勇者の屋敷へ
「ここがケアンの屋敷だよ」
「どうすんだよ? まさか正面から乗り込む気じゃ無いだろうな?」
どうするかな……。
面倒だから正面から行くか。
俺はそのまま正門に向かう。
キースが何か喚くが無視。
正門には2人の門番がいた。
呪文の一発でどかしてもいいが、最初から騒ぎにすると後が面倒だな……。
俺は懐から一冊の本を取り出した。親父からパクって来た本だ。
パラパラとページを捲る。
「いきなり本なんか出してどうしたんだよ?」
キースが不思議そうな顔をした。
目的のページ見付けると、俺は本の中に手を入れた。
ズルリ、と。
明らかに本の厚みよりも長さのある刀が引き出された。
「うええっ!? 何で!?」
「すっげぇ~」
キースが驚き、餓鬼が感動する。
「よし」
俺は柄も、鍔も、鞘も、さらには刀身も、総てが黒い刀を腰に差すと本を懐に戻した。
そのまま何事も無かったかのように正門に向かう。
「ええっ!? 説明無しなの!?」
キースが五月蝿いので俺は一言で説明する。
「うるせえな。これはそういうもんなんだよ」
「そういうもんって……。それ説明になってねえし……」
親切にも説明してやったのに、キースはまだ何か文句を言っていた。
ぶつくさ言っているキースを置いて、門番に近付く。
こちらに気付いた門番が声を掛けてきた。
「止まれ! ケアン様の屋敷に何用だ?」
俺は更に近付きながら答える。
「いや~、ちょっと。死んでくれないかと思って、さ」
ドサッ
言葉が終わると同時に、2人の門番は地に伏していた。
俺が居合い抜きで倒したのだ。
勿論峰で、だが。
「早っ! いつ抜いたんだよ!?」
「そいつらどっかに隠しとけ」
「あ? ああ。《風よ、運べ》」
キースが門番を正門の内側に隠すのを見届けると、俺は屋敷に向かう。
「姉ちゃんがいるのは、あっちの離れだよ!」
餓鬼が屋敷の隣の建物を指して喚いた。
が、俺は気にせず屋敷に向かった。
「ど、何処行くの!? 姉ちゃんを助けてくれるんじゃあ……」
「誰がそんな事言った?」
「ええっ!? だって……」
俺との会話を思い出したのか、餓鬼が黙る。
俺は助けるなんて一言も言っていない。
固まってしまった餓鬼を見てキースがため息を付いた。
「はぁ、しょうがねえな……。おい、坊主。この魔王様は勇者を倒してくれるらしいぞ」
「えっ? あのケアンを?」
「ああ、恐ろしい事に本気らしい。まっ、上手く行ったら姉ちゃんを迎えに行けば良いんじゃないか?」




