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071『みんなでジャックのお墓参り』

まりあ戦記・071


『みんなでジャックのお墓参り』 晋三 





 ポンジーのジャマイカ島には二つの橋がある。


 二つとも島の北側にあって、南のニューハンプシャー州のポーツマスとは繋がっていない。同じポーツマスという名前が付いていてもポンジーはメイン州なんだという意地の現われなのかもしれない。異邦人、それも四年前にホトケサンになった俺が興味を持っても仕方がないんだけど。俺も初めての海外、やっぱりキョロキョロしてしまう。


「うわぁ、空気がおいしい!」


 年代物のオープンカーで髪をなびかせているまりあを見ていると、リアルに横に居て風を感じてやれたらと思ったりする。100%嫌がられるけど、そういう時、鼻に皺をよせてうっとうしがる表情も懐かしい。


 ストローハットとの前哨戦はまあまあの勝負だった。敵もこちらもほとんど打撃をこうむることが無かった。そして海の上だったこともあって、地上への被害も皆無で、まあ、順調な滑り出しと言っていいだろう。


 しかし、応急修理を済ませたばかりのドロシーは、出撃すること自体、大変なストレスになった。大がかりな修理にはうちの徳川曹長も加わって、オーバーホールの真っ最中。


 それで、どろしーが提案して、もう一つのウズメ、ブリキマンのパイロットだったジャックの墓参りに向かっているんだ。


 103号線てのがぐるっとポーツマスの港を取り巻いて、東のどん詰まり、東京湾で言うと房総半島の先っぽみたいなところに着く。


 打ち寄せる波と潮風は日本と変わらない。地球っていう大枠で捉えれば同じ大海原の海岸だしな。


「あぁ、なんか雰囲気だね、あれって要塞の跡?」


 まりあが指さした先には石組やコンクリートの構造物の跡があって、先に飛び出したナユタが猿みたいに走り回っている。


「うん、平和だったころには、そこそこ観光客も来てたんだけどね……元々が廃墟だから、なんか、余計に寂しいかなあ……」


「ううん、ざっくり開けてて、砂浜も桟橋とかも長くて雰囲気だし、いいと思うわよ」


「そうね、房総半島も悪くないけど、この広がりのあるロケーションは、やっぱりアメリカ……疲れが取れるわ」


 テレジアも中原少尉もお世辞ではなく寛いでいる。


「さあ、先にお墓参りしとかない? 寛いじゃったらお尻に根が生える」


 まりあが提案すると、どろしーも「ありがとう」と返して、海沿いを勇士の墓に向かって進む。



 ヘンリーのお墓は、要塞地域を少し進んだところにあった。



 墓地には、このあたりの町の名前が付いていて、軍人の墓地ではないことが分かる。


「ジャックは地元出身だったからね」


「そうなんだ」


 アメリカの軍人と言えば、アーリントンとか専用の墓地かと思ったけど意外に普通。


 ちなみに、俺の墓はヨミの攻撃で跡形もない。


 そのためか、俺の意識は過去帳の中にある。まあ、それで、妹の傍にも居てやれるんだけどな。


 花を供えてるどろしーには悪いけど、ここにジャックは居ないみたいだ。


 お墓も清げで明るい印象だから、もう成仏してるんだろう。きっと、天国の高みから神さまと一緒に相棒の墓参りを見てるんだろうなあ……と、ちょっと羨ましくもある。


「ジャック、日本から仲間が来てくれたんだよ……」


 墓碑銘の上に花束を置きながら語り掛けるどろしー。


「この子がまりあ、こっちのお姉さんがミツコ、慌てて手を合わせてるのがナユタ。三姉妹で、後ろにいるのがテレジア、テレジアは姉妹じゃなくて三人のガード兼 AWACS(早期警戒管制機)でもあるんだ。チームワークが良くって、昨日の戦いでも、ずいぶん助けられたんだよ」


 できたやつだ。


 ジャックに語り掛けることで、日本チームの凄さを褒めたたえ、感謝を伝えている。まりあたちも、墓参りを通じて親しさを増している。


「なあ、どうしてどろしーは平仮名なんだぁ?」


 ナユタが踏み込んでくる。


 そう言えば、部屋のプレートもコネクトスーツもDorothyの横に(どろしー)と平仮名で書いてあった。


「ああ、わたしもジャックも日本アニメのファンでさ。平仮名で書いた方がやさしい感じなんで、そうしたの。まあ、タッグネームよ。機体もドロシーでややこしいんだけど、機体の方はEを付けてんの」


「エドロシー!?」


「なんか、エロドロシーって言ってしまいそうだ(^^;)」


「こら」「ナユタ!」


 二人の姉に叱られテヘペロのナユタ。


 ブーーーーン


 その時、どろしーのスマホが鳴った。


「はい、どろしーです」


 ベースからのようで、受け答えが丁寧だ。


「ああ、はい。わざわざありがとうございます。はい、わたしは構いませんので……はい、詳しくはベースに戻ってから……承知しました」


「え?」「戻って来いって?」


「ううん、ドロシー、エドの状態が良くなくて、かえってブリキマンをリペアした方が早いって。いちおう、ことわりの電話だった」


 墓碑銘のジャックの名前がホワっと光ったような気がした。


 


 ☆彡 主な登場人物


・舵 晋三      永遠の16歳 法名・釋善実

・舵 まりあ     晋三の妹 高校2年 ウズメのパイロット

・舵 晋太郎     特務旅団司令 晋三とまりあの父

・高安みなみ     特務旅団大尉

・中原光子少尉    みなみ大尉の副官

・金剛武特務少佐   ベースのコンピューターの保守を任務とする技術士官

・テレジア(元マリア)ガイノイド戦士(031から)まりあのガード(VR10201改)

・ナユタ       ソメティのパイロット 第二首都高一年

・徳川曹長      みなみの世話係

・まりあの友達    釈迦堂観音(お堂さん) 矢治公男と喜田伸晃 鈴木さん 佐藤さん

・学校の先生     瀬戸内美晴(担任)

・岡田 時子     舵司令がたまに入れ替わる母の若いころの義体

・岡田 時蔵     時子の祖父

・メグリ先生(?)  晋三が小一の時の担任

・米国特務旅団    どろしい ヘンリー准将 ボギー大佐


☆彡 重要語句


・インテグレーション(integration) ウズメ02を複数パイロットの能力を統合して操縦すること

・セパレートアタック        複数パイロットが個別にコントロールして攻撃すること

・ケティちゃん           ケティちゃんを依り代とする小思念体

PONSYポンジー        ポーツマスネイバルシップヤード(アメリカの特務旅団)      

         

   

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