勇者との邂逅
俺の命令に、ビズラは頓狂な声を上げた。
「お前……。何を言ってるんだ?」
「俺様の下僕になれば、殺さないで置いてやると言っている」
「いや…その前に、お前もケアンに殺されるに決まってんだろ!?」
怖れているだけあって、ケアンの強さを信じて疑わないらしい。
めんどくさい奴だ。
「なら、俺が殺されなかったら下僕になれ」
「…………本気で言ってんのか?」
「恐ろしい事に、この魔王様は本気らしいぜ」
キースがニヤニヤしながら口を挟む。
ビズラは暫く呆然とした後、笑い出した。
「ハ、ハハハ……。良いぜ、ケアンを倒せるって言うなら、魔王の下僕でも何でもやってやるよ」
「なら、お前は今から俺様の下僕だ。さあ、ケアンの元に案内しろ」
「仰せのままに。魔王陛下」
半ばやけくそだろうが、ビズラは慇懃無礼にそう言うと、扉を開けた。
もう、手は震えていない。
中に入ると、そこは広間の様になっていた。
豪奢な絨毯が敷き詰められた部屋の奥。
一段高くなった所に玉座のような椅子が鎮座している。
その椅子に悠然と座る男が口を開いた。
「遅かったじゃねえか。待ちくたびれたぜぇ」
玉座に腰掛けた男は立ち上がると、俺に向かって大袈裟な身振りでお辞儀した。
「ようこそ、魔王陛下。わざわざ討伐されに来て頂いて感謝するぜ」
……こいつが、ケアンか。
体格は俺と同じくらい、灰色の髪をオールバックにしている。
顔は笑顔だが、灰色の瞳には隙が無い。
俺の正体も分かっている様だ。
「俺は結構、綺麗好きでな、先にゴミの始末をさせて貰うぜ」
そう言って、ビズラに目を向ける。
ビズラの身体が震え出した。
「ビズラぁ、お前。随分仲良くなったみたいじゃねえか」
「お、俺は……」
「お陰で待ちくたびれちまったたぜ。どうしてくれるんだ?」
「…………」
「なぁ、ブラッコ。お前ならどうする?」
ケアンの問い掛けに、玉座の傍らに立っていた黒髪の男が答えた。
「魔王もろとも始末するのが宜しいかと」
恐らく、ブラッコと呼ばれたこの男が四天王の最後の一人だろう。
細い目は開いているのか閉じているのか良く分からない。
「もろとも、ね。俺は好きな物は最後に食べる派なんだ。……ブラッコ」
「はっ」
ケアンの言葉に、ブラッコが一歩前に出る。
「《大地よ、貫け》」
石で出来た床が盛り上がり、突起となってビズラ、キース、餓鬼の3人を襲う。




