第13話 私たちの魔法を、私たちが説明します
翌朝、タリンは予選の記録と、申告済みの記録球を並べた。
問題の球は昨夜、提出して封印したものだ。
受領番号を確認し、俺がその場で再映する。
映ったのは、予選の蔓を焼いた時の術ではなかった。
競技後、レナが休憩区画で出した小さな輪だ。
タリンが、立会いの署名を確かめた。
監察員も、報告した場所はその区画だと答えた。
「他校の予選は、まだ続いていました」
委員が規則へ指を置いた。
「しかし、丘陵学園の競技は終了しています。本大会では、各校の終了鐘から次の開始まで、指導が認められています」
ヴォルフは口を閉じた。
違反の申立ては、そこで退けられた。
ただ、主任が疑問として出した技能の範囲と、三人の実力について、本人の説明も聞くことになった。
レナが立った。
「私の火は、今も一秒以内に出ません」
彼女は、自分の試験票を置いた。
零点の欄を、隠さなかった。
「でも、輪にしたら道を塞げます。昨日は三拍持つ輪を、二拍で消しました。相手が待つ長さを変えるためです」
委員が頷き、彼女へ質問した。
三拍より長く持たせられるか。
レナは、まだできないと答えた。
そして三度続けて出すと、どこが疲れるかも説明した。
カイは、自分の掌を見せた。
「俺、最初は止まり方がわかんなくて。先生の記録で、自分の風が枝分かれしてるのを見ました」
彼は、小さな紙を浮かせた。
風を止める。紙が掌へ戻る。
「でも、これを止めてるのは俺です。先生が遠くから止めてたら、今もできませんよね」
委員の一人が、少し笑った。
カイは紙をたたみ、ポケットへしまった。
最後にミナが、三枚の紙の壁を出した。
旗を守る壁。レナが退く場所。カイの足場。
向きを変えて、試合の順番どおりに置く。
「一枚では、全部の仕事をできませんでした。分けて、二人に必要な場所を聞きました」
「攻撃魔法は、できないのですか」
ヴォルフの質問に、ミナは一度俺を見た。
俺は、答えずに頷いた。
彼女は主任へ向き直った。
「壁を立てるのは、三秒かかります。標的を壊す試験は、今も零点です。でも、一回戦の水弾を止めた壁の硬さは、その試験では測っていません」
彼女の指が、紙の壁から離れた。
「零点で、できないことはわかります。できることまで、なくなったようには、言わないでください」
主任は、返事をしなかった。
委員が、ミナの説明を議事録へ残した。
審査が終わったあと、王立学園の評議員が俺を呼び止めた。
「先生は在職中、評価項目を増やす提案をしていましたか」
「防御と継続、協力について、二度出しました」
「私どもには届いていません。記録の引継ぎを希望した件も、初めて聞きました」
俺は提出した日付を伝えた。
評議員は、学園へ戻って資料を調べると言った。
これで全ての試験が変わるとは、思わなかった。
ただ、今まで止まっていた書類が、ようやく机を一つ越えた。
廊下へ出ると、三人が壁際で待っていた。
ルチアが、四人分のパンを抱えている。
「時間、かかりましたね」
レナがパンを取った。
カイは二つ取りかけ、ミナへ止められた。
俺は三人へ、礼を言った。
「自分たちの言葉で話してくれて、ありがとう」
ミナが、ノートを胸へ抱えた。
「先生が、何も言わないで待ってくれたから、最後まで言えました」
準決勝は、その日の午後だった。
俺たちはパンを食べ、競技場へ向かった。
次の鐘は、出場を許された三人のために鳴った。




