの笑みが目に入り、俺は答えに気付いた。
バリッ! バリッ!!
チッ……。
雷の槍をまともに受け、俺は片膝をついた。
「レオン!!?」
「ブハハハハ!!」
キースの叫びと、ケアンの笑い声が被る。
「何やってんだよ!? お前なら避けれただろ!?」
……阿呆が。
俺はキースの叫びをシカトした。




