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10/20

第10話 初勝利は、三人分です

一回戦の相手は、港町のセイル学園だった。

三人とも水の魔術師で、揃った制服の肩に波の刺繍がある。


開始前、レナが俺へ聞いた。


「火と水って、火が不利でしょう?」

「正面からぶつければ、消されるかもしれない」

「じゃあ、ぶつけなきゃいいのね」


前より早く、自分で次の言葉を見つけた。

俺は頷き、彼女の手袋の紐だけを結び直した。


ミナは土を踏み、カイは境界の位置を確かめる。

三人の間を、短い言葉が行き来した。

俺は最後に、弁当の残りを聞いた。

カイだけが、もう食べたと答えた。


開始の鐘。

敵の水が、中央へ広がる。

床を滑りやすくして、こちらが走る道を狭める作戦だった。

相手の二人は旗を守り、残る一人が水を渡って近づいてくる。


ミナが、旗の前へ壁を立てた。

予想より低い。

観客席から、「あれで守れるのか」と声が上がった。

俺は黙って、カイの足を見た。


壁の上に、靴一個分の平らな場所がある。

カイはそこへ跳び、風で向きを変えた。

水を踏まず、乾いた端へ着地する。


相手の一人が、彼へ水弾を投げた。

カイは避けたが、二発目が肩へ当たった。

青い結界が、半分ほど薄くなる。

彼はすぐに止まった。

前へ行きたがる身体を、掌の結び目で止める。


レナの火の輪が、相手の足元へ開いた。

水の魔術師が、笑って水を被せる。

輪は消えた。


だが、水が集まったぶん、旗の横の床が乾いた。

カイは、その場所を見ていた。


一歩だけの風。

彼の靴が低く浮き、旗の柱の脇へ届く。

守っていた相手が、横から水を伸ばした。

カイの背へ、ミナの二枚目の壁が立つ。

水が土へ当たり、壁を半分削った。


ミナは敵陣の近くまで歩いてきていた。

手の届く土の範囲を、足で運んでいたのだ。

自分の旗は、最初の壁に守らせて。


カイが旗を抜いた。

相手の攻め手が、こちらの旗へ手を伸ばす。

俺は息を止めた。


レナが、自陣へ戻る。

二度目の火の輪は、旗を囲んで広がった。

紙を焦がさなかった、あの薄い中心。

敵の指が熱を感じて、引っ込んだ。


その三拍のあいだに、カイが戻った。

最後は風を使わず、ただ走った。

旗を、自陣の印へ下ろす。


「丘陵学園、勝利!」


タリンの宣告で、俺はようやく息を吐いた。

三人がこっちへ走ってくる。

俺は迎えようと一歩出て、境界で止まった。

試合が終わっても、審判が結界を解くまでは入れない。

ルチアが横で、同じことをしていた。


控室へ戻ると、カイが机へ伏した。


「旗、持ってると、意外と重い……」

「格好つけて片手で持つからよ」


レナが言いながら、水筒を彼の手へ置いた。

ミナは自分の指を揉み、ノートを開いた。


「相手が最初から、私たちの旗へ来たら、同じやり方はできませんね」

「そうだな。次の相手は、この試合を見ている」


カイが顔を上げた。


「じゃあ、次は違う作戦」


誰も、今日の勝ちを自分一人の成果にしなかった。

俺は、新しい頁の一番上へ書いた。

一回戦。三人で勝った。


書き終えると、レナがペンを借りた。

その横へ、小さく「一勝目」と付け足した。

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