キースはここに来るまでに勇者50人と戦っています。
「嘘だろ!? 無理無理! だって俺、もう魔力が……」
「ここまで乗り込んで来たんです。あまり無様な死に方はしないで下さいね?」
「って、ちょ…レオン!?」
近付いてくるシアンに後退りながら、俺に助けを求めてくる。
俺はキースの肩をポンッと叩き、言った。
「頑張れ」
「嘘だろぉ!!?」
キースの叫びが虚しく響き渡った。
餓鬼の方を見ると、物陰に隠れていた。
賢明な判断だろう。
「では、行きますよ」
シアンは律儀に声を掛けてからキースに襲い掛かった。
ヒュッ
シアンが手にした鞭が風を切る。
「うどぁっ!!」
キースが無様な悲鳴を上げながら、間一髪躱す。
「待てって! 俺は接近戦はあんまり……」
ヒュッ
「うわっ!」
待てと言われて、待つ敵は居ないだろう。
どんどん追い詰められている。
「オイオイ、お前の相手は俺だぜ?」
キースを見ていたら、ビズラが話し掛けてきた。
いつの間にか、手には槍を持っている。
「余所見してる暇は無いぜ!」
ビズラが槍を振るう。
届く距離では無かったが、妙な気配を感じ、避ける。
すると、槍の先から炎の刃が飛び出し、先程まで俺がいた空間を切り裂いた。
「へぇ……。今のに気付くなんて、勘は良いようだな」
「つまらない……。ただの無能な腰巾着だったのですか?」
追い詰められたキースを見て、シアンが溜め息をついた。
流石にキースが反論する。
「無能だとぉ!? ……いや、まあ、腰巾着は否定はしきれないけど。無能って事は……」
……反論しきれてねぇし。
「もう良いです。せめて美しく散りなさい」
ヒュッ
シアンが鞭を振るう、が。
「《風よ、刻め》」
キースの巻き起こした風によって、鞭が切り刻まれた。
「はっ! 鞭さえ無けりゃこっちのもんだな!」
キースが勝ち誇った様に言った。
しかし、シアンの顔に焦りの色は無い。
むしろ楽しげだ。
「ふふ。やはりそうでなくては、楽しくありませんね」
「なんで余裕そうなんだよ……」
その様子を見て、キースが嫌そうな顔をする。
「ふふ……。良いものを見せてあげますよ」
「やだ」
キースはキッパリと断ると呪文を唱えた。
「《風よ、刻め》」
「《水よ、成せ》」
シアンも同時に唱える。
風の刃がシアンに襲い掛かるが、何かによって妨げられた。
ヒュッ……。
「げ……。また鞭?」
「そう。でも今度は、さっきと違いますよ」
そう言ったシアンの手には、水で出来た鞭が握られていた。




