100『総攻撃前・10・徳川曹長のシミレーション』
まりあ戦記・100
『総攻撃前・10・徳川曹長のシミレーション』
ポーツマスの街は食べ散らかしたトウモロコシの芯みたいになっちまった。
テディーベアたちが、食いつくして、建物はほとんど基礎部分しか残ってねえ。あいつらは、どんな仕掛けになってんのか、せいぜい子熊ほどの体の中に、食ったあれこれをため込んでやがる。徳川曹長が計算したら、テディーベアの数は兆の単位を超えてるらしい。で、その数は、まだ増えつつあるというから目まいがする。
半日ほどはポンジー(ポーツマスネイバルヤード)にも攻撃を加えてきやがったけど、バリアに阻まれて手が出せねえ。ポンジーはまりあたち日本チームが来る前にも襲われていて、ほとんど壊滅しちまっていたんだけど、ヘンリー准将とボギー大佐の努力で基地の核心部だけはかろうじて保たれている。
「次はあぶないかもしれません……」
自分のPCで試算し終えて、怖いことを言う曹長。
「この規模の攻撃なら、まだ50%の余裕はあるだろう」
ボギー大佐はベースのPCを指さす。モニターには攻撃予想を二倍に引き上げたシミレーション結果が出ていたが、ポンジーは28%の余力を残している。
「それは、攻撃が同じパターンだということが前提ですね」
「連携攻撃も五割り増しで計算しているぞ」
テディーベア一つ一つの能力は知れている。せいぜい一昔前のドローンの能力で、自動車なら吹き飛ばせるけど戦車は無理という感じだ。やつらも、それは分かっているから、数百数千のテディーベアが連携して、あるいは塊りになって食らいついて戦車でも撃破してしまう。
「いや、実は……」
曹長は、ゆうべ、ウィッテと小林に感心したことを話した。
ベースの調理室に案内してやると、二人は、直ぐに水回りやガスコンロの点検に入った。ミサイルの発射基地なので、定員はせいぜい30人ほどなので、厨房もそれに見合ったものでしかない。
ウィッテ:『火力が足りない、ちょっと触っていいかい?』
曹長:『ああ、でも安全には気を付けてくれよ』
小村:『心得てるよ』
小村が笑顔で返すと、二人で一時間もかけずにコンロ周りを改造してしまった。
持ってきた調理器具の中から、鉄製の花びらみたいなのを出してコンロ周りの下半分を囲ってしまったのだ。
ウィッテ:『こうしとくとね……』
ボッ!
曹長:『おお!』
コックを捻ると、炎の姿が五割ほどたくましくなった。
小村:『曹長、下の方に、手を寄せてみてよ』
言われてやってみると、火の傍であるのにほとんど熱を感じなかった。
ウィッテ:『ほかの店でもやってるけどね、うちのは上のとこの捻り返しが独特でね……』
小村:『7%ほど性能がいい』
曹長:『なるほどぉ』
「それで、ピンときて、テディーベアの破壊力に方向性を持たせてシミレーションしてみたんですよ」
「テディーベアに花びらか?」
「もう少し高度なものですが、イメージは、こんな感じです」
テディーベアの胸に花の形のバッジがついた。
「これで爆発すると……」
ドン!
爆発のエネルギーはバッジから直線的に発射され、その力は通常の8倍に達した。
「しかし、8倍程度じゃ、ポンジーの結界は破れんだろう。あれは、アメリカ最強の核ミサイルでも耐えるんだぞ」
「だといいんですが、あいつら、ポーツマス全域の瓦礫を吸収しています」
「それはそうだが、瓦礫なんか吸収しても、石礫ぐらいにしかならないだろう」
「それが……瓦礫と共に爆発のエネルギーを吸収しているのではないかと思われるんです。これを見てください」
画面が切り替わると、ホトケさんの俺には理解不能の数式と図式が出てきて、二秒で大佐の頬が引き攣った。
その日の晩飯、ポーツマスの時よりも料理が美味くなって喜ぶクルーたちだった。大佐と曹長は、悟られないように美味しがるのに苦労した。
☆彡 主な登場人物
・舵 晋三 永遠の16歳 法名・釋善実
・舵 まりあ 晋三の妹 高校2年 ウズメのパイロット
・舵 晋太郎 特務旅団司令 晋三とまりあの父
・高安みなみ 特務旅団少佐
・中原光子中尉 みなみ大尉の副官
・金剛武特務中佐 ベースのコンピューターの保守を任務とする技術士官
・テレジア(元マリア)ガイノイド戦士(031から)まりあのガード(VR10201改)
・ナユタ ソメティのパイロット 第二首都高一年
・徳川曹長 みなみの世話係
・まりあの友達 釈迦堂観音(お堂さん) 矢治公男と喜田伸晃 鈴木さん 佐藤さん
・学校の先生 瀬戸内美晴(担任)
・岡田 時子 舵司令がたまに入れ替わる母の若いころの義体
・岡田 時蔵 時子の祖父(080で死亡)
・ケティちゃん 晋三といっしょにしまい込まれているマスコット
・メグリ先生(?) 晋三が小一の時の担任
・米国特務旅団 どろしい ヘンリー准将 ボギー大佐




