地図の入手は道具屋で
俺が促すと、マスターは再び説明しだした。
「大通りを北に「俺、無視!?」
キースはそれも遮る。
「……北に行くと、右手に看板が見えてくるよ」
しかし、マスターはキースをシカトして続きを言った。
ナイス、マスター。
「ええっ! 2人して!?」
「分かった。釣りはいらない」
「毎度」
俺は多めに金を置いて席を立った。
キースが付いてこようとする。
「お客さん。代金」
「あ、ちょ……待ってって!」
キースはマスターに引き止められた。
勿論、俺に待つ道理はない。
店を出て通りを北に向かう。
程無くして、道具屋の看板が見えてきた。
ドアを押して中に入る。
ドアに着いた鈴が、チリンチリンと音を立てた。
「いらっしゃいませ~」
店の奥から、女が出てきた。
笑顔だが、目が笑っていない。
「ようこそ勇者様。何をお探しで?」
「俺は勇者では無い。地図はあるか?」
「そうでしたか! 失礼しました。地図でしたらうちで取り扱っておりますよ。当店では、一般のお客様にはサービスさせて頂いております」
俺が勇者でないと知ると、女の態度が豹変した。
ニコニコと愛想がいい。
……どんだけ嫌われてるんだ、勇者は。
「どんな物をお求めで? 町の地図から世界地図までなんでもありますよ~」
「世界地図を」
「それでしたら、こちらになります」
女は一枚の羊皮紙を取り出した。
羊皮紙には中央に楕円状の大きな大陸が、その東側には幾つかの島々、南に小さめの大陸が描かれている。
「この町はどこになる?」
「ここです。中央大陸の南端、王都の西です」
女が指し示したのは大きな大陸の南端、海から少し離れた所だった。
成る程……。そして、この紋様の所が王国か。
紋様は恐らく王国の印だろう。
「ここ以外の国は?」
「主立っているのは、東の島々を治めた共和国、南の大陸にある小国が集まった連合国、それにこの大陸の北側にある帝国の3つです」
それぞれ地図を指し示しながら説明してくれた。
今いる王国が一番国土が広い。
ならばこのまま王国から攻めるか……。
考えながら地図を眺めていると、ドアの鈴がなった。
「見つけた! 置いてくなんて酷いじゃないか」
キースだ。
「いらっしゃいませ~」
女は俺の連れかと思ったのか笑顔で言った。
「こいつは勇者を目指している奴だ。俺とは何のかかわり合いもない」
「そ、そうなんですか」
その言葉を聞いた女は、キースを見る目に敵意が籠る。
「え、何で!? どういう話の流れ!?」
「何か御用でしょうか?」
そう言った女の声がさっきまでと違い、かなり低い。
「いや、連れを探しに来ただけで……」
いつの間にか連れにされている。
「お連れ様? いらっしゃらない様ですが」
「だから、そこに……」
「誰だお前」
「…………」
今のは効いた様だ。店の隅でいじけ出した。
キースは放っておいて話を続けた。
「ここからだと、王都までどのくらいかかる?」
「王都ですか? そうですね、乗り合い馬車を乗り継いで10日程でしょうか。上手く馬車が出て要れば、ですけど」
「乗り合い馬車?」
「乗られた事無いですか? 乗り合い馬車と言うのは、町と町の間を往復している馬車で、何人かと相乗りになりますが、安い運賃で乗せて貰えるんです」
乗り合い馬車か……。
この世界を観察するには丁度良いかも知れない。
「何処から出ている?」
「王都に行くなら、東門から出ている馬車に乗ると良いですよ。そこなら街道がしっかりしているから、日に3本は出てます」
「ふむ。……幾らだ?」
俺は地図を指して言った。
「こちらの地図は銀貨3枚になります。もう一枚付けると、こちらの中央大陸の地図もサービスします」
「ではそれも貰おうか。邪魔したな」
情報量として多めに銀貨5枚置くと地図を持って店を出た。
「ありがとうございました~」




