魔王が出ると予言も出る
まあ、そんなこんなで飯を食い、翌日。馬車は出発した。
ちなみに、キースの分もちゃんと出た。
……来るの遅かったが。
馬車では、まだキースが昨日の事をブチブチ言っている。
「俺だって、何人かの女に取り合いされたこともあるんだぜ」
余程ショックだったようだ。ウザい。
「そうそう、今日の昼過ぎには次の町に着くぜ」
「王都までは後どのくらいだ?」
「次の町で馬車を乗り換えて、1日で王都の手前の町に着く。そっから更に馬車で半日だ。まあ、直ぐに馬車が出ればだけどな」
「ふむ……」
早ければ明後日には着きそうだな。
「ところで、王都に着いたらどうするんだ」
「そうだな、先ずは王城の見学でもするか」
「王城!? 一般人は入れてもらえないぜ?」
「関係無い」
まあ、そう簡単には入れてもらえないだろう。
だったら勝手に入るだけだ。
「…………」
俺様が王都での予定を考えている間に、馬車は町へと入って行った。
規模は最初にいた町よりも小さいだろうか。
馬車を降りて町を歩くと、何やらヒソヒソと噂話が多い。
「何の話をしてるんだろうな? 後で酒場で聞いてみるか」
しかし、酒場に寄る事は無かった。
丁度、次の馬車が出る所だったからだ。
「夜行馬車だ。寝てる間に次の町に着くぜ」
夜行馬車、そんな物まで有るのか。
確かに先程までの馬車より2回りくらい大きい。
乗ってみると、一人一人の座るスペースが広く取られていた。
確かに眠る事も出来るだろうが、とても安眠出来るとは思えない。
「寝心地は最悪だが、仮眠には十分だ。明日の朝になれば次の馬車が出るがどうする?」
「これでいい」
1日位寝なくても平気だし、こいつとちんたら旅をするのもダルい。
俺達が乗ると、ガタゴトと客の少ない馬車は走り出した。
翌朝。
朝一番で馬車は町に着いた。
「王都はもう直ぐ、次の馬車で最後だ」
適当な飯屋で朝食を済ませると、馬車の乗り合い所に向かう。
しかしそこには人だかりが出来ていた。
「何だ?」
「さあ……。すみません、何があったんですか?」
俺が聞くと、キースは近くにいた商人に声を掛けた。
「馬車が出せなくて困ってるんだよ。ちくしょう、勇者の奴め、人の足元見やがって……」
ここでも勇者は嫌われてるな……。
勇者になろうとしているキースが微妙な顔をした。
「……何で馬車が出せないんです?」
「あんた、昨日の予言を聞いとらんのか」
……予言?
昨日の町がざわついていたのはそのせいか。
「馬車で移動していたもんで」
「王都が出した予言だよ! なんと、魔王が出たんだそうだ!」
…………は?
魔王が出た、だと?
俺を前にして何を言うんだこいつは。
「マジで! うわ、直ぐにギルド行かなきゃ」
しかし、キースは今の言葉で全て分かったようだ。
「何だ、お前さん勇者かい? だったら王都まで一緒に行かないか、馬車に乗るスペースがある」
「いや、まだ俺、勇者じゃないんだよ」
「そうか……」
商人はため息を付くと去っていった。
勇者で無くてはならない理由でもあるのだろうか。
「大変な事になったな。まずは勇者にならないと王都に行けないぜ」
「……何故だ」
「だって、魔王が出たんだぜ、その間は勇者か、勇者と一緒じゃなきゃ町の外に出られないんだ」
厄介な……。
つまり、王都で魔王が出たと予言があり、討伐されるまでは危険だから、勇者か勇者に同行してもらわないと町から出られないと言うことか。
恐らく、勇者共が商人相手に護衛代として大金を要求しているのだろう。




