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トリックルーム  作者: 鳳仙花
第二ゲーム
13/36

秘密のゲーム

俺は冷たい床に座り込んで、次のゲームの事を考え出していた。

仮面の人は第二ゲームは第一ゲームより難易度が高いと言ってきた。

それは客観的になのか、仮面の人の主観によるものなのか分からない。

でも、もし第二ゲームが本当に難易度が比較にならないほど高いものだったらどうすればいい。

第一ゲームだけでも勝利が不可能と思えたし、そもそも勝利できなかった。

それなら第二ゲームの勝利が難しいのはすでに分かりきっている。

始める前から諦めているわけじゃないが、覚悟をしておく必要がある。

さっきの第一ゲームみたく、動揺してばかりではいられない。


『煌太君、準備が整った。第二ゲームを始めよう』


あの仮面の人の声が流れると同時に、テレビには映像が流れた。

そしてその映像に映し出された部屋はさっきとは異なっていて、物置のように沢山の小物や家具、装飾品や骨董品が無造作に置かれている。

部屋に置くにしては珍しいものばかりだったが、それより俺はその部屋にいた人物に目がいった。


その人物の頭には鉄のヘルメットのような物が被されていて、鼻から上の部分はヘルメットにより固く覆い隠されている。

更にヘルメットの上には、カメラのような小さな機械が取り付けられていた。

あとは首にはゴツゴツとした不格好な機械がはめられていて、不気味な首輪となっている。


だけど、俺はそれより別のことに愕然とした。

ヘルメットが付けられている人物の服装に見覚えがある。

しかも見たのは最近だ。

似ているとかではない。

全く一緒だ。

俺がデートしていた彼女と同じ服装、同じ身長と同じ体型。

つまり、映し出されている人物は間違いなく…優羽なんだ。


「ふざけるな…!」


『第二ゲームに賭けれられる命は君の恋人、優羽だ。彼女は沢山の秘密を作った。その秘密は彼氏である煌太君にだって例外ではない。そして何より彼女はもっとも大きな秘密を抱えている。それが彼女の罪』


「うるさい。誰にだって人は本当に秘密にしたい事はある。だから罪とは言えない!」


俺は訴えかけてみたが、俺の声が聞こえていないのか仮面の人は全く反応を示さなかった。

今まではどんな言葉にも反応だけはして、小馬鹿にしながらも返してきたのに。


『では、ゲームの説明をしよう。まず勝敗についてだ。彼女には爆弾付きの首輪をさせて貰った。その爆弾の火力は全くないが、致命傷としては十分だ。つまり爆弾を解除をできたら君の勝利。首輪が爆破すれば優羽は死に、君の敗北だ』


首輪の爆弾なんてまるで創作の物語みたいだ。

現実でも首輪の爆弾による事件はあったが、目の前の出来事となると好奇心は湧かない。

ただ、やめてくれと思うばかりだ。


『爆弾の解除は部屋にあるキーボードにパスワードを打ち込むだけで充分だ。それで爆弾は解除される。ただし、パスワード入力のミスは一度のみだ。ヒントとして、パスワードは優羽の部屋に隠されているという事を教えよう』


不必要なヒントだ。

むしろヒントとは言えず、ただのルールの説明に過ぎない。

そう思ったが俺は口を挟まずに、仮面の人の説明を聞き続けた。


『ただし、彼女には見た通りヘルメットで目隠しをして貰っている。だからそのために煌太君がナビをしなければいけない。そこで、ゲームを成り立たせるためにナビをしやすいよう、優羽のヘルメットにカメラを付けておいた。君の目の前にあるテレビで、一台だけは優羽の視点となっている』


言われてから気がついたが、中央のテレビの映像だけが揺れていた。

どうやら中央のテレビが優羽のカメラと連動しているみたいだ。

これならまだ視界に関しては、何とかできそうだ。


『制限時間は一時間だ。ルールは以上。馬鹿な事はしないと思うが、ヘルメットと首輪を外す行為はしない事だ。もし見受けられたら即刻爆破する』


やはりあからさまな不正行為は駄目か。

不正をしようとは思ってもいなかったが、ゲームのルールに従うしか無いのも釈然としない。


『ちなみに彼女は現状を理解していて、この説明も聞いている。手間が掛からなくて良いだろう?では、彼女の目として夫婦のように共同作業するといい。健闘を祈るよ、こー君』


「はっ!?」


仮面の人の最後の俺の呼び方に酷い寒気を感じた。

気味が悪いとかじゃない。

なぜならこー君と妙なあだ名で呼ぶのは一人しかいなかった。

香奈恵だけが、たまにそう呼んできた。

何で仮面の人がその事を知っている?

香奈恵と俺しか知らないはずなのに。

ますます仮面の人が何者か分からないが、今はそんなことを考えている余裕は無い。

すでに第二ゲームは始まっている。

俺はマイクに口を近づけて、優羽を呼びかけた。


「優羽、聞こえるか?」


「う、うん。聞こえるよ、煌太」


優羽の弱々しい声が返ってくる。

不思議と久々に聞いた気がする声は、俺の心を落ち着かせてくれた。

今までどんな目に合っていたか分からなかったから、無事を知って少しは安心できた。


「私、怖いよ…。何で私達はこんな酷い目に遭っているの?嫌だよ………」


優羽が悲惨な状況に泣きそうな声で呟く。

それを聞いた俺は胸が張り裂けそうな想いでいた。

首に爆弾があるなんて生きた心地は到底しないはずだ。

俺ですらその事を想像しただけで、血の気が引きそうだ。


「大丈夫だ、優羽。俺が絶対に助ける。だから落ち着こう」


俺は命令口調にならないように気を付けて優羽に話かけた。

どんな気丈な女性でも、軽いパニックでヒステリックになってしまう恐れがあるからだ。

僅かでもプレッシャーをかける言葉はいけない。


「聞いていただろうから分かっていると思うが、どうやら優羽のいる部屋に爆弾を解除するパスワードがあるみたいだ。俺ができるだけサポートする。別の映像で部屋の全体は分かっているから、すぐにパスワードは見つかるはずだ」


「うん…。ねぇ、それより煌太。煌太は無事なの?」


優羽は俺に心配する言葉を投げ掛けてきた。

俺は優羽の姿が見えるから良いが、優羽は俺の状況が見えないから心配するのは分かる。

それでも俺を心配するのは普通では難しい。

まずは自分の保身で頭がいっぱいになるものだ。


「あぁ、俺は大丈夫だ。何も心配はいらないよ。ありがとう」


「なら、良かった。もし煌太にも首輪の爆弾が付けられていたら私、泣いていたかもしれない」


「あはは、そうなっていたら危なかったな」


俺の緊張が一瞬だけ緩んでしまう。

こんな状況なのに照れてしまったせいだ。

よく優羽も恥ずかしい事を言えるものだ。

もしかしたら優羽の方が精神的な余裕があるのではと疑ってしまえそうだ。


「とにかく、部屋を調べていこう。時間も多くは無い。まずそこから右…」


「煌太、待って」


俺が指示を出そうとすると、優羽は阻んできた。

まだ何か言う事でもあったのだろうか。


「どうした、優羽?」


「えっと、このゲームはコミュニケーションが大事だから一つ言っておきたいの」


「何だ?」


「まず、右と左って言葉は基本使わない。盲目の人には時間で方向を教えるの。私が向いている位置が常に時計の十二時。そうすると細かい向きも分かるし、私も混乱しないよ」


そうか、今の優羽は盲目の人と同じだ。

だとしたら優羽の発言は正しい。

優羽は俺よりは賢いからな。

俺は目役に徹するだけで充分に勝てるかもしれない。

しかし楽観はできない。

パスワードを探し出すだけなら難しくは無いと思うが、一筋縄ではいかないのは容易に想像できる。

少なくとも単純に紙にパスワードが書かれているだけというのは考えられない。

どういう風にパスワードが提示されるか分からないが、俺はヒントを見落とさないよう心がけるだけだ。

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