102『総攻撃・2・東海岸は、もう壊滅してるね……』
まりあ戦記・102
『総攻撃・2・東海岸は、もう壊滅してるね……』
オーガスタのベースを飛び立った三機のウズメ(ウズメ02・ドロシー・ブリキマン)は来た時とはルートを変える。二度にわたってポンジーから移動してきているので、ヨミに進路を読まれてしまう惧れがあるからだ。
開拓時代の名残を残すヘリテージハイウェイに沿って、高度を落として東に進む。チャールストンを過ぎて北東に首を振って、ほぼ海沿い。サウスカロライナ、ノースカロライナの海と沿岸の地形を小刻みに拾って姿をくらます。どこまでヨミの目をごまかせるか分からないが、一分一秒でも時間が稼げれば、それだけ有利な戦いができるだろうという考えだ。
——大昔の特攻隊みたいね——
ケティが声を潜めて……というより、思念で話しかけてくる。ウズメ02のコクピット、三つあるシートの右、妹に背負われ、その背中とシートに挟まれた通学鞄の中。マスコットとホトケさんが声を潜めても意味ないんだけど、俺たちなりに緊張しているし気を使っている。
——ポンジーはともかく、手下のテディーベアとかアクト地雷に見つからないか?——
——その時はその時でしょ。まあ、東海岸はほとんど壊滅状態だから、意外といけるかもよ——
——そうなのか?——
ウズメ02のモニターには半径100キロの地図が映し出されているけど、脅威を示す赤いドットは見当たらない。
いつもなら無駄口を叩いているクルーたちも、まるでインテグレーションモードで意識が眠っているように声が無い。
——バージニアに入るわよ——
アメリカの州境というのはそっけない。ケンタッキー州との境から1000キロ近い直線で、なんだか規制線を超えて事件現場に入っていくみたい。
——あ!?——
国立野生生物保護区を飛びぬけると海、いや、大きな湾に入り込んだ。
チェサピーク湾と呼ばれる水溜まりは、東京湾の三倍ほどの大きさがあって、その南西には世界最大の軍港、ノーフォーク海軍基地がある。
ホトケさんの俺にリアルの口はないんだけど——あ!?——と開いたまま——ああ…………——と尾を引いてしまった。
湾内あちこちに軍艦用の桟橋があって、百隻を超える軍艦がひしめいている。だけど、その全てが赤い腹を見せて転覆したり折れ曲がったりしている。中には赤さび黒く焼け焦げたり、元がどんな艦種だったのか分からないものも多い。陸上の施設や建物は、数日前に壊滅したポーツマスの街よりもひどい。まともな建物は一つもなく、残された基礎部分も砕け散り腐食して形が定かじゃない。
——東海岸は、もう壊滅してるね……——
チェサピーク湾の向こうにはワシントンDCがあるはずなんだけど、偵察飛行ではないし、ましてや観光飛行でもない。ひたすらヨミに気づかれないように北を目指しているんだ。ただ、ワシントンのあたりから煙とも煤まじりの水蒸気ともつかないものが立ち上って空に大きなシミを作っているのを確認して北上する。
フィラデルフィアも黒い煙が立って、ニューヨークは東京がそうだったように、全体が大きなクレーターになって半島のようだったロングアイランド島が、本当の孤島のようにしてしまっている。
コネチカット、ロードアイランドの南を舐めるように進んで、ケープコッド運河の水面すれすれを3分で飛びぬけ、ケープコッド湾。左にボストンの廃虚が見えるはずなんだけど、そこはぼんやりクレーターになっているのを目の端に留め、マッハ2の速度で突き進む!
「来た!」
それまで沈黙を保っていたコクピットで中原中尉が発声した。
モニターには群雲のように押し寄せるテディーベアの……群れ……大群……塊り……16歳のボキャブラリーでは表現できないものが湧き上がってきやがった!
☆彡 主な登場人物
・舵 晋三 永遠の16歳 法名・釋善実
・舵 まりあ 晋三の妹 高校2年 ウズメのパイロット
・舵 晋太郎 特務旅団司令 晋三とまりあの父
・高安みなみ 特務旅団少佐
・中原光子中尉 みなみ大尉の副官
・金剛武特務中佐 ベースのコンピューターの保守を任務とする技術士官
・テレジア(元マリア)ガイノイド戦士(031から)まりあのガード(VR10201改)
・ナユタ ソメティのパイロット 第二首都高一年
・徳川曹長 みなみの世話係
・まりあの友達 釈迦堂観音(お堂さん) 矢治公男と喜田伸晃 鈴木さん 佐藤さん
・学校の先生 瀬戸内美晴(担任)
・岡田 時子 舵司令がたまに入れ替わる母の若いころの義体
・岡田 時蔵 時子の祖父(080で死亡)
・ケティちゃん 晋三といっしょにしまい込まれているマスコット
・メグリ先生(?) 晋三が小一の時の担任
・米国特務旅団 どろしい ヘンリー准将 ボギー大佐




