第12話 その勝利に、異議を申し立てる
準決勝へ進む四校の名前が貼り出された晩、控室へ通知が来た。
丘陵学園の出場資格を、審査する。
申立人は、王立学園主任ヴォルフ。
理由は、教員の技能による場外援助だった。
俺が〈再映〉を使い、生徒へ相手の攻略法を渡していたという。
カイが通知を読んで、耳を伏せた。
「先生、出られなくなる?」
「審査が終わるまでは、決まっていない」
「俺たちが、ずるしたってこと?」
俺は、すぐにその問いへ答えた。
「君たちは、試合中に俺の指示を受けていない。そこは変わらない」
レナが通知を裏返した。
ミナは、何かを言おうとして黙った。
ルチアが三人へ、別の部屋で食事をするよう頼んだ。
事情は説明する。聞き取りにも立ち会う。今夜、彼らだけで申立人に会いに行く必要はない。
部屋を出る前、ミナが振り返った。
「私のノート、使ってください」
机へ置かれたノートには、二拍の輪と、壁の位置が載っていた。
今日の試合が終わってから、彼女が書いたものだ。
審査室には、三人の委員とタリン、ヴォルフがいた。
主任は、俺を見ると通知を持ち上げた。
「個人試験で落第に近い者たちが、この成績だ。まず不自然でしょう」
「それだけでは、違反の根拠になりません」
委員の一人が言った。
ヴォルフは、別の書面を出した。
大会の監察員による、目撃の報告だった。
予選の会場で、俺がレナの魔力を幻影に映し、説明していたと書かれている。
「会場では、まだ予選が行われていた。生徒も選手として登録中だった。違反ではありませんか」
俺は、その日の帳面を開いた。
俺たちの終了鐘は、午後二時十四分。
再映を使ったのは、二時二十分。休憩用の区画で、ルチアとタリンの立会いがある。
「自校の競技終了後でした」
「終了したという言い分を、後から合わせられる」
主任は、タリンを見なかった。
「技能が映すものは、外から検証できない。戦いの最中に相手を見て、内側の弱点を読んでいた可能性もある」
俺は技能の範囲を説明した。
五メートル以内。一人分。十秒。
フィールドの外から中央にいる相手の術は、記録できない。
それ以前の戦いへ遡ることも、できない。
主任は、俺の説明を最後まで聞いた。
「なら、なぜ個人能力が変わらないのに勝てるのです」
その問いで、部屋が静かになった。
俺は主任の試験を思い出した。
一秒以内に、標的を壊す。
「明日、生徒にも話を聞いてください」
俺は答えた。
「私が言うより、実際に勝った三人が説明できます」
夜、宿へ戻ると、三人は食卓にいた。
弁当は片づいていたが、誰も部屋へ戻っていない。
俺が事情を話すと、カイが椅子から降りた。
「俺、話していい?」
「希望するなら。大人も一緒に入る」
レナが頷いた。
ミナは、俺の手からノートを受け取った。
「説明する順番、三人で考えます」
その声は、最初の日よりはっきりしていた。
俺が頁を開こうとすると、彼女が静かに止めた。
「先生に渡された答えを、読んだと思われたくないです。まず、私たちで書きます」
俺はノートから手を離した。
三人の席へ、水を置いた。
今夜の授業は、そこで終わりにした。




