トビラのソト
(超常者ねえ)
ふたりのかいわを聞きながら、徳康は次第に、この「超常のチカラ」だとか、「超常者」というコトバを聞いても、違和感を覚えないようになっていた。
(ニンゲン、何度もたいけんすると、慣れるっていうのはホントウのコトらしい)
「その、さっきからふたりとも、カベをつくった。といっていますけど。ソレはダレが、どうやってつくったんですか?ワタシにもわかるように、説明してほしいんですけど」
「ああ、ソウでしたね。じゃあせっかくなんで、岩羽さん、キミからせつめいしてもらっていいかい?」
「ワタシがですか?」
「そう、ヤッパリ、今カベをつくったほんにんが、せつめいしたほうが良いかとおもってね」
「ソウですか、まあいいですよ。カベっていうのは、そのままのイミですね。文字どおりカベがあるから、ソトから公園のなかに、はいるコトはデキません。
ソトから、公園のようすを見るコトはデキますが、なかに入ろうとしても、見えないカベがあって、はいるコトがデキないハズです。
コレは、超常のチカラをつかってつくられたカベです。ですので、超常のチカラを持っているニンゲンだったら、このカベに穴をあけて、はいるコトはデキますけどね」
「ソウ、そのとおり。というワケで、今あの公園には、いっぱん人がはいるコトはデキないんですよ」
「はあ、ソウなんですね。じゃあ、あの深海魚みたいなモノは、どうするんですか?
いくら、いっぱん人がなかに入れないとはいっても、放っておいていいともおもえんのですけど」
「ソレはまあ、ソウですね。カベをつくったから、もうコレ以上、ソトからアヤカシたちが、なかに入ってくるコトはナイにしても、もうすでに、なかに入ってきたモノにかんしては、ナントカすベキです」
「ソレは、一体どうやって?」
「カンタンにいってしまえば、われわれみたいな超常のチカラを持っているニンゲンが、つまり、超常者がヤツラを退治をする。っていうコトになります。
だから、今からワタシとカノジョのどちらかで、アレを、退治しようとおもうんですが」
こういうと、大空は、公園のようすを映しだす光景を見ながら、すこし黙ってしまった。
「どうしたんです?」
「いや、さっさと退治して、終わらそうかとおもったんですが。どうも、そうカンタンにいきそうにありませんね」
「ええ、大空さんのいうとおりですね。たった今なんですが、ワタシがつくったカベが、やぶられました」
「え、やぶられたって、どういうコトですか?超常のチカラを持っているニンゲンが、ほかにもいるっていうコトですか?」
「たぶん、ソウなります。ココにいる、ワタシと大空さん以外に、ダレかいるようです」
「ソウなるね。ソレがニンゲンだったら、『ダレか』になるワケなんだけど」
「ソウですね。ワタシの見たところ、ニンゲンなのか、『ソレ以外のナニカ』なのかは、チョットよくわかりません。ただいえるのは、カベに穴を開けられた。っていうコトです」
「穴っていうコトは、つまり、『カベ自体が、丸々すべて、こわされてしまった』というワケじゃナイんだよね。
オレの見たところ、カベ自体は、まだのこってるように見える。だから、一部だけ、こわされたと」
「大空さんのいうとおりだとおもいます。もしも、すべてこわされたら、カベをつくったワタシ自身が、すぐに気がつくハズです。
ですが、カベ自体はのこってる感覚があります。でもチョットだけ、一部分だけ、カベがなくなった感覚があります」
ふたりのかいわを聞きながら、徳康としては、状況のはあくをするのに苦労していた。
ナニセ、「超常のチカ」ラという、今まで見たコトも、聞いたコトもないコトバが、アタリマエのようにでてくるのだから。
「チョット、聞いていいですか?」
徳康は、ふたりにたいして聞いた。
「どうしました?」
大空が答えた。
「その、フツウのいっぱん人がなかに入れないように、カベをつくったのに、ソコにたいして穴を開けて、一部分とはいえ、こわされてしまった。
というコトは、その穴をとおって、いっぱん人が、なかに入ってこれるんですよね?」
「ソウなります。カノジョの感覚によると、一部分とはいえ、穴が開けられてしまった。
そして、その穴をつうじて、いっぱんのニンゲンが、なかに入ってくるかもしれません。でも」
「でも?」
「ワタシの見たところ、その穴は、ニンゲンが入れないほど、ちいさな穴のようです」
大空が、このように答えた後、岩羽が話しだした。
「そのとおりですね。ワタシの感覚によると、その穴は、ニンゲンが入れないほど、ちいさな穴だとおもいます。カベをつくったワタシ自身がそうかんじる以上、たぶん、ソウだとおもいます」
「ナルホド。ふたりのいってるコトを基にすると、カベにたいして穴を開けた、『ナニモノか』がいて、しかもその穴は、ニンゲンがなかに入れないほどちいさい。
というコトは、その穴を開けたナニモノかは、あの公園のなかに、ニンゲンをいれるコトをかんがえていない。つまり、ソレをもくてき・ねらい・動機にはしていない。と」
「徳康さんの読みは、あたってるとおもいます。ワタシもおなじかんがえです。おそらく、大空さんも、ソウおもってますよね?」
「同感だね」
「だったら、穴を開けた『ナニモノか』のねらい・もくてき・動機っていうのは、一体なんなのか。っていうコトになりますが。コレばっかりは、ワタシも大空さんも、わかりかねますね」
「ナルホド、ふたりでも、ソコまでは、さすがにわからないと」
徳康としては、ふたりが「わからない」といっているために、コレ以上は、聞きようがなかった。
「でもまあ、ロクなコトじゃないハズなので、さっさとソトにでて、退治しちゃいましょうか。せっかくなので、そのようすを見学しといてください。
ああ、そうそう、この空間のなかからじゃなくて、デキればソトにでて、ちょくせつ的に、じぶんの目で見てもらったほうが、良いかもしれませんね」
こういうと、大空は立ちあがり、この空間に入ってきたトビラに向かい、あるいていった。
「徳康さんも、いっしょにきてください。ソトにでますので。ソレと岩羽さん、いっしょにキミもきてくれるかい。万が一をかんがえて、戦力はおおいほうがいい」
「わかりました。ワタシとしては、大空さんひとりで、十分すぎるほど、戦力は足りてるかとおもいますが、指示とあらば従いますよ」
こう答えると、岩羽もトビラに向かい、あるいていった。
「ちなみに、このタテモノのばしょにくるまで、ソコソコのキョリを、あるいたとおもうんですけど。
あの公園にむかうまでに、時間をかけないほうがいいですよね?公園への道を、はしったほうがいいですか?」
徳康がこう聞くと、
「いや、ソレはダイジョウブですよ。この空間は、時間感覚と空間感覚が、狂うようになっていますが、そもそも、物理的なキョリなんて、ナイに等しいものなので」
大空はそういうと、トビラにたいして手をかけた。そして、そのトビラをひらくと、このばしょにくるまでにあった、道がなかった。
トビラの先は、真っ黒な空間だった。だがしかし、つぎの瞬間には、そのその真っ黒な空間の先に、トビラが現れた。
「あのトビラを開ければ、すぐ公園にでれますよ」
(ナルホド、げんじつ的なキョリとかは、あまり、かんけいがナイのか)
徳康が、このように感心していると、大空と岩羽のふたりは、慣れたかんじですすみ、トビラを開けてソトにでた。徳康も、そのうしろについていき、トビラのソトにでたのであった。




