パンデミック コンビニ2
コンビニの奥で体を小さくして、静かに泣く少女。
その姿を見て何を思うのか、光汰は微動だにしない。
「だれ?」
「え、あっ」
「だれ?そこにだれかいるの?」
少女は光汰の方に顔を向けるが、光はおろか光汰の事も見えていないのか、眩しかる様子を見せることなく、きょろきょろと光汰の方を見回す。
「お嬢ちゃん。目が見えないのか?」
「うん。ずっと前に……」
ずっと前にとはいう事は、昔は見えていたのだろうか?
しかし、目が見えないかつ音の鳴る鈴を持ち歩いて、少女は今までどうやって生き残ってきたのだろうか?
「お嬢ちゃん。何で、その…熊鈴なんか鳴らしているんだい?」
「これが鳴った少しの間は、周りの物が分かるの」
「周りの物がわかる?」
「うん。お兄さんの方に行ってもいい?」
少女はゆっくりと立ち上がると、光汰の方へと足を運び始める。
光汰は少女が歩く姿を見ながら手を出したが、はっとした表情を浮かべると、突然ゴーグルや手袋、ジャケットを脱ぎだす。
「なになに⁉お兄さん何してるの?」
「ごめん。汚い物が付いていたから……もういいよ」
「う、うん」
再び歩き始めた少女は光汰の近くまで来て立ち止まると、鈴の音がなるのを待ち、視線を向けることもなく差し伸べていた光汰の手を掴む。
「なるほど。音の反響を利用した見事な空間把握能力だ」
「くうかん、はあく……わわ、えへへ、えらい?」
「あぁ、えらいぞ」
優しく頭を撫でられ笑みを見せる少女だったが、少女のお腹が『ぐぅぅ』と鳴った途端、その顔から笑みが消える。
「その、その手に持ってるパンは食べないのかい?」
「パン?これパンっていうの?これ……硬くて食べれないよ?」
鈴の音で物の位置を把握できても、ビニールを破る方法を知らないのか、包装紙の上からかぶり付く少女。その姿を見て、光汰は少女の手を取りながらビニールを破る方法を教えると、少女は包装紙から取り出されたパンにかぶりつく。
「……」
「どうだい?おいしい?」
「うん、うん……とっても、おいしい」
余程お腹が空いていたのか、ポロポロと涙を零しながら、菓子パンを2口,3口と口に運ぶ少女。少女を落ち着かせるためか、光汰は再び頭に伸ばす。
「ありがとう。お兄ちゃん」
少女の言葉に頭に伸ばしかけていた手がピタリと止まる。
「どうしたの?」
「いや……君を見てると、昔の俺にそっくりだなぁて思ってな」
「お兄ちゃんも、紙の破り方、知らなかった、の?」
「あぁ。行儀悪いから、もぐもぐしながら喋ったらだめってのも知らなかった」
「お兄ちゃんも、わたしと同じだったんだね」
光汰は冷蔵庫の陳列棚からブラックコーヒーを手に取り、少女の前に再び腰を下ろし、ごくりと一口飲んで軽く息を吐く。
「行く宛てはないけど、もしお嬢ちゃんが良ければ、俺と一緒に来るかい?」
「お友達のことが心配だけど……お兄ちゃんと一緒にいく」
「ん?お友達がいたのかい?」
「うん。途中まで一緒に逃げてたんだけど、途中で居なくなっちゃってて」
「そっか。なら、生活の基盤を整えたら、お友達を探そうか」
「うん!ありがとう、お兄ちゃん」
光汰は店にあるパンや缶詰、飲み物を鞄に入れると、少女を連れて車に乗りコンビニを後にした。




