勇者が現れた!
「やばいな、今頃ギルドは満員だぞ」
キースが呟いたが、勿論俺はギルドに行くつもりは無い。
悩むキースを置いて歩き出した。
「もう場所を選んでる場合じゃないか……。って、おい! 何処に行くんだよ」
「馬車が出ないなら歩いて行くまでだ」
「いや、だから町から出られないって」
「門から出なければ良いだけの話だろう?」
「塀を越える気か!? そこまでしなくても、俺が勇者になるまで待ってくれれば……」
「めんどい」
「…………」
「別に付いてこいとは言っていない。お前はギルドに行けば良いだろう」
俺はそう言うと、町の端に向かって歩き出した。
これで厄介払いが出来た。
歩くのはダルいが、転移魔法は見たことも無い場所に転移は出来ない。
仕方ないだろう。
考え事をしながら歩いていると、気付けば塀の前まで来ていた。
塀の高さはザッと2mって所か。
「浮かせ」
呪文を唱えると、俺の身体にかかっていた重力が軽減された。
俺は地面を軽く蹴っただけで塀の上に飛び上がる。
軽々と塀を越えると、呪文を解除する。
太陽を見て方角を判断すると、王都に向かって歩き出した。
少し行けば街道が見えてきた。が、
そこには4人組の姿があった。
気にせず通り抜けようとすると、一人が声を掛けてきた。
「……お前、何処から出てきた?」
どうせ勇者だろう。
めんどいのでシカト。
「おい! 待てって言ってんだよ」
チッ……。
俺が振り返ると、勇者らしき男が同じ質問をした。
「何処から出てきた?」
「さあな」
「……お前、勇者か? だったら証を見せろ」
そう言って、男は腕の焼き印を見せてきた。
なるほど、あれが勇者の証か。
「そんなもんねぇよ」
「証無しで町の外にいる奴は問答無用で魔王扱いだぜ」
……魔王で間違っていないのだが、男達の言いたい事は違うようだ。
「それでは困るだろう。特別に俺達が目的地まで護衛してやるよ」
「勿論、特別料金でな」
男の言葉に、別の男が続けた。
残りの2人はニヤニヤと見つめている。
追い剥ぎの様なものか……。
確かにあれだけ急じゃあ町に入り損ねた奴も居るだろう。
「必要無い」
俺はそう言うと、先に進もうとした。
すると男が腰の剣を抜く。
「おいおい、俺達の話を聞いていたか? 断るなら魔王と見なして討伐するぜ」
「…………」
折角、俺が穏便に済ませてやろうと言うのに……。
俺が黙ったのを見て脅しが効いたと思ったのか、剣を見せながら男が近付いて来る。
俺は右手をを男に向かって翳して言った。
「寄るな」
ドンッ!
鈍い音と共に、男の身体が何かに弾かれたように真横に飛んだ。
「ぐあっ!」
「うわっ!!」
後ろにいた男の仲間にぶつかり一緒に吹っ飛ぶ。
「てめぇ! 何しやがった!」
巻き込まれなかった男が叫び、ようやく臨戦態勢を取る。
引力の逆、斥力でふっ飛ばしただけだ。
死なない程度に加減もしてある。
「《水よ、我に力を貸したまえ、礫と成りて我が敵を撃ち抜け》」
「《雷よ、我に力を貸したまえ、槍と成りて我が敵を貫け》」
男達が呪文を唱える。
だが、遅い。
男達の頭上に水の礫と雷の槍が現れた所で俺は言った。
「墜ちろ」
「「なっ!?」」
水の礫が重力に従い男達に降り注ぎ、さらに雷が落ちた。
「「ぎゃあああ!!」」
男達は仲良く感電し、気を失う。
「お、お前…… 何者だ」
まだ意識があったのか、最初に吹っ飛ばした男が言った。
「自分で考えな」
俺は男の頭を蹴飛ばしながら答えた。
男が気を失ったのを確認すると、何事も無かった様に街道を進んだ。




