核融合
「マズイ、良くないコトに?」
「トクくんさあ、オレたちが、さいしょに出会った、あの公園にあった、祠のコトはおぼえてる?」
「モチロン」
「どうやら、コレを奪ったヤツが、本格的に、うごきだしたらしい」
「奪ったヤツが?」
「ソウなんだよ。実をいうと、遠くの土地に出張している超常者たちと、れんらくがデキなくなった。
ソレで、さいごにれんらくがデキたニンゲンによると、あの公園にあった祠を、現地で見たらしいんだよ」
「あの祠をねえ」
「となると、あの祠を、悪用してるとしかおもえん」
「チョット聞いておきたいんだけど。この約一カ月のあいだ、訓練にたいして集中していたから、ソレ以外のコトを、かんがえるヨユウがなくて、あの祠のコトを聞いたり、かんがえるコトが、まったくデキなかったんだけど。
そもそも、あの祠って、一体ナンなんだ?コレをおしえてほしいんだけど」
「ソウか。ソウいえば、あの祠のコトを、くわしく言ってなかったか。オーケー、オレの知ってるコトを、いちおう、つたえておくよ」
「ゼヒ頼むよ」
「あの祠は、まえにもいったとおり、アヤカシを寄せあつめて、吸いこんじゃうんだよね。ブラックホールみたいに。
でも、エネルギー保存のほうそくで、吸いこんだアヤカシを分解して、ショリしたとしても、カンゼンなゼロにはならない。
つまり、あくまでも、『アヤカシとしてのカタマリ』ではなくなったとしても、アヤカシを構成していたエネルギーは、残ってるハズなんだよね。
じゃあ、『そのエネルギーは、あのちいさな祠の一体ドコにいくのか』っていうコトが、ギモンになるんだけど。ソレはおそらく、異空間にながれて行ったんだろうと」
「異空間?ソレって、あの祠のまえのトビラから入ったときや、この本部のタテモノがある、異空間ってこと?」
「まあソレと近いね。とはいっても、あの祠がつうじている異空間に、われわれニンゲンは、はいるコトはデキない。
あくまでも、アヤカシと、アヤカシを構成していたエネルギーしか、はいるコトはデキない。
でも、その異空間は、おそらく、とんでもなくおおきくて、ひろいとおもわれる。
なんせ、あの祠がデキてから、1300年近く経っていて、1300年間にわたって、たくさんのアヤカシを吸いよせて、取りこんできたんだから」
「1300年!?あの祠って、そんなにむかしからあったってコト?じゃあ平安時代の初期どころか、飛鳥時代のころに、つくられたっていうコトになるのか」
「ソウなるね」
「チョット待ってくれない。1300年近くも、アヤカシを吸いつづけてきたのなら、その吸いこんだアヤカシは、分解されたとして、その異空間のなかで、どういう状態になっているのか」
「ソレは、正確なトコロはわからんよ。さっきもいったとおり、『分解されて、バラバラになったエネルギーとして、その異空間のなかで、ただよっている』と、われわれは想像しているけどね。
いずれにせよ、われわれとしては、エネルギー保存のほうそくで、『吸いこまれたアヤカシが、カンゼンにゼロになる』っていうコトは、まずナイとかんがえている。
つまり、あの祠は、アヤカシを構成しているエネルギーの巨大なタンクというか、貯蔵庫っていうコトになる」
「タンクねえ」
「ソウなんだよね。つまり、1300年間も蓄えられたであろう、膨大な量のアヤカシのエネルギーが、あの祠のなかには、そんざいしているコトになる。われわれ超常者のそしきは、そういう仮説を持ってる。
となると、この祠のコトを、放置しておくワケにはいかない。だがしかし、そんな巨大なエネルギーを蓄えてるタンクを、ヘタにうごかすワケにもいかない。
たとえるなら、キケン性のたかい燃料や爆薬が、たくさん入っているタンクを、気軽にうごかせないのとおなじだね。
だから、われわれ超常者のそしきは、定期的に、あの祠を見まわってて、異常がナイかどうか、監視していた。っていうワケだよ。ソウしたら」
ココまでいうと、大空は、徳康のほうをジッと見てきた。
「ソウしたら?」
「あるとき、その祠のほうから、とんでもないプレッシャーのようなモノが、感じられたんだよね」
「プレッシャー?」
「ソウ、プレッシャー。チョットした異常事態といってもいいか。だから、たまたま近くにいたオレが、ようすを見にいった。そしたら」
「見にいったら?」
「その祠のある公園のベンチに、見知らぬニンゲンがいたんだよね。今にしておもえば、おたがいに、『まわりから、見えないモノを吸いよせる』っていうそんざいだから、よく似ていたんダロウね。
そのよく似ている、ふたつのそんざいが、きわめて近いキョリにいた。だから、一種の相乗効果というか、異常なプレッシャーのようなモノを、まわりに発散させていた。そのせいで、近くにいたオレが、ソレを感じるコトになったんだとおもう。
ソレで、ソコにいたオトコは、祠のまえにあった、さい銭箱にたいして、小銭をいれようとしていた」
「つまりソレは」
「ソウ、トクくんのコトだね。ナニゴトかとおもい、オレが近づいてみたら、そのオトコは、つまり、トクくんは、じぶんが寄せあつめた、たくさん不運や不幸のカタマリを、5円玉に込めているのがわかった。
そして、その5円玉を、祠のまえにある賽銭箱にいれた、まさにその瞬間に、とんでもないチカラが、祠から、あふれだすのを感じたっていうワケだよ。
この祠は、アヤカシを吸いこむチカラを持ってるから、プラスのご利益を願ったトコロで、ナニも効果はナイんだよね。
だから、正確にいえば、じぶんの持ってるマイナスのモノを、つまり、『悪縁だとか、不運や不幸のカタマリを、この祠に捨てる』っていうのが、ただしいお参りの方法になる。
おそらく、ソレにたいして、チャント気がつくコトがデキたのは、トクくんがはじめてダロウね。
だからオレは、おもわず、『正解』といってしまった。ソウしたら、オレの声が、聞こえたようなそぶりを見せた」
「ソウなんだよ。スガタが見えないのに、声だけしたから、えらくブキミだったんだよ」
「オレとしては、空を飛んできたもんだから、セケンのいっぱん人に、このスガタを見られるワケにはいかない。
だから、スガタを隠して、見えないようになる、超常のチカラをはつどうさせていた。
ソレなのに、トクくんは、ダンダンと、オレのスガタが見えるようになった。『コレはオカシイ』とおもって、よく見てみたら、祠からあふれでたチカラが、オレのチカラを、すこし削ってしまったというか、吹きとばしたらしい。だから、オレのスガタが、見えるようになった」
「そういうコトか。だからとつぜん、ソラくんのスガタが、見えるようになったワケか」
「おそらく、トクくんが、じぶんの持ってる、悪縁や不運や不幸のカタマリを、5円玉に込めて、賽銭箱にいれたコトによって、1300年間ものあいだ、祠に溜まりつづけていた、アヤカシを構成していたエネルギーと、ナニカのカタチで、反応をおこしたんだとおもう。
ナンせ、無いしきのうちに、たくさんの悪縁、不運や不幸、負のエネルギーを、あつめてしまう体質を持っているワケだし。
トクくんがいれた、賽銭に込められた、それらの負のエネルギーと、祠に溜まってたエネルギーとが、化学反応をおこすようにして、相互に作用しあったんだとおもう。
チョット大げさな表現というか、たとえでいえば、核融合みたいなもんかな」
「核融合って、えらく物騒なたとえだけど」
「ソウ、カナリ物騒なんだよ。モチロン、そのときは、ハッキリとしたコトはわからなかった。
だから、トクくんのアタマの上に、ふたたびあつまりだしていた、不運や不幸のカタマリを、あの祠にたいして、投げるように言ったワケだよ。
すると、また祠から、つよいチカラの反応をかんじた。あふれでるのがわかった。
だから、あのまま、あのばしょに居続けると、あふれでたチカラをもとめて、たくさんのアヤカシが寄ってくる可能性が、カナリたかかった。
ソウなると、どういうコトが起こるのか、さすがにわからない。だから、祠に設置してあった、あの異空間に案内したんだよね」




