断末魔
「だから、『ワタシたちが、ナニカをした』っていうよりは、今のこの状態は、アナタがじぶんでまねいたモノなのよ。わからないのかしら?
そもそも、アナタが、じぶんのカラダに取りこんだ祠は、1300年ものあいだ、アヤカシたちを、吸いこみつづけたシロモノなのよ。
そのチカラが、容量一杯に溜まったから、キャパシティーを越えてあふれでた。だから、そのチカラを、アナタはじゆうに、好き勝手に使うコトがデキた。
コレは、いいかたを変えれば、容量やキャパシティーが越えた状態ダカラこそ、この祠は、『一時的に、アヤカシを吸いこむのを止めている』っていうコトになる。
つまり、容量やキャパシティーに空きがデキれば、またアヤカシを吸いこみだす。ココまでいえば、わかるかしら?」
苦しみながらも、オニは、岩羽のいっているコトを、理解したようである。カオに、ダンダンとアセリの色が見えだした。
「つまり、アナタは今、このばしょで、ワタシとトクさんに向かって、調子に乗って、祠のチカラを使いすぎたのよ。祠からあふれでる分のチカラを、もうすでに、つかいきってしまった。
いいかたを変えれば、祠の容量やキャパシティーに、十分な空きがデキた。っていうコトになる。
となると、その祠は、また今までどおり、まわりにいるアヤカシを、ドンドン吸いこみはじめる。そして、ナンと今、その祠は、アヤカシのカラダのなかにある。
というコトは、つまり、『祠のまわり全体がアヤカシ』っていうカタチになっている。
こうなれば、アナタのカラダのなかは、『今まさに、祠に吸いこまれつづけている』という状態になる。だったら、今のアナタは、自滅していくしかないわね」
「このまま放っておけば、このオニはたぶん、自滅するコトになるダロウけど、どうするバネちゃん?」
徳康が、岩羽にしつもんした、まさにその瞬間、オニは、チカラを振りしぼり、にげだしたのである。先ほど、うしろから徳康が攻撃した、ヘヤに空いた穴を通って。
にげだしたオニは、苦しみながらも、本部のタテモノのソトにでた。
(ココは、一旦引こう。あのオンナ、偉そうに、オレにたいして説教をたれやがったが、にげられたんじゃ世話ない。オマエのほうこそ、スッカリゆだんしたんダロウが)
このように、内心において毒づきながらも、あいかわらず、カラダの奥そこから湧きあがる痛みに、カオをゆがめていた。
(せっかく手にいれた祠だ、ココで手ばなすワケにはいかん。ヤツラからにげて、一旦カラダのソトに取りだしたら、また容量やキャパシティーがあふれるほど、アヤカシを吸いこませてやる。
アヤカシなんてのは、探せばそこら中にいる。コイツらをつかまえて、祠にドンドン吸いこませて、すぐに容量やキャパシティーを越えさせてやるさ。ソウなったら、こんどこそ、ヤツラを皆ゴロシにしてやる)
このように、復讐のキモチを持つコトで、オニはナントカ、自我を保っていた。そして、異空間の端に着いた。
(侵入してきたときみたく、ココに穴を開けて、抜けだしてやる)
オニは、カベにたいして、穴を開けようとしたのだが、ダンダンと、オニのカオに、アセリの色がでてきた。
(バカな、どうなってやがる。入ってきたときと違う)
異空間と、げんじつの空間を隔てるカベは、オニが入ってきたときと違って、カナリぶ厚くなっていた。
(コレはどういうコトだ)
苦痛にカオをゆがませながらも、ひっしになって、オニは、今の状況についてかんがえていた。
「クソが、どうなってやがる。ナンでこの異空間のカベが、ぶ厚くなってやがる。オレが入ったときは、うすくてモロかったじゃねえか。
まさか、オレが入りやすいように、わざとカベを、薄くしてやがったのか?」
「やっと気づいたかしら?」
オニの背後には、イヌに乗った岩羽がいた。
「あいかわらず、目のまえのコトに気をとられると、うしろがオロソカになるわね。隙だらけだったわよ。あまりにも隙だらけすぎて、攻撃する気すら失せたわ。
ソレにしてもアナタって、ホントウに、オモシロイくらい予想どおりのルートでにげだしたわね。
さっきいたヘヤの穴をふさがなかったのは、アナタがにげだすときに、どの方向に向かうのか、誘導するタメだったんだけれど。
コチラが予想したとおり、あの穴をぬけて、一番近いトコロの異空間のカベにきたのね。あのまま、あのばしょにいて、自爆でもされたら、タテモノに被害がでるじゃない。
いくら異空間のなかで、超常のチカラをつかったタテモノで、自由にカタチを変えれるとはいっても、あまり壊したくなかったのよ。
だから、ソトにでてくれるように、にげれるように、わざとヘヤに、穴をのこしておいたのよ。
そして、アナタのニオイを、このイヌがたどって、こうして追いついた。っていうワケよ。
そもそもの前提として、この異空間と、げんじつの空間を隔てるカベっていうのは、そうカンタンに、アヤカシが入れるようなシロモノじゃナイのよ。いくら祠のチカラを、手にいれたとはいってもね」
とつぜん現れた岩羽にたいして、オニは苦しみながらも、警戒心を解こうとはしなかった。
「ソウやって、警戒心を保っているのは、さっきまでとは違うわね。さっきまでのバカバカしいごう慢さ、傲岸さが、すこしは消えたかしら。
でもまあ、今さらそんなコトは、アナタにとって、どうでもいいコトなんでしょうけどね」
岩羽の一挙手一投足を、オニは、見落とさないよう注意していた。
(コイツは、ナニをするかわからん。とにかく、隙を見て、ナントカして、この異空間からにげださないと)
「たぶん、今のアナタは、この異空間からにげだすコトを、ひっしになって、アレコレかんがえてるんダロウけど。
でも、ヤッパリまだ、ゆだんというか、隙があるわね。そもそも、ワタシは今、イヌに乗って、ニオイを辿って、こうして、アナタにたいして追いついたのよ」
(ナンだ、ナニがいいたい?)
「だからねえ、さっきもいったとおり、1対1じゃないのよ」
岩羽がこういった瞬間、オニの死角から、徳康が現れて、オニに一撃をいれた。そしてふたたび、オニのカラダから、アヤカシのチカラを奪いとった。
「トクさんも、ワタシのイヌに乗っていた。っていうコトを、もうわすれたのかしら。
ワタシが追いついたっていうコトは、おなじように、ニオイを辿って、トクさんが乗ってるイヌも、やってくるっていうコトになるのよ。
ワタシとのハナシに気を取られて、ソコまで、アタマがまわらなかったようね。まあコレも、コッチの狙いどおりではあるんだけど」
徳康にチカラを吸いとられて、さらにオニは弱まり、弱体化した。つまりもう、祠に吸いこまれるのを抑えるダケのチカラは、オニにはのこっていなかった。
声にならない声を上げて、断末魔を叫びながら、オニは、じぶんのカラダのなかにある、祠に吸いこまれていった。つまり、先ほどまで、オニのいたばしょには、祠だけがのこった。
「おわったようだね」
「ええ、おわりました。あとはもう、このオニが放った手下が、所々にのこってるダケですね」
「どうする?たしか今、本多くんと立花くんが、主に退治しているとおもうけど、加勢するベキか」
「ソウですね、でもまあ、もっと手っとりばやくて、カンタンな方法を取ろうかと」
こういうと、岩羽は、のこされた祠を見た。
「ナルホド、祠に吸いこませるワケか」
「ええ、のこった手下のアヤカシを吸いこんだトコロで、祠の容量やキャパシティーが、越えるとはおもえませんので」
「たしかに」
こういうと、イヌからおりて、徳康は、祠を手に取った。さすがに、イヌに乗ったままでは、岩羽のつくったアヤカシを、吸いこんでしまいかねないのダカラ。
「オレはこのまま、祠を手に持ってむかうから、バネちゃんは、本多くん、立花くんといっしょに、のこったアヤカシたちを、一カ所に追いこんでくれない。ソコにこの祠を置けば、一網打尽になるダロウし」
「賛成です。ソレが一番手っとりばやくて、カクジツな方法のハズですし」
ソウいうと、岩羽は、イヌに乗って、ふたりのトコロに向かっていった。そして、いくつかのアヤカシを出現させて、異空間に放った。
「この異空間にのこされたアヤカシたちを、一匹のこらず、本多と立花のいるトコロに追いこみなさい」
そのように岩羽が命じると、岩羽のアヤカシたちは、散っていった。
その数十分後、異空間にのこされていた、オニの手下のアヤカシたちは、本多と立花がいた、訓練場に追いこまれていた。そしてソコに、祠を持った徳康がやってきた。
追いこまれたアヤカシの群れのなかに入っていくと、そのアヤカシたちは、徳康が持っている祠に、つぎつぎと、吸いこまれていった。そして、一匹もいなくなった。
「コレで、ホントウにおわったか」
「ええ、ソウですね。おつかれサマでしたねトクさん」
「ソチラこそ」
「チョット待ってくださいよ。オレたちだって、ソトでガンバってたんですよ」
本多がこのように、岩羽と徳康との会話にたいして入ってきた。
「ええ、知ってるわよ。アナタたちが、ソトで、あのアヤカシたちとたたかって、足止めをしてくれたからこそ、ワタシとトクさんは、主犯格のオニだけに、集中するコトがデキたんだから」
こういうと、岩羽は、本多と立花のかつやくをねぎらった。岩羽にホメられたふたりは、ソレまでの苦労・つかれが、一気に吹きとんだような、満面の笑みをうかべていた。心底からよろこび、ウレシイようすであった。
(ふたりとも、バネちゃんにホメられて、偉くうれしそうだが、どうやらこの子は、後輩たちから、カナリ慕われてるらしい)
こうして4人は、タテモノにたいして向かっていった。こわされたタテモノの後始末と、おそわれた職員の手あてを、おこなわなければならないのだから。




