パンデミック コンビニ
パンデミックが発生してから、3日目の夕方。
高知稲荷町にあるコンビニの駐車場近くに一台の車が停車する。
運転席から降りてきたのは、青年…光汰だった。
「整列券が必要か?」
光汰の言うように、コンビニの駐車場には多くの人が立っている。
しかし、肌の色、体や服の状態から人間ではない。
「……」
駐車場で棒立ち状態のゾンビの大群を見て、何か思う事があるのか?
それとも……
――チリン、リーン――
コンビニの中から聴こえてくる鈴のような音が気になるのか。
いずれしても、光汰もまたゾンビ同様にその場を動こうとしない。
「10…20…囲まれたら終わりだ。いや、これだけのスペースがあれば…」
別にこの場所でなくとも、コンビニは他の場所にも存在する。
光汰にはゾンビを相手にしてでも、このコンビニに入る気なのだろうか?
「ウ、ガァア!」
ゾンビの数体が一気に光汰に向かって走りだす。
光汰は『ふぅ』と軽く息を吐くと、ゴーグルを下ろし、向かってくるゾンビに向かって走りだす。
「ギャァア!」
正面から胸を殴られたゾンビは、5メートル近く吹っ飛び、地面に転がり落ちる。
しかし、突き出した右腕をゾンビに掴まれ、左側からもゾンビが迫っている。
光汰は右側のゾンビに軽くタックルし、少しよろめいた隙に肘鉄を喰らわせ、ゾンビの両手を振りほどくと、すかさず左側のゾンビの首を掴み鈍い音を立てさせ、肘鉄でよろめかせたゾンビの頬を殴ると、ゾンビの顔が大きくひしゃげる。
「ガッ!」
「アギャ…」
光汰は総合格闘技か特殊な訓練でも受けていたのだろうか?
近づいたゾンビは尽く骨を折られるか砕かれ、光汰の体に触れられても脚技や軽やかな身のこなしで腕を離され、バタバタと地面に伏していく。
「兄さんみたいに、上手くできないか」
光汰の発言を聞くに、戦い方を教わったのは兄からなのだろうか?
映像には病で体が痩せ細っていたが、病になる前は一体どれほど強かったのだろうか?
――リーン、リーン――
光汰が戦っている間にも鳴っていた鈴のような音が絶えず鳴っている。
ゴーグルを外した光汰は、眉を顰めながら、コンビニの中に入っていく。
コンビニはパンデミックが発生してから荒らされなかったのだろうか?
弁当の種類は少ないが、パンや缶詰、菓子類が綺麗に陳列している。
ライトで照らしながら慎重に足を進める光汰。
――リーン、リーン――
音は陳列棚の一番奥から響いてきている。
光汰は確認する前に軽く息を吐くと、一気に身を出してライトで照らす。
そこには、小刻みに体を震わせながら縮こまる少女の姿があった。




