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第18話 先陣の役目

10月16日、二条城に到着した俺は、

藤堂高虎公による閲兵を滞りなく終えた。


我が今治勢1,200名の兵士達が一糸乱れぬ規律を保ち、完璧な兵站に支えられていたことに、大殿は満足げに頷いた。


それから数日後の10月20日。二条城の大広間にて、

大坂城攻略に向けた本格的な軍議が召集された。


上方に集結した徳川方の総大将たる江戸幕府の軍勢を率いるのは、大御所・徳川家康、そして征夷大将軍・徳川秀忠である。


その御前には、本多正信ら幕府の重鎮に加え、奥羽の覇者独眼竜・伊達政宗、元・五大老の上杉景勝、出羽久保田藩主となった佐竹義宣、豊臣譜代でありながら徳川を支える蜂須賀至鎮、さらには紀州・和歌山を固める浅野長晟といった、歴史の教科書でしか見られないような錚々たる天下の諸侯たちがずらりと顔を揃えていた。


(……やれやれ、冗談じゃない。目の前に座るのは、伊達政宗、上杉景勝、佐竹義宣、蜂須賀至鎮、浅野長晟……。天下の趨勢を握る百戦錬磨の怪物どもだ。


人生の折り返しを過ぎて、まさかこんな殺気立った男社会のど真ん中に放り出されるとはな。


画面の向こうで歴史を語っていた頃の自分が狂おしいほど恥ずかしい。これが、死線を潜り抜けてきた本物の「格」という重みか)


冷や汗を必死に引っ込め、俺は何とか武将としての仮面を保つ。その御前で行われた軍議にて、大坂城をいかにして包囲・殲滅するかという大方針と、全軍の配置が言い渡された。


大御所・家康の本陣が置かれる茶臼山の目前には、大御所の御前を固める伊達政宗や藤堂高虎の軍勢が布陣する。


そして、上杉景勝は鴫野へ、佐竹義宣は今福へとそれぞれ展開し、蜂須賀至鎮は船場を、浅野長晟は三ツ寺觀音を固めるなど、諸侯もそれぞれの指定された要衝へと布陣することとなった。


その上で大殿から、我が今治勢の先陣としての役目が命じられる。


(幕府が定めた動員ルートや上方の公的な兵粮蔵といったインフラはあるものの、基本は各藩の自弁だ。大軍を動かすための国家規模の仕組みはあるが、実際の泥臭いやり繰りは各家の手腕に委ねられている。


その公的な補給の枠組みをベースにしつつ……。豊臣家という巨大な牙城を、すり鉢の底ですり潰すような完璧な包囲網の構築。本隊が動き出す前に、まずは我ら先陣がその足場を完璧に固めなくては話にならない)


大殿の傍らに控えながら、俺は静かに決意を固めた。


軍議の決定を受け、藤堂勢を含む先陣の諸将は10月下旬の段階で京を発し、大坂近郊へ向けて進軍を開始した。


道中、幕府からの補給インフラをしっかりと活用しつつ、今治から二条城、そして大坂へと至る街道の各所に分散配置していた400名の兵站担当の家臣団が、それぞれの拠点で見事に連携して近代的な兵站網を機能させた。


淀川沿いの各湊や中継地点で物資を滞りなく供給させ、我が軍の将兵は一人の脱落者も出すことなく、万全のコンディションを維持したまま11月始め、ついに大坂城の眼前に到着した。


広大な平野を埋め尽くすように、徳川方の先陣が次々と指定された持ち場へと陣を構えていく。大坂城を取り囲むように包囲の網が絞られていく中、現地にて取り急ぎの軍議が召集された。


今度の軍議は、実際に鴫野の上杉勢や今福の佐竹勢、船場の蜂須賀勢らをはじめとして、目の上にそびえ立つ堅城鉄壁の大坂城に対して「いつ、いかなる手順で攻め込むか」、そして城からの出撃や迎撃にどう備えるかという直前の実務的な話し合いだった。


「城内には、且元を放逐したことで制御を失った狂犬どものような浪人たちが溢れている。真田信繁や長宗我部盛親といった厄介な猛者どもが、各所に守りの拠点を築き始めているぞ。油断なく包囲を固め、機を見て攻め手を選ぶ」


征夷大将軍秀忠公の言葉に諸将の間から、わずかに緊張の色が漏れる。寄せ集めとはいえ、歴史に名を残す名将や武者どもが籠もる大坂城の防備は、後世の知識をもってしても想像以上に堅固だった。


ただ包囲するだけでは、城からの奇襲や真田丸のような迎撃拠点に手痛いしっぺ返しをくらうのは明白である。


大殿が鋭い視線を俺に向けた。


「高吉、お主の率いる軍勢の練度と兵粮の備え、見事であった。幕府の補給路を活かしつつ、お主の陣が独自に整えた兵粮の備えは不気味なほど万全だ。なればこそ、この包囲網の要となる最前線、我が軍の切り込み役としてその力を存分に見せてくれ」


俺は深く一礼し、力強く頷いた。


組織を動かし、兵を養い、この日のために積み上げてきたすべてのピースが噛み合う。


我が今治勢が立つのは、大坂城を討つための最果ての刃。天下を揺るがす大坂の陣の幕が、冷徹な秋晴れの空の下、静かに、そして確実に上がろうとしていた


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