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第16話 王立学園、決勝開始

決勝の観客席には、町の人たちも来ていた。

パン屋の主人。水路の農夫。ミナの両親。

レナの父親は、他の人より少し後ろで立っている。


俺は、入場前の三人を呼んだ。


「学校を続ける話は、俺たち大人がする。今日負けても、それで終わりにはしない」


カイの耳が動いた。

ミナが俺を見て、息を吐いた。

レナは腕を組んだまま頷く。


「でも、勝ちたいのは変わりません」

「それでいい」


俺は、三人と拳を合わせた。


フィールドの向こうで、セドリックたちが待っている。

アヤは青い髪紐、トネルは幅広い手袋をしていた。

首席が三人へ頭を下げる。


「もう、十九秒では終わらないと思っています」


レナが笑った。


「終わらせません」


開始の鐘が鳴った。


王立の動きは、速かった。

トネルが中央へ土の板を立てる。

その横をアヤの水が走り、板の上へ細い流れを引く。

セドリックは水のない側を踏み、雷で一歩を伸ばした。


攻撃の道と、足場の道が、最初から分かれている。

互いの魔術を妨げていない。

俺は、その完成度を目で追った。

王立の生徒が積んできた時間も、確かにそこにあった。


ミナが一枚目の壁を立てる。

その前で、レナが輪を開いた。

セドリックの進路を、三拍塞ぐ。


アヤが水を流した。

輪の左半分が消えた。

セドリックは、そこを通る。

カイが風で回り込んだが、トネルの土が先に靴の下へせり上がった。


カイの着地点が変わる。

彼は風を止め、低い壁の後ろへ下がった。

足元の結界が薄く光る。


二十秒。

丘陵の三人は、まだ全員フィールドにいた。

だが、自陣から一度も出られていない。


俺の横で、ルチアが手袋を握っていた。

観客席から、強い声援が飛ぶ。

俺も三人の名前を呼んだ。

その先の言葉は、口にしなかった。


レナが、二度目の輪を出す。

今度は右へ寄せる。

アヤがそちらへ水を集めた。


「左!」


カイが走った。

空いた側を、風の一歩で抜けようとする。

セドリックが、彼の正面へ入った。


模擬戦と同じ踏み込み。

カイは途中で止まり、横へ身を投げた。

雷が彼の肩を掠める。

結界が光り、半分ほど薄くなった。


「また止まれたね」


セドリックが言った。

声には、驚きが少し混ざっていた。


カイは返事をしなかった。

自陣へ戻り、ミナの壁へ片手をつく。

まだ、試合を捨てていない。


三十秒。

トネルの土の板が、中央から丘陵側へ増えた。

アヤの水が、壁の手前へ薄く広がる。

ミナは、濡れた地面へ手を置いた。

術は使える。だが、自分が進む場所が滑りやすい。

足を置き直しているあいだに、セドリックがもう一度近づく。


ミナの壁は、彼の雷を受けた。

欠けただけで、残った。

首席の眉が上がる。


次の瞬間、アヤの水が上から落ちた。

壁の背後へ回って、ミナの結界へ当たる。

彼女の青が、肩のところで薄くなった。


レナが、三度目の火を用意する。

俺は、彼女の呼吸を見た。

前の試合では、二度で手が冷えた。

今日も、無限に出せるわけではない。


レナは手を下ろした。

そして、二人へ短く言った。


「広い方、やめる。近い方へ」


カイが頷いた。

ミナも、濡れた手を制服で拭った。

三人は、追い詰められた自陣の中で、身体の向きを変えた。


セドリックが、旗へ走り始める。

アヤとトネルが、その後ろを守る。

王立の三人は、崩れていない。


こちらには、一つだけ、狭い道が残っていた。

ミナが土へ手を置いた。

俺は、三人の足から目を離さなかった。

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