塀を超えた先はスラム街でした
一息付いて辺りを見渡すと、そこは王都とは思えない場所だった。
木造の、吹けば飛びそうな家と呼ぶには粗末な建物が密集していた。
大体は2階建て、かなり風通しは良さそうだ。
廊下は歩けばミシミシと音を立てる事だろう。
「何だここは? これが王都か?」
俺の呟きにキースが我に返った。
「レオン! 何だよ今のは!? あんなの見た事も聞いた事もないぞ!」
「当然だ。俺が考えたんだからな」
「……オリジナルの呪文が作れるのが一流だ。でも、二つの属性を混ぜるなんて誰にも出来ないぞ」
複数の属性を操れる者がいないなら、他に出来る奴がいないのは当然だろう。
面倒なので、それには答えず別の事を聞いた。
「それより、ここは何処なんだ?」
俺の問いにキースは辺りを見渡した。
「ここはスラム街だな。貧乏人達が住む区画だ」
「スラム街?」
「ああ。正門から王城までの道沿いに金持ちどもが集まって、貧乏人は隅に押し寄せられてるのさ」
「金持ちってのは、勇者か」
「まあね」
つまり、勇者になれないような力の弱い者が押し込められている区画なのだろう。
その時、後ろから声が掛けられた。
「お兄ちゃん達、どこから来たの?」
見ると、薄汚れた襤褸を纏った少年が立っていた。
「塀を越えて来たよね!? お兄ちゃん達、魔王?」
どうやら、俺が着地する所を見ていた様だ。
まあ、勇者の国に不法侵入するのは魔王くらいかも知れない。
キースが慌てて言う。
「いや、俺達は……」
「魔王でしょ! 僕も予言聞いたもん! 王様をやっつけに来たの?」
……五月蝿い餓鬼だ。
キースの言葉を遮って騒いでいる。
「五月蝿い、黙れ」
俺の一言に、餓鬼は黙った。
しかし、何か言いたさそうな顔をしている。
「……何の用だ」
聞いてやると、途端に顔を輝かせた。
「あの…あのね、姉ちゃんを助けて欲しいんだ!」
……何で俺に頼むんだ?
この餓鬼は俺の事を魔王かと聞いてきたくせに。
どうやらキースも同じ事が気になったらしい。
「何で俺達に頼むんだ? それこそ勇者に頼めば良いだろうに」
キースが聞くと餓鬼の顔が曇った。
「それは……出来ないよ。だって、姉ちゃんを拐って行ったのは……。勇者なんだ」
「……だから、魔王である俺達に助けて欲しいって事か?」
「うん」
「いや、そもそも俺等は魔王じゃ…「餓鬼、詳しく話してみろ」
「えっ? ちょ、レオン?」




