069『プリンスエドワード島の向こう』
まりあ戦記・069
『プリンスエドワード島の向こう』 晋三
アメリカのヨミってどんなだろう……メイン州の海沿いを飛びながら思うまりあだ。
ヨミは、その時々で形も大きさも違う。
東京を破壊した時は、巨大な球体だった。それが分裂したり、数個にまとまったり、最後は一つに戻って爆発したかと思うと東京を蒸発させてしまった。
首都駅に降り立った時に襲ってきたのは巨大なクジラみたいだった。アクト地雷を真似ていることもある。ウズメ02の試験運転の時は直径8メートルほどの球体だった。子供の積み木のようであることもあるし、幾何学模様みたいな時もある。箱根では異次元に飛ばされて原始体の群れと戦ったが、あの時は大きなプランクトンの群れのようだった。
メグリ先生は、地球のゴッドと宇宙のゴッド、それの合わせ技でヨミが出現するんだと言っていた。アメリカのは、ポンジーに来るまでにウズメ02のモニターでザッと見ただけだった。けれど、日本の球体にあたるものは星型が多く、それ以外は日本同様に多様で特徴を掴みきることはできていない。
『見て、あれがプリンスエドワード島よ』
ドロシーのどろしいがモニター映像をリンクさせる。
画面の下、陸地が途切れた向こうに大きな島が見えてきたんだ。
「アボンリーだっけ、アンの家があったのは?」
「あ、そうだったわね」
「アンコの一種?」
戦い慣れしている日本チームは、まだ余裕。まりあが思い出し、中原少尉が相づち打ってナユタがスカタンを言う。
『アボンリーは架空の町よ、セントローレンス湾に面したとこにレプリカが立ってる』
「ほーー」
思わず、画面を拡大。
そこには、子どものころまりあといっしょに観た『赤毛のアン』のグリーンゲイブルズ(アンの家)が建っていた。
「ああ……」
俺も感動した。
お袋が、忙しいのか無頓着なのか、あるいはその両方なのか、ちっとも子どもにかまわない親父に代わって一泊旅行に連れて行ってくれた。
それが、北海道にある赤毛のアンのテーマパークだった。
むろん、そこにもグリーンゲイブルズのレプリカが建っていた。とても良くできていたけど、アンの家があるきりだった。ここのは、納屋や他の建物や馬車なんかもあって、アニメ同様、周囲の景色が開けて広がりがちがう。
「なるほどぉ……」
まりあが呟いたのもそういう意味だろう。『赤毛のアン』はフィクションだけど、モニターに見えている風景は本物だ。
その画面の端を、一機のパルスジェットがかすめ、同時に、画面がテレジアの顔に切り替わった。
『ボギー大佐が貸してくれました、警戒管制と援護を担当します』
「頼もしいわ、では、こちらは戦闘にだけ集中でいいのよね?」
『それを目指します!』
少尉の問いにキリリと応えると、機内のモニターが各種のデータを映し出す。
ホトケさんの俺にはサッパリだが、訓練を通じてスキルアップしているんだ、まりあもナユタもテキパキとチェック、確認、切り替えをやっている。
『こっちも同期した』
どろしいも応えて、三機のテンションが揃った。
『12時方向、アンティコステイ島の陰に感あり、間もなく出現の模様』
アンティコステイ? 戸惑うまりあとナユタだったが、少尉は直ぐに反応してチェックマークを付けた。
「これよ!」
「「おお!?」」
アンティコステイ島はセントローレンス湾いっぱいいっぱいに『こ』の字を書いたとしたら、上の横棒にあたる。プリンスエドワード島は下の横棒だ。
島の向こう側が、もう一つ陽が昇ってくるように輝く。
『間もなく出現、5秒前……4……3……』
カウントしながら後退するテレジア機、管制機は基本非武装、やられるわけにはいかないからな。
『2……1……出現!』
テレジアの宣告と同時に現れたのは……巨大な空飛ぶ円盤!?
いや、巨大なストローハットだ!
☆彡 主な登場人物
・舵 晋三 永遠の16歳 法名・釋善実
・舵 まりあ 晋三の妹 高校2年 ウズメのパイロット
・舵 晋太郎 特務旅団司令 晋三とまりあの父
・高安みなみ 特務旅団大尉
・中原光子少尉 みなみ大尉の副官
・金剛武特務少佐 ベースのコンピューターの保守を任務とする技術士官
・テレジア(元マリア)ガイノイド戦士(031から)まりあのガード(VR10201改)
・ナユタ ソメティのパイロット 第二首都高一年
・徳川曹長 みなみの世話係
・まりあの友達 釈迦堂観音(お堂さん) 矢治公男と喜田伸晃 鈴木さん 佐藤さん
・学校の先生 瀬戸内美晴(担任)
・岡田 時子 舵司令がたまに入れ替わる母の若いころの義体
・岡田 時蔵 時子の祖父
・メグリ先生(?) 晋三が小一の時の担任
・米国特務旅団 どろしい ヘンリー准将 ボギー大佐
☆彡 重要語句
・インテグレーション(integration) ウズメ02を複数パイロットの能力を統合して操縦すること
・セパレートアタック 複数パイロットが個別にコントロールして攻撃すること
・ケティちゃん ケティちゃんを依り代とする小思念体
・PONSY ポーツマスネイバルシップヤード(アメリカの特務旅団)




