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魔王クエスト  作者: ぽち太郎
第2章
20/40

大きな街にはたいてい影がある

「助けてくれるの!?」


「話を聞くだけだ」


俺の言葉に一瞬顔が曇ったが、やがてたどたどしい口調で説明し出した。


「この前……。勇者がこの街に来たんだ。勇者がこんな所に来るのは珍しいから姉ちゃんと見に行ったんだ。そしたら……。そしたら、あいつ等も僕達に気付いて……。それで姉ちゃんを見て、じょうたまだとか良く分からない事を言って……」


「姉ちゃんの事を捕まえて、一緒に来いって。姉ちゃんは嫌だって言ったのに無理矢理連れていったんだ。僕も、やめろって言ったんだけど、殴られて……」


そこまで言うと、餓鬼は泣きそうになっていた。


キースがそんな餓鬼と目線を合わせて聞く。


「姉ちゃんの年は幾つなんだ?」


「16」


「美人か?」


「うん」


「成る程な……」


キースが呟くと、餓鬼が俺様の足にしがみついて来た。


「ねえ、お兄ちゃん逹、魔王でしょ!? 勇者をやっつけてよ!」


「レオン、どうするんだ?」


ふむ……。


「面倒だな」


俺が答えると、餓鬼は肩を落として呟いた。


「……そうだよね。ケアンの所に行ってくれる人なんていないよね……」


ケアン?

勇者の名前か?


その名前にキースが反応した。


「ケアン? お前の姉ちゃんを連れてったのは、あのケアンか?」


「うん。今までに魔王を3人も討伐した、英雄ケアン・アリテだよ」


…………。


「餓鬼。その勇者の家はどこだ?」


聞くと、餓鬼は一瞬ポカンとした。


しかし、意味を理解すると、よっぽど嬉しかったのだろう。勢い込んで言った。


「お城の近く! 一番大きなお屋敷だよ!!」


「おい、レオン! 行く気か!?」


「ああ」


「ちょ、嘘だろ!? あのケアンだぜ?」


「面白い」


餓鬼を拐ったチンピラに用は無いが、それが魔王を倒した勇者なら話は別だ。


「いくらレオンでも、それは……」


キースが何やら呟く。

それに同調する声が上がった。


「そうじゃ、止めておきなされ」


……誰だ?


「じいちゃん!」


「お前さん方、何処から来なさったか知らんが、その子の言うことは気にせんでええ」


声の主は元は黒かったであろう髪がすべて白くなった爺だった。

餓鬼が喚く。


「何でだよ! 姉ちゃんが拐われたんだぞ!」


「勇者に逆ってはならん」


爺は全てを諦めた様な、濁った目をしていた。

これは生きる目的を無くした奴隷の目だ。


「レオン、これ以上関わらない方がいいぜ」


キースの言葉に、爺も頷く。


「そうじゃ、勇者に逆らうな。それがこの国の決まりじゃ」


「生憎、この国の者じゃ無いんでね。そんな決まりに従う気は無い」


俺の言葉に、爺が怒鳴る。


「この街の者が迷惑するんじゃ!」


「知るか」


「な、なんじゃと……」


「この街がどうなろうと俺には関係無い」


きっぱりと言い切ると、俺は王城に向かって歩き出した。


「おい、餓鬼。案内しろ」


「う、うん」


餓鬼が慌てて付いてくる。

爺がまだ、何やら喚いていたがシカトした。


そこに、キースの声がかかる。


「ちょ、置いてくなよ」


「付いて来いとは言っていない」


「そりゃねえだろ~」


結局、キースも付いて来た。

3人で王城の方に歩き出す。


スラム街を通り抜ける間、姿は見えないが幾つもの視線を感じた。


騒ぎを聞き付けた住民が遠巻きに俺様を見ているのだろう。


スラム街を抜けると国の様子は一変した。


東西南北に伸びる道に、きちんと区分けされた家々。


その町並みを暫く歩くと、やがて建ち並ぶ家々の規模が変わってきた。


庭のある屋敷と呼ぶべき物が建ち並んでいる。


聞いてもいないのにキースが説明し出した。


「この辺は皆、勇者の屋敷だ。何かしら国に貢献した、な」


その中でも、一番王城に近い所に目的の屋敷はあった。

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