仲間になりたさそうにこちらを見ている→無視する
店を出た俺は、東門とやらに向かった。
この町は、町の中央に十字に大きな通りがあり、それぞれ東西南北に伸びている。
最初に入ったのは西門だろう。
東門に付く頃にはすっかり日が暮れていた。
乗り合い馬車の看板を見つけたが、次は明日の朝一になるそうだ。
俺様は近くの宿に泊まる事にする。
そこは1階が食堂になっていて、それなりに賑わっていた。
魔族である俺も基本的には人間と同じものを食べる。
俺は当店お勧めと書いてあるセットを注文した。
出て来たのは、熱々の野菜スープと焼き立てのパン、鶏肉の香草蒸しだった。
シンプルだが中々美味い。
食べながら店を観察する。
この場にいるのは殆ど商人の様だ。
ゴロツキ、もとい勇者は酒場にでも募っているのだろう。
聞こえて来るのは商人達の勇者に対する不満の声だけだ。
そういえば、キースと名乗った男はどうしたのだろうか。
あのいじけっぷりだ、もう諦めたのだろう。
食事を終えた俺は、2階の部屋に行き睡眠を取った。
翌朝。
俺は朝一の馬車に乗るべく、宿を出た。
馬車は既に停まっていて何人かが乗り込んでいる。
俺も御者に金を払い、馬車に乗り込んだ。
馬車は4頭引きで、十数人は乗れるだろう。
今乗っているのは、3人組の家族連れ、恰好からして勇者だろう2人組。
そして俺の6人だ。
他に乗る者はいないのか、御者が声をかけると馬車が動き出した。
「お~い! 待って、待って! 俺も乗せて!」
後ろから声が掛かり、動き出した馬車は止まった。
ちっ……。この声は。
「ふ~。間に合ったぁ。いや~皆さん、馬車止めてゴメンね」
ヘラヘラと笑いながら乗り込んで来たのは、昨日いじけていたキースだ。
「おっ、いたいた。昨日の扱いは酷くない? ……隣、失礼~」
キースは俺を見付けるなり隣に座ってきた。
……まさか、ここまで付いてくるとは。
キースが座ると同時に馬車は走り出した。
「昨日道具屋で王都への行き方聞いてたじゃん。で、俺も王都のギルドに行こうと思ってさ」
……こいつの前で行き先の話をした俺が馬鹿だったのか。
「まあほら、旅は道連れって良く言うじゃん。つ~訳で、王都までよろしく~」
そう言うと、キースは笑顔で右手を差し出してきた。
しかし、俺は目も合わせない。
「…………」
キースは手を差し出したまま固まっている。
俺が手を出すまでそうしている気だろうか。
「……あの~。一度もこちらを見ないのは何故でしょうか?」
「…………もしもし?」
俺は何も答えない。
キースに気付かれない様にちらりと見ると、差し出したままの手がプルプルしている。
「…………」
「…………」
「……もしかして、付いてきたこと怒ってる?」
「…………」
「ごめん! 勝手に付いてきたのは謝るから! せめてこっち見て!!」
「……五月蝿い」
「あっ! やっとこっち見てくれた!」
シカトしていてもうざったい奴だ。
町に着くまでずっと一緒なのか。
……降りるか?
いや、こいつの為に次の馬車を待つのもムカつく。
殺す、のは今はできない。
仕方ない、適当に相手をしてやるか。
……握手はしなかったが。
「ところで、まだ名前聞いて無かったんだけど、何て名前? 名前くらい分からないと王都までの道のり何かと不便じゃん」
こいつ、王都まで付いてくる気なのか……。
「……レオンだ」
「レオンか。レオンは何しに王都まで行くんだ?」
「お前には関係無い」
質問が多い。
俺は昨日と同じ返事をした。
やがて、馬車が小さな宿場町に到着した。
道中、殆どキースは喋り通していた。




