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金縛り

 オトコはハッとして、まわりを見わたしたのであるがが、ソコには、ダレもいなかった。

(なんだ、ユメなのか、今の声は。ユメじゃないとしたら、幻聴を聞いたっていうコトか。だとしたら、今のオレは、かなりヤバイ精神状態なんダロウか。

 ヤッパリ、大のオトナがシゴトを失うっていうのは、精神衛生上、カナリ良くないコトなんダロウ)

 このようにおもい、ベンチから離れようとしたのだが、カラダにチカラがはいらない。そして、つよい睡魔が襲ってくる。

「ヤッパリ、疲れてんのかなあ。今までの疲労が、一気にでてきたのか」

 ひとりごとをつぶやいたあと、しかたがないので、ベンチに座ったまま、しばらく、その場にいるコトにした。そして、ふたたび、ユメうつつの状態になった。

「アレ、もしかしてアンタ、オレの声が聞こえたとか?だとしたら、おどろいたなあ。オレの術を、見破ったっていうコトになる」

 と、またしても、どこからか、声が聞こえてきたのだ。だがしかし、まわりを見わたしても、やはり、ソコにはダレもいない。

(イカン、とうとうホントウに、幻聴が聞こえだしたか?)

 眠い目をこすりながら、気味が悪くなってきたために、その場から、はなれようとしたのだが、どうにも、カラダにたいしてチカラがはいらない。

 というよりは、「じぶんの上にナニカ、重いモノが乗っかっており、カラダがうごかない」といったほうが、表現としては、ただしいかもしれない。

(ナンなんだコレは、金縛りっていうヤツか?でもオレは、そういう霊感みたいなモノは、まったく持ってないハズだけど。なのにナンでだ?)

 このようにおもい、ふと、先ほどお参りした祠を見たのである。すると、気のせいか、その祠から、ナンともいえない気配のようなモノを、かんじるのであった。

 とはいっても、目で見たところ、「ナニカがでている」というワケではない。

 そのようなモノは、まったく見えない。だがしかし、その祠から、ナニカがでているような気がするのだ。

 金縛りでうごけないまま、祠のほうを、ジッと見ていたのであるが、「視覚でナニカを捉えている」という感じにはおもえなかった。ホントウに、「なんとなく、そういう気配がする」という感覚なのである。

そして、「その祠から、ナニカがでている」というよりは、むしろ、ぎゃくであり、「その祠に向かって、ナニカがあつまっているのではないか」という気がしてきた。

 つまり、祠のまわりに、目に見えない「ナニカ」が、そんざいしているような気がするのである。

 そのために、さいしょは、その祠から、その「ナニカ」がでてきたのではないか。ソウおもったのだ。

 ココでふと、オトコはおもった。じぶんの上に、目に見えない「ナニカ」がそんざいしており、「その重さによって、じぶんは今、身うごきが、まったく取れないのではないのか」と。

 だとしたら、その「ナニカ」を、「その祠に向かって、うごかすコトはデキないのか」と。

 とはいっても、じぶんの上にある「ナニカ」は、目には見えない。つまり、実態がない。

 というコトであれば、アタリマエのコトだが、「ソレを手でつかみ、うごかす」というコトは、デキそうにない。ソレに、そもそもカラダが、ほとんどうごかない。

(カラダがうごかないんだったら、『うごけ』と、アタマのなかで、念じてみようか)

 オトコは、じぶんの上に、そんざいしているのかもしれない、目に見えない「ナニカ」にたいして、つよく念じた。

(ナニがあるのかはしらんが、オレの上から、あの祠に向かってうごけ)

 すると、とつぜんカラダが軽くなった。ソレまでは、まったく身うごきが取れなかったのに、じゆうにカラダがうごくのだ。

(ナンなんだコレは。金縛りっていうヤツが、解けたのか?)

 このようにおもい、すこし、ホッとしたのであるが、その瞬間、オトコはおどろいて、カラダが固まってしまった。

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