ハードモードは勇者とのエンカウント率が高い
「お前が魔王か!?」
「違います。《風よ、飛ばせ》」
「魔王は俺達が倒~す!!」
「人違いです。《風よ、阻め》」
「魔王は…「違うっつってんだろうが!!」」
王都に向かう道すがら、勇者の団体との戦闘が5回くらいあった。
……いくらなんでもエンカウント率高すぎないか?
まあ、全てキースに片付けさせたが。
「レ~オ~ン~お前も少しは手伝えよ~」
流石に疲れたのか、キースが文句を言う。
そんなキースをちらっと見る。
いつもの軽薄そうなニヤケ顔から疲労した感じが見て取れた。
しかし、俺は黙って馬を走らせる。
「えぇっ!? スルー!? いや、ちょ、俺、もう魔力が……」
そこに一組の勇者が襲い掛かって来た。
「貴様が魔王かっ! 覚悟っ!!」
馬鹿正直に真っ正面から突っ込んで来る。
俺はキースを見て言った。
「よろしく」
「無理っ!!」
キースは速効で拒否した。
本当に魔力が尽きたらしい。
「チッ……使えねぇ」
「ちょ、それ酷くない!? 俺、もう勇者50人くらい倒したぜ!?」
たかが50人で音を上げるなんざ……。
まあ、並の人間に真似できる事では無いか。
「しょうがねぇな……。《風よ、飛ばせ》」
「うわぁ!!」
俺の溜め息混じりの一言に、勇者達はあっさりと吹き飛ばされる。
後ろからキースの呟きが聞こえた。
「……レオンがやった方が早いじゃん」
それにしても、邪魔が入るせいで中々先に進めない。
日が沈みかけた頃、やっと王都が見えて来た。
夕陽を受けて外壁が真っ赤に染まっている。
「や~っと見えて来たかぁ。それで、どうするんだ? 真っ正面からは入れないぞ」
「正面が駄目なら裏に回るまでだ」
「……やっぱり? でも塀は2m以上あるし、さっきの町と違って塀の上を兵士が巡回してるぜ」
「関係無い」
そう言って、俺は正門の横手に回った。
少し離れた位置から塀を見上げる。
確かに、兵士が巡回しているな。
「それに、俺、魔力尽きてるから、自力じゃ塀を越えられないんですけど……」
……置いてこうか。
「あっ! 今、置いて行こうかとか考えたろ!」
…………。
「レオンの考える事は大体解るようになって来たぞ」
キースが得意気に言う。
……何かムカつく。
やっぱ、置いてくか。
しかし、それも伝わったのかキースが慌てて言った。
「調子に乗りました! ごめんなさい! 置いてかないで、レオン様っ!」
……しょうがねぇな。
五月蝿いキースは放って置いて、俺は巡回している兵士を見る。
さて、どうするかな。
キースの話ではこの世界の呪文は一人につき一属性らしいが、俺には関係無い。
さっきのですでに使い方はマスターした。
この世界では、いちいち精霊にお願い(詠唱)して、その力を借りる。
力を借りるには借りる本人にも魔力が必要で、大きな魔力を持っている奴なら詠唱を省略出来る様だ。
そして、魔力の多い俺がちゃんと詠唱すればこんなことも出来る。
「《風よ、大地よ、我に力を貸したまえ》」
「なっ……! 二重詠唱!? 冗談だろ!?」
俺の詠唱を聞いて、キースが驚いた声を上げる。
……冗談等では無い。
俺は塀に掌を向ける。
「《混じり合って、舞い踊れ》」
大地が乾き、砂となり、風がそれを舞い上げた。
巡回中の兵士を砂嵐が襲う。
「行くぞ」
声をかけるが、キースは呆然としている。
「嘘だろ……」
めんどくさい奴だ。
「《風よ、運べ》」
俺は呪文を唱えると、キースの襟元を掴んで風に乗った。
風が俺達を塀の上に押し上げる。
「うわわわっ」
「黙ってろ」
そのまま、砂煙に紛れて塀の向こうに着地した。
兵士達は突然の砂嵐に驚いているが、俺達には気付かなかった様だ。




