なぜか勇者に間違えられる
さて……。
あの人数を蹴散らすのは簡単だが、問題は方法だ。
いつもの呪文を使えば、キース程の使い手なら俺が魔王だと気付くだろう。
別に気付かれても良いが。
それよりは黙っていて、使ってやる方が便利そうだ。
「おい、レオン!? もう来るぞ!」
考えている間にも勇者の団体は近付いて来る。
だったら……。
俺は迫り来る勇者達に向けて呪文を唱えた。
「《風よ、飛ばせ》」
俺の呪文で先頭を走っていた3人が後ろに吹っ飛ぶ。
「なっ……。俺と同じ!?」
キースの呪文を真似てみたが、威力がイマイチだ。
だが、今のでこの世界の魔法の感覚が大体掴めた。
……こうだろ。
「《大地よ、阻め!》」
俺の言葉に大地の精霊が従う。
勇者達の前で地面が盛り上がり、壁となって行く手を阻んだ。
勇者達が一ヵ所に集まった所で更に呪文を唱える。
「《水よ、降り注げ》」
水が、勇者達に降り注ぐ。
全員がずぶ濡れになった所で続ける。
「《雷よ、落ちろ》」
ドーン!
壁の向こうに雷が落ちる。
辺りが静かになると、恐る恐るキースが声をかけてきた。
「……殺した…のか?」
「いや、生きてるぜ」
殺す訳がない。
俺の放った雷は勇者の誰一人にも直撃はしなかった。
水を通して感電しただけだ。
「まあ、こんなもんだろ」
「…………」
キースが信じられない物を見るような目で俺を見る。
「レオン、お前……」
……やり過ぎたか?
「まさか、伝説の勇者の子孫か何かか!?」
………………はぁ?
何でそうなる?
「普通使える呪文は一人につき一属性のみ。今までで唯一全属性使えたのが、あの伝説の勇者様なんだ」
あ~……。
成る程。
「それで王都に行きたかったのか?」
「は?」
「国王に謁見するんじゃ無いのか? 伝説の勇者の子孫なら直ぐに会ってくれると思うぞ」
いや、違うし……。
勇者に間違えられるなんて、それだけで虫酸が走る。
それに国王に会っても今の俺には殺せないから、あまり意味がない。
顔くらい見とこうか、とは思ったが……。
「何を勘違いしてるか知らんが、俺は勇者の子孫なんかじゃ無い」
「違うのか? じゃあ何で……?」
「さあな」
キースは首を傾げたものの、それ以上追及はしてこなかった。
「とにかく、これ以上来ない内に行くぞ」
「そうだな」
俺様は倒れている勇者達を避けて、王都へと馬を走らせた。




