パンデミック4日目 現れたもの
「あの……助けて頂き…ありがとうございます」
「気にしなくていい。それより気分はどうだ?」
「最悪です」
「そうだろうな。まぁ、でも助けられて良かったよ」
俺の人生の大半は勉強と研究だから、こんな時は何と話して良いか分からん。
「あの……何か…お手伝いできることは…」
「今のきみに必要なのは休むことだ。それ以外の事は考えなくていい」
「そうですね……すみません」
兄さんもそうだったけど、一番辛いのは本人なのだから謝る必要なんかないのに、何でいつも謝るのか。
「それじゃ、俺は施設の諸々を復旧させるために行くが、一応無線機を渡しておく」
「……」
「いいか?迷惑になるとか考えず、何かあったらすぐに使えよ?喋れないときは押すだけでもいい。どんな些細なことでもいい。押さずに悪化したら、二十四時間超不機嫌な顔しながら看病するからな?それが嫌なら何かあったら押せ、わかったな?」
「は、はい……わかりました」
あんだけ念を入れて言っておけば大丈夫だろ。
さて、陽翔くんとふうちゃんは…
「王手!」
「わっ、う、うぅ、一回待ってくれない?」
「ハルくん待った多いよぉ~」
「ご、ごめん。それにしても、ふうちゃん強いね」
「カードゲームできない分、こういうのずっとやってたからね!」
研究が詰まった時に、よく課長と指してたっけな。
ふうちゃんは目が見えないけど、空間把握能力と聴力が異常だから、駒を動かした時の音で盤面を把握しているんだろうが……何か嫌な予感がするな。
【設備室】
ソーラーパネルからの電力供給は生きてるな。
しかし、浄化槽と給湯システムがダウンしてるから、復旧させてもシャワー室を使えるようになるには、暫く時間が掛かりそうだな。
『ザ、ザザ……あの…聞こえてますか?』
「ああ、聞こえている。どうした?」
「ザザ、点滴の液がなくなったんですけど…」
「んあ?もうそんな経ったか、すまん、すぐに戻る」
顔を見るまで断定は出来ないが、声に張りが戻っていたな。
だからといって無理はさせたくないから、今日はゆっくり休んでもらおう。
シャワーを使わせてやりたかったが、今日は恐らく無理……そういえば、あいつ等の着替えなくね? まぁ、その辺りのことも話し合っておいた方がいいか。
【休憩室】
「あの…助けていただき、本当にありがとうございます」
「気にするなと何度言えば……それより、きみの名前は?」
「あ、私は鈴木詩織といいます。貴方は…山本光汰さんですよね?」
「んあ?何で俺の名前知ってんだ?」
「新薬と言えば山本光汰って言われるほど有名ですし、何度もニュースに取り上げられたのにご存知ないんですか?」
「最近まで俺は兄さんの病気と治療法以外は眼中になかったから、どんな偏見報道されていたか知らん」
「そのために新薬を……そのお兄さんもここにいるんですか?」
「いや…病死か襲われたか、ゾンビになっていたから眠らせた」
「す、すみません」
生活の基盤を整えるのも重要だが、兄さんが最期に遺してくれたことを確認するのも重要だ。ショッピング前にゾンビの死体から採取したサンプルがあるから、確認することは大して難しいことじゃないが、もし兄さんの言う通りだったら、混乱を防ぐために伏せておいたほうがいいかもな。
いや、血液を照らし合わせると言っても、詩織と陽翔くんは健康診断といえば採血させてくれるだろうが、ふうちゃんは設備だけで泣くほど怯えていたから採血させてくれるとは思えない。でも、俺の中でふうちゃんは才能とは別に異質な物を感じるから、一番検査してみたいんだよなぁ。
「あの……光汰さん?」
「ん?すまん、考え事をしてた」
「だいじょうぶですか?」
「あぁ、大丈夫だ。それより――」
「光汰お兄ちゃ~ん!お腹すいた~!」
「わわ、ふうちゃん!勝手に入ったら駄目だよ」
「ハルくんもお腹空いたって言ってたじゃん」
「はいはい、わかった。詩織も何か食べれそうか?」
「あっ、わたしもお手伝いします」
「そうか?なら、この元気モリモリの二人の相手を頼む」
そういえば、店から持ち出してきた食糧は車に乗せっぱなしだったか。
日が暮れて少々危険だが、飯抜きというわけにもいかんし取りにいくか。
「お姉ちゃん、元気になったんだね」
「うん、心配かけてごめんね」
「お姉さんも、光汰お兄ちゃんのこと好きになった?」
「あ、はは。ふうちゃんは光汰さんのこと好きなの?」
「うん、大好き!」
一度で全て運び混むのは無理だから、一箱だけ運びこむか。
えっと、詩織が食べれそうなものは……
「お兄さん」
「ん?」




