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11/20

第11話 火の輪は、三拍しか持ちません

翌日の二回戦は、鋼の盾を持つ三人組が相手だった。

北門学園。土と金属の魔術を得意とする。

彼らは、こちらの一回戦をしっかり見ていた。


「猫耳の子を、先に止めよう」


整列した時、相手の主将が仲間へ言った。

カイが耳を動かし、苦笑した。


「人気者はつらいな」

「そこで喜ばない」


レナが彼の背へ軽く手を当てた。

控室で決めた順番を、最後に確かめた。


開始の鐘と同時に、盾の三人が前へ出た。

一人が旗を守る形ではなく、全員で中央を押さえる。

カイが右へ走ると、相手も右へ寄る。

ミナの壁が立つ前に、盾の縁が近づいてきた。


レナの輪が、中央に開いた。

相手は後ろへ下がったが、慌てなかった。

火の持続を、一回戦で数えていたのだ。


一拍。

二拍。

三拍。


輪が消えた瞬間、三枚の盾が進んだ。

レナが息を吸い直す。

次の輪までには、間がある。

そこを突かれた。


ミナの一枚目が、盾を受けた。

壁は残ったが、彼女の肘が曲がる。

カイが回り込もうとし、足元へ落ちた金属の小片で止まった。

防護結界が、足の位置を青く光らせた。


俺の口から、指示が出そうになった。

飲み込んだ。

三人が、相手の顔を見ている。


「次、二拍で止める!」


レナが呼んだ。


俺は、拳を握った。

三拍持つなら、必ず三拍出す必要はない。

授業では何度も試した。ただ、控室の作戦にはなかった。


レナの輪が、二度目の赤を描く。

相手が下がる。

一拍。

二拍。

彼女は火を消した。


盾の三人は、まだ一拍、そこへ留まった。

消える時刻を、先に身体へ覚えさせていたからだ。


その一拍に、カイが動いた。

ミナが石で金属片を覆い、彼の足を通す。

風の一歩が、三枚の盾の脇を抜けた。


相手の主将が、すぐに振り返る。

旗へ回り込むカイを追い、残る二人がレナへ寄った。


レナは、三度目の火を出さなかった。

出せなかった。

さっき止めた時にも魔力は使っている。額に汗が光っていた。


「ミナ、前!」


呼び方だけで、ミナが身体をずらす。

三枚目の壁が、レナの前へ立った。

薄い壁だ。盾が一度当たれば崩れる。

だが、その音に相手が目を向けた時、ミナが低い石を足元へ上げた。


相手の歩幅が、一つ詰まった。

転倒させるほどの高さではない。

それでも、レナが下がる時間はできた。


旗を抜いたカイが、中央へ戻る。

二人の後ろへ着地した。

自陣までは、まだ八メートル。


レナが声を出した。


「そこからは、走って!」


カイが頷く。

追ってきた主将の術が、彼の踵へ迫る。

ミナの最後の壁が、水路の時と同じ厚さで立った。


鐘が鳴った。

旗は、丘陵の印に触れていた。


結界が解けると、レナがその場へ座った。

俺とルチアが走り寄り、怪我と魔力の消耗を確かめた。

指が冷たい。喋れるが、すぐ立つのは難しい。


「次の練習は、休みだ」

「わかってます」


彼女は笑い、旗の柄をカイへ返した。


「三拍しかないんだから、三拍の使い方を考えたの」


俺は頷いた。

魔法が長くなったわけではない。

それでも今日、彼女は一拍ぶん、強くなっていた。

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