第4話 猫耳の少年は、風を止める練習から始めます
カイの風は、よく曲がった。
向けた先へ行く前に、枝分かれする。
俺が再映で遅くすると、少年は顔をしかめた。
「俺の魔法、雑草みたい」
線が次々に伸びている。
伸ばすほうは得意なのに、止めるための魔力が、後から追いかけていた。
俺は短い竹筒を二本用意した。
初めは一本だけ。中へ風を通し、端の紙を動かす。
次に、もう一本を横へ。
カイは二つを同時に動かそうとして、机の上の紙まで飛ばした。
「すみません」
「机から紙を片づけていなかった。俺も、次から気をつける」
少年が吹き出した。
俺は拾った紙を押さえ、今度は片方の筒を塞いだ。
「どちらも動かす前に、閉める場所を決めよう」
魔術の線へ、小さな結び目を作る。
風がその場所へ来たら、指を開いて終わる。
俺の技能で動かせるわけではない。カイ自身が、掌の感覚を覚える必要があった。
午前中、ほとんど成功しなかった。
午後、急に一度だけ、紙が止まった。
カイが目を丸くした。
俺は再映を止め、今の感覚を聞こうとした。
けれど、続けてもう一回と言った。
次は、失敗した。
その次も。
四度目に、少年の耳が伏せられた。
「今のは、たまたまです」
俺は口を閉じた。
一度できたから、すぐ繰り返せると思った。
成功を急いで固めようとして、本人が何をしたか聞く前に進めた。
「今日は、ここまでにしよう。止まった一回を、一緒に見て終える」
その夜、ルチアが、教員室へ食事を運んできた。
俺はまだ、カイの一回を映していた。
「イオ先生も、明日に回してください」
彼女は皿の置き場を作った。
俺の紙を、一山だけ動かす。
「生徒には休みを教えて、自分だけ起きていると、真似されます」
俺は球を片づけた。
前世の病気を、働きすぎのせいにするつもりはなかった。
それでも、寝なかった日の授業が良かったかと言われれば、怪しかった。
翌日、カイへ謝った。
成功したとき、何が違ったか教えてほしい、と聞く。
彼は掌を出した。
「昨日、閉める場所を、頭じゃなくて、ここに置いた感じ」
俺には、その感覚がない。
でも、次に記録した線では、結び目が先にできていた。
一回。
休む。
二回目。
紙が、止まった。
カイの耳が、ゆっくり上がった。
「これなら、レナの髪を毎回ああしなくて済む」
聞いていたレナが、黒板消しを投げるふりをした。
カイは、ほんの少し風を出して受け止めた。
黒板消しは俺の机へ落ち、粉が、白く広がった。
「先生」
「今のは、片づけを手伝ってもらう」
三人が笑った。
ミナも、口を押さえていた。
初めて失敗の後に、その笑いが来た。




