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黒幕

(核融合ねえ)

 じぶんが5円玉に込めて、祠の賽銭箱にいれた、不運や不幸のカタマリと、祠が1300年間ものあいだ、ずっと貯めつづけたという、アヤカシを構成するエネルギーとが、『たがいに作用して、化学反応、核融合のような状態になり、あふれだした』と、大空はいうのである。

(核融合のような現象がおきて、祠からチカラというか、エネルギーがあふれでたんだったら、ソレは、祠の異空間が保存するコトがデキる、超常のチカラの容量を、超えたっていうコトになる。つまり、『キャパシティーを超えて、あふれだした』っていうのか)

「そもそも、あの祠は、近くにいるアヤカシを吸いこんで、吸収してしまう。だから、フダンだったら、アヤカシがあの祠を、どうこうするコトはデキない。つまり、触れるコトもデキない。

 ところが、あふれでたっていうコトは、祠の異空間が持っている上限を、つまり、キャパシティーを超えるほどに、膨大な量の超常のチカラをおこすエネルギーが、発生したっていうコトになる。核融合のような現象によってね。

 というコトは、アヤカシが祠に触れても、吸いこまれるコトがない。つまり、触れるコトがデキるようになった」

「だから、あの祠に近づいて、奪うコトがデキた。と」

「ソウなるダロウね。まさかオレも、こういう結果になるなんて、おもいもしなかったよ。

 トクくんが、アタマの上にあつまりだした、不運や不幸のカタマリを、あの祠の賽銭箱にいれた時点では、ソコまでの事態になるとは、さすがにわからんかった。

 一時的に、あふれでたんダロウ。とおもったんだけど、キャパシティーをカンゼンに超えるほど、核融合のような現象がおきて、エネルギーのバクハツがおきるなんて、想像すらデキなかった。

 ナンせ、こういうケースは、今まで一度だっておきたコトがない。レア中のレアなケースになるダロウね。たぶん、前例なんて一度もナイ。

 ただナンとなく、まあコレは、超常者としてのカンていうヤツかな。あのまま、あのばしょに居続けると、ナニが起こるのか、まったく想像がつかなかった。

 だから、祠の近くに設置してあったトビラを開けて、異空間に入ったんだよね。

 そのとき、ちょうどソコには、ココにいる、バネちゃんもいた。だから、『オレたちふたりがいれば、たいていのコトは、ナントカなるダロウ』っていう、算段もあったワケだよ」

 ちなみに岩羽は、年下からは「バネさん」、年上からは「バネちゃん」というアダ名で、皆に呼ばれている。

 さいしょのころは、初対面の徳康がいたために、あらたまって、「岩羽さん」と呼んでいたのだが、徳康も、知りあって約一カ月が経つために、徳康のまえでも、大空は、アダ名で呼ぶようになっていた。

 そして、徳康自身も、今では岩羽のコトを、「バネちゃん」と呼んでいるのであった。

「たしかに、君らふたりがいたら、たいていのコトだったら、ナントカなるような気がする」

「ソレで、あの空間のなかに、トクくんを案内して、公園のようすを天井に映しだしたら、下級レベルのアヤカシたちが、ウジャウジャと、大量にあつまってた。

 だから、フツウのいっぱん人が、公園のなかに入れないように、バネちゃんに、カベをつくってもらった。そして、公園にでていって、ソイツらを、まとめて退治しようとしたら」

「いなくなってたんだよね、たしか」

「ソウなんだよ。しかも、カベに一カ所、ちいさな穴が開けられていた。おそらく、その穴から、公園のなかにいたアヤカシたちを、ムリヤリあつめて、ソトにだしたんだろうね。

 その穴から、この本部につうじるドアがある、神社にむかって、アヤカシたちの残がいが、細々と伸びていた。まるで糸のようにね。

 だからオレは、ソレを辿っていったんだよ。ソウしたら、今度は、公園のほうから、つよいそんざい感をもったモノが、とつぜん消えるのをかんじた。だから、まさかとおもって戻ってみたら」

「祠がなくなっていた。と」

「そのとおり。今となってみると、あの一連のデキゴトは、計画的な犯行なんダロウね。

 当時のトクくんは、厳密にいえば、まだ超常者ではなかった。そのチカラを、つかいこなすコトがデキなかった。あくまでも、こうほ者にすぎなかった。

 ソレで、オレとバネちゃんが、あの場にいっしょにいると、祠を奪う隙がデキない。だから、ふたりがバラバラになるように、仕向けたんだとおもう。

 知性を持っていない、下級レベルのアヤカシが、『オレたちが、異空間から公園にでてくるまえに、つごうよく、あのちいさな穴から、すべてにげだす』っていうコトは、ヤッパリかんがえにくい。

 ナニモノかが、ヤツラを操って、すべて逃がしたと見たほうがいい。となると、犯人は、というか、ニンゲンじゃない可能性がたかいから、犯人といって良いかわからないけど。

 その犯人は、下級レベルとはいえ、アレだけの量のアヤカシたちを、じゆうにあやつり、コントロールして、うごかした。っていうコトになる。

 そもそも、いくら下級レベルとはいえ、アレだけたくさんのアヤカシを、じゆうにあやつって、コントロールするコトがデキる超常者がいるとは、チョットかんがえにくい。

 ナゼならば、しょせん、ヤツラとわれわれニンゲンとでは、思考回路も性格も、視点や発想、かんがえかたが、まったく違うそんざいだからね。

 となると、あのたくさんいた、下級レベルのアヤカシたちを操ったのは、おなじアヤカシ。っていう可能性が、カナリたかくなる。ソレも、上位レベルのアヤカシになるダロウね」

「上位レベルっていうと、たしか、ニンゲンにたいして、危害をくわえるキケン性やリスクとかが、カナリたかい上に、ニンゲンに近いレベルの知性すら、持ってるケースがあるんだよね」

「そういうコトになる。だから、おなじアヤカシ同士だったら、上位レベルのアヤカシは、下級レベルのアヤカシをあやつれるダロウし。

 その上さらに、オレとバネちゃんを、バラケさせるために、策をかんがえるコトもデキるダロウし」

 大空のコトバを聞いて、岩羽もまた、ハナシをはじめた。

「大空さんのいうとおりですね。もしもあのとき、ワタシと大空さんが、あの公園に、いっしょにいたら、ワタシとトクさんのまわりにあつまってきた、たくさんの中級レベルのアヤカシたちを、スンナリと、退治するコトがデキたとおもいます。

 ですので、大空さんとワタシがバラけた、その一瞬の隙を突いて、祠をうばったんだとおもいます。

 そして、祠をうばわれたので、祠にヒモづけしてあった、あの異空間のトビラも、開けるコトがデキなくなってしまった。

 だから、ワタシが依頼した応援が、異空間をとおって、祠のまえにあるトビラから、公園に着くコトがデキなくなった。

 この犯行をかんがえて、けいかくし、ダンドリしたアヤカシは、時間をかけると、異空間をとおって、応援者がきてしまう。おそらく、このコトを警戒してたんでしょうね。だから、すばやく祠を、奪ってしまうひつよう性があった。

 そのために、ワタシとトクさんのまわりを、中級レベルのアヤカシで囲んでしまい、コチラがヤツの気配にたいして気がつかず、察知するコトがデキないようにしたんだとおもいます。

 さすがに、中級レベルのアヤカシに、上下左右、すべてを囲まれてしまえば、祠の消失にたいして、気がつきにくいですし。

 ソレに、上級レベルのアヤカシが、たとえ近くにいたとしても、その気配を察知するコトは、カナリむずかしくなります」

 ふたりのハナシを聞いて、徳康は、かんがえこんでしまった。一瞬の隙を突いて、ココまでけいかく的に、犯行をおこなったのであろう、そのアヤカシにたいして、一種のきょうふに近い感情を持ってしまったのだ。

「ふたりのハナシを聞くと、その黒幕とおもわれる、上級レベルのアヤカシっていうのは、ヘタなニンゲンよりも、たかい知性があるというか、アタマがキレるかもしれない」

「トクさんのいうとおりですよ。ワタシは高校生のころに、超常のチカラを知って、あやつれるようになって、まだ日が浅いほうなんですが、こんなアヤカシは、今までに、見たコトも、聞いたコトもありません。大空さんはどうですか?」

「オレもナイよ、こんなアヤカシがいるなんてのは、カンゼンに、想定の範囲外だね。

 たぶん、何十年間ものあいだ、超常者としてかつどうし、かつやくしている毛利さんだって、こんなケースは知らないとおもう」

「ふたりのハナシがホントウだったら、じゃあ一体、その黒幕の上級レベルのアヤカシは、一体ナンのために、どういう意図・もくてき、ねらい・動機を持って、あの祠をうばったのか。っていうコトになるんだけど。

 ココまでアタマがキレて、たかい知性を持っているのなら、『無もくてきに、ナンの意図・ねらい・動機・リユウもなく、ただ単にうばう』っていうコトは、ナイような気がするけども」

「トクくんのいうとおり、黒幕の上級レベルのアヤカシが、ナニカしらの意図・もくてき、ねらい・動機を持っているとしても、今のトコロは、ナンともいえないか。

 じゃあオレは、コレからまた、べつのシゴトがあるんで、コレでしつれいするよ」

 こういうと、大空はタテモノをでて、そして、この異空間からもでていった。

「さっき、トクさんがいっていたとおり、黒幕の上級レベルのアヤカシが、ナニカの意図・もくてき、ねらい・動機っていうモノを持ってるとしたら、ソレがナンにせよ、われわれからすれば、ロクなコトじゃナイでしょうね。あまり、かんがえたくはナイですが」

 こういうと、岩羽はとつぜん、ソトのようすを見だした。

「どうかした?」

「オカシイですよ。いつもだったら、この時間には、ガッコウを終えたばかりの若手のこうほ者たちが、もっとあつまってくるハズなんです。

 ソレなのに、まだ本多くんと、立花くんのふたりしか、ココにきていないようです」

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