パンデミック 4日目 少女とのドライブ法
パンデミックが発生してから、4日目の朝。
光汰は温めたカレーを少女に食べさせている。
「ふぅ、ふぅ、はい、あーん」
「あーん。はふはふ…おいしい!」
「良かった。ねぇ、お嬢ちゃんの名前を教えてくれないか?」
少女は口を動かしながら首を傾げる。
「お兄ちゃんみたいな人達からは、3番って呼ばれてたけど、お友達からはふうちゃんって呼ばれてたから、どっちが名前か分からない」
少女の発言に対して、光汰も少女と同じく首を傾げる。
「お兄ちゃんのお名前は?」
「ん?あぁ、俺は光汰。山本光汰だよ」
「光汰お兄ちゃん!あーん」
「はいはい。ふぅ、ふぅ」
「あーー!」
「そのままだと口の中火傷するの!ほれ、ゆっくりな」
「はふはふ、うーん」
「それじゃ、俺もこれからふうちゃんって呼んでいいかい?」
「うん。いいよ」
満面の笑みを浮かべる少女の顔を見て、口元を僅かに上げる光汰。
「光汰お兄ちゃん。今日はなにするの?」
「昨晩いろいろと考えたけど、ふうちゃんの替えの服がないだろ?食糧も少なくなってきたし、今日はどこかで、その2つを調達しようと思ってるんだけど…」
「怖い人達がいるから出来ないの?」
「ゾンビは大群じゃなければ問題じゃない。それより、ふうちゃん…車きらい?」
少女は光汰の問いに言葉にはしないが、明らかに嫌そうな表情を浮かべる。
その表情を見て察したのか、光汰は何も言わずに頭を抱える。
「光汰お兄ちゃんが言うなら我慢するよ?」
「ん~?昨日我慢しなくていいって教えたはずだが?」
「ご、ごめんなさい。その、くるまはいろんな音がいっぺんに聴こえるから…嫌いなの」
光汰は少女の発言に指先で回していた車のキーを止め、サイドポーチの中からスマホとイヤホンケースを取り出す。
「ふうちゃん。うるさかったら、すぐに外すんだよ」
光汰は不安げな表情で、イヤホンをゆっくりと少女の耳に差し込む。
少女はビクっと体を跳ねらせるが、徐々に口元が緩み始める。
光汰は安堵して表情を浮かべ、少女の耳からイヤホンを外す。
「曲が流れている間に、俺の声聴こえた?」
「ううん。ぜんぜん聴こえなかった!」
「それじゃ、車に乗って試してみたいけどいいかな?」
「うん、速く続き聴きたいな~」
二人は車に乗り込み、光汰は再び少女の耳にイヤホンを付けると、車のエンジンを掛ける。
「ど、どうかな?」
「フフフ~フフフン。フフフ~フ、フ~フフン」
少女は車の音が聴こえていないのか、目を瞑り足をパタつかせながら鼻歌を歌っている。
「えっと、ここから一番近いショッピングモールは…」
光汰はチラリとスマホを見るが、鼻歌を口遊む少女の姿に何を思ったのか、黙って車を走らせ始めた。




