本の名前はたぶん四次元ブック
「もう罠は終わりか……?」
「さあな」
キースが先を見ながら聞いたが、幾ら俺の目が良くてもここからでは分からない。
「ああ、そうだ。今呪文で運んでやるよ。流石のレオンも飛び越せないだろ?」
「必要無い」
「……まさか、飛べんの? だって、風の呪文で自分を運ぶのは難しいし……」
確かに他の人や物を運ぶより、自分を運ぶのは難しいだろう。
だが、それだけだ。
「《風よ、運べ》」
俺は呪文を唱えると、餓鬼を持ってキースの隣に移動した。
「…………。さっすが、レオン様」
当たり前だ。
餓鬼を放すと、階段に向かって進んだ。
「もう無い…よな?」
キースが罠を警戒して呟く。
2段構えのが来た後だ、もう無いと思うのが普通かもしれない。
……だからこそ。
俺なら、階段の手前に仕掛ける。
少し進むと、階段が見えてきた。
「やっと階段か」
キースがそう呟いて、上ろうとする。
一段目に足を伸ばした時。
「あ」
「うえぇっ!!? 何! 何!?」
俺が呟くと、キースが驚いて飛び退いた。
すぐさま俺の後ろまで戻ってくる。
「な、な、な……?」
意味不明なことを喚きながら怯えた目を向けてきた。
「……何も無い」
「…………は?」
俺の言葉に、キースが聞き返す。
いや、言葉通りの意味なんだが……。
予想に反して、そこには何も無かった。
妙だな。
2重の落とし穴とか作る奴ならここにも何かある筈なんだが……。
「な…何も無いなら脅かすなよ!!」
キースが俺の後ろから文句を言ってくる。
……確かに何も無いが、何も起こらない筈はない。
キースに先に行かせて確かめさせても良かったのだが、勇者ごときに俺の下僕を潰されるのも癪だ。
そう思い、俺は懐から本を取り出した。
「あっ、不思議な本だ!」
本を見て餓鬼が言った。
そう。これは俺が刀を取り出した本だ。
パラパラとページを捲る。
「こ、今度は何が出るんだ……?」
餓鬼とキースが興味津々といった様子で見つめる中、俺は目的のページにたどり着いた。
目的のそれを本から取り出す。
「…………え?」
「……紙人形?」
餓鬼とキースが、俺の手にした物を見て首を傾げる。
それは、紙を人形に切っただけの一枚の紙人形だった。
キースが紙人形を指さして聞いてくる。
「それ……。どうするんだ?」
「こうする」
短く答えると、本から取り出した小さなナイフで自らの指を浅く切った。
プクッと、玉のような血が滲む。
それを紙人形に押し付け、血で五芒星を描いた。




