仕掛けはダンジョンの基本
ビズラは黙々と廊下を進む。
明らかに顔色が悪い。
「……あいつ、大丈夫か?」
ビズラの後に続きながらキースが呟く。
「さあな」
「最上級の呪文が使える奴が、ここまで恐れる相手って……」
キースの呟きが聞こえたのかは解らないが、ビズラが突然足を止めた。
「ここだ」
そう言って、廊下に飾られた絵画を指し示す。
それを見たキースが言った。
「外すと裏に扉がって奴か? またベタな……」
「違う」
ビズラに即効で否定され、キースが軽く落ち込む。
「……これか?」
俺は絵画の隣に飾られていた鎧から剣を抜き取る。
それを見たビズラが少し驚いた顔をした。
「良く分かったな」
「それ、どうするの?」
餓鬼が不思議そうに聞いてくる。
俺は剣を、絵画の黒い模様――良く見ると窪みになっている――場所に差した。
カチリ
小気味良い音と共に絵画が壁から剥がれ落ちる。
剣が鍵になっていたのだろう。
「や、やっぱ、絵の裏に扉あるじゃん!」
キースが勝ち誇ったように言うと、ビズラがボソリと呟いた。
「……剣を使わなかったら爆発する仕組みだ」
「…………」
気付いて無かったのだろう。キースは途端に黙り込んだ。
阿呆なキースは置いておいて、俺は扉に手を伸ばす。
「……今なんか、俺の事馬鹿にしたろ」
「それがどうした?」
「嘘でも否定してくれよ……」
キースを適当にあしらって、扉を開ける。
隠し扉の先は階段になっていた。
中を見た餓鬼が首を傾げる。
「どれを登るの?」
そう、階段は一つではなく幾つかに枝分かれしていた。
まるで迷路だ。
「こっちだ」
ビズラが迷いなく進む。
暫く階段を登って行くと、やがて立派な拵えの扉の前に出た。
「ここだ」
ビズラはそう言って扉に手を伸ばす。
しかし、その手は震えていた。
「……ケアンが怖いのか?」
俺が聞くと、ビズラは目を反らした。
「あ…当たり前だろ。相手はあのケアンだぜ……。俺…きっと殺される……」
「殺されるって、大袈裟な……。だって、仲間だろ?」
キースの言葉に、ビズラは暗い笑みを浮かべた。
「仲間…ね。端からはそう見えるのかもな。でも、実際は……」
「…………」
ビズラが俯くと、つられてキースも黙り込む。
……ふむ。
「おい、お前。ビズラだっけか?」
「……何だよ?」
俺が声を掛けると、ビズラは顔を上げた。
「俺様の下僕になれ」
「……はぁっ!?」




