まだまだ勇者が現れた!
「勇者の団体が来ると困るのか?」
馬に乗りながらキースに問いかける。
俺はともかく、勇者になったのならキースは困らない筈だ。
俺の疑問の意味が解ったのか、キースは回りを見回しながら早口で説明し出した。
「そんなに早く勇者になれる訳ないだろ。お前が行っちゃうから、俺も慌てて町を抜け出して来たんだよ。だから勇者に見付かるとカモられるか、問答無用で討伐される」
……こいつは馬鹿か。
何でそこまでして追って来るんだ?
「とにかく、急げよ。今から来る奴等は殺気立ってる筈だ。魔王がいないなんて言っても、代わりに俺等が討伐されるだけだぞ!」
そんな事になっても返り討ちにしてやるが。
だが、殺さずに動けなくするのも面倒だな。
俺はキースを置いて馬を走らせた。
「だから、置いてくなって」
後ろからキースも付いてくる。
しかし、数分も走らずに俺は馬を止めた。
「どした? ……あらら、遅かったか」
後から来たキースも先を見て止まった意味が解ったようだ。
「貴様が魔王か!?」
王都の方から勇者の団体が来ていた。
既に臨戦体勢に入っている。
数はざっと10人ちょいか。
俺は、勇者の問いに余裕たっぷりに答えた。
「さあな」
否定しない俺に勇者共が殺気立つ。
「どうすんだよ?」
「めんどい、任せた」
「は?」
雑魚を相手にするのも面倒だ。
俺は全てキースに任せる事にして、傍観の姿勢を決め込んだ。
「ちょ、レオン?」
「先ずはお前からだぁ!!」
戸惑うキースに向かって、勇者の一団から騎乗した3人が武器を手に突撃してきた。
「《雷よ、我に力を……》」
後続からは呪文を唱える声が聞こえる。
「わわっ! え~っと《風よ、飛ばせ》」
キースの回りに風が巻き起こる。それは突風となって勇者達を吹っ飛ばした。
だが、後続までは風が届かなかったために一斉に呪文が完成した。
「《雷よ、貫け》」
「《炎よ、降り注げ》」
「《水よ、撃ち抜け》」
雷が、炎が、水がキースに向かって飛んでくる。
「うっそ、まとめて!? 《風よ、阻め!》」
しかし、それらの全てがキースが起こした風の壁によって、阻まれた。
あの数を防ぐとは……。
勇者達も驚いた様で、慌てて次の呪文を唱え出した。
だが、遅い。
「《風よ、切り裂け!》」
キースの呪文は勇者達の半分の時間で完成すると、無数の風の刃が勇者達を切り刻んだ。
「ご苦労」
全員を倒したキースに労いの言葉をかけてやった。
しかしキースは気に入らなかった様だ。
「ご苦労。じゃねぇよ! レオンも手伝えよ!」
「一人で充分だったじゃないか」
「いや、ちょっとヤバかったって……」
「無傷の癖に?」
「いや……。まあ、そうだけどさ……」
俺が悪びれる気もないのが分かったのか、キースは肩を落として言った。
「まあ、もう良いけどさ……。無事だったし」
「そうか。なら、あれもよろしく」
続けた俺の言葉にキースは固まった。
「……は?」
俺が見ている方から馬が上げる土埃が近付いて来ていた。
今度は王都とは反対方向だ。
「…………さっきより多くない?」
「だろうな」
恐らく倍はいるだろう。
「それを俺一人で?」
「ああ」
「…………」
キースは俺の顔と、土埃の方を交互に見ている。
やがて……。
「無理!!」
キースが大声を上げた。
「相手にしなくても良いだろ、逃げようぜ!」
「相手にしなくても良いが、もう遅いと思うぞ」
キースが悩んでいる間に、土埃は段々と近付いて来ていた。
……さて、どうするか。
流石にあの人数はキース一人では厳しいだろう。
「……しょうがねぇな」
呟き一歩前に出る。




