ピンとこない
このように徳康が聞いた、まさにその瞬間に、アヤカシたちは、カラダの一部が吹きとばされたアヤカシにたいして、襲いかかり、食らいはじめたのである。
「コレはまた、ナンともキモチのワルイ光景だけど。いわゆる、共食いってヤツかい?」
「ソウですね、共食いですね。ヤツラはキホン的に悪食なので、おなじアヤカシであっても、弱っているヤツがいたら、襲いかかって食らうんです。
その上、あのエジキになってるアヤカシは、徳康さんがあつめた悪縁を、浴びてしまっていますし。
アヤカシにとって、ニンゲンの不運や不幸っていう負のエネルギーは、好物なんですよ。弱ったアヤカシにたいして、好物がかかっている。
こうなると、いくら知性があるとはいっても、中級程度のアヤカシだったら、たいした知性は持っていないので、知性よりも、食欲が優先されるハズです」
「ソレが、あの結果になると」
「ソウなります」
共食いをしているアヤカシたちは、カラダの一部が吹きとばされた、一体のアヤカシを食い散らかしたあと、こんどは、おたがいに食い合いだしたのである。
「一旦食欲に突きうごかされたアヤカシたちは、好物を浴びたアヤカシを食べおえても、食欲を抑えるコトがデキないようです。近くにいるアヤカシを、おたがいに、食い合いだしましたね。
コウなると、もうカンゼンに、カオスな状態になります。ヤツラに統制の取れた行動なんで、デキるとはおもいません」
「ナルホド、知性があるとはいっても、たいした知性じゃないから、一旦欲望にたいして身を任せると、ブレーキが効かないっていうコトか。
ソレにしても、オレたちはコレから、どうすればいいのか。コイツらを放っておくベキなのか。
さいごの一体になるまで、おたいがいに食い合って、つぶしあってくれれば良いんだけど。
ソウじゃナイとすれば、食欲に突きうごかされたアヤカシたちは、どこかの時点・だんかいで、コッチにたいして襲いかかってくるとか、そういうキケン性・リスクは、ナイんダロウか」
「さすがですね。良いところに気がつきますよ、ホントウに。今日になってはじめて、超常のチカラを知ったニンゲンとはおもえません。
ソウなんですよ。おそらくどこかの時点・だんかいで、ヤツラはコチラにたいして、標的を向けてくるキケン性があります」
「そういう状態になると、しょうじきなところ、アブナイというか、カナリのキケンな状態になるとおもうんだけど。
また5円玉に、オレの悪縁をこめて、ヤツラに投げつけてもいいけど。でも、コレが毎回、うまくいくとはおもえない」
「ヤツラのいしきが、コチラにたいして向かってくるのは、時間のもんだいですが、キケンはナイですよ」
「なんでまた」
と、徳康が、このように岩羽のほうを向いて、聞きかえした。すると、彼女のすぐトナリに、一体のアヤカシがいた。
そのアヤカシは、一見すると、巨大なネコやトラにもおもえるのだが、このようなところに、そういう巨大な動物が、とつぜん現れるワケがナイ。
ソレに、そのそんざい感というものは、とてもじゃないが、「ナマのイキモノ」という印象ではなかった。
「アブナイ、トナリに、ナニカいる!!」
徳康はあわてて、ソウいったのであるが、岩羽は、とても冷静であった。
「ダイジョウブですよ。このアヤカシは、ワタシの飼ってるアヤカシのひとつです」
「飼ってる?アヤカシを?」
「ええ、ソウです。ですので、このアヤカシは、ワタシたちの味方ですよ」
ソウこうしているあいだに、共食いをしていたアヤカシたちは、ダンダンと、沈静化しだした。そして、生きのこったアヤカシたちは、ふたりのほうを、ジッと見だした。
「いきなさい。アイツらはすべて、食べて良いわよ」
岩羽がソウいうと、そのネコのようなアヤカシは、アヤカシの群れに向かって、一気に、ソレこそ、目にも止まらぬ速さで駆けだした。
そして、一カ所に固まっているアヤカシたちを襲い、つぎつぎに、食らいだしたのである。
にげようとしたアヤカシもいたが、にげようとした、まさにその瞬間に、そのネコのようなアヤカシの前足に殴られて、地面に叩きつけられるのであった。そして、その直後には、食われていた。
「ネコ科の猛獣が、エモノを襲ってるみたいだ」
「ネコ科の猛獣ですか。たしかにアレは、ネコのようなカタチをしたアヤカシですので、その表現は、あたっているかもしれません。まあ、ナマエは特につけてないので、ネコって呼んでます」
(ネコねえ、ネコっているよりは、トラやライオンっていう印象だけど)
ネコのようなアヤカシが、アヤカシたちを食らっているようすを、興味本位で見ていたのであるが、ココでふと、徳康は、岩羽のようすが気になってきた。
「オレの気のせいかもしれないけど、なんだか、うかないカオつきをしてるように見える。ナニカのトラブルや、不都合なコトでもあったとか?」
「あ、カオに出ちゃいましたか?チョットまだ、ハッキリとした確信はナイんですが。どうも一連のデキゴトが、腑に落ちないというか。なっとくがデキないというか」
「というと?」
「知性があるとはいっても、ココにいたのは、あくまで、中級レベルのアヤカシたちなんです。つまり、たいした知性は持っていない。
さっき、あの異空間にいたときに、公園の映像を見たじゃないですか。ソコにいたのは、低級レベルのアヤカシだったんです。
そして、ナニモノかが、ワタシがつくったカベに穴を開けて、そのアヤカシたちは、にげだしました。
ソレで、ワタシたちがココにきたら、カベがなくなった瞬間に、やや知性の持った、中級レベルのアヤカシたちが、あっという間に、ワタシたちのまわりに群がってきた。ぐうぜんにしては、どうにも、タイミングが良すぎるというか」
「つまり、ダレかがウラで、糸を操ってると?」
「かもしれません。そのダレかが、ソトからカベに穴をあけて、下級レベルのアヤカシたちを、ココからにがした。
そして、カベがなくなったら、今度は、中級レベルのアヤカシたちを、この公園にあつめた。
ナニモノかが、下級と中級レベルのアヤカシたちを、操っていた可能性がありそうです。
おそらく、下級と中級レベルのアヤカシたちだったら、あるていどのチカラを持った超常者なら、操ってもオカシクはナイです。あるいは」
「あるいは?」
「ニンゲン並とはいかないまでも、ソレに近いレベルの知性を持ったアヤカシが、つまり、上級レベルのアヤカシが、ヤツラを操ったのかもしれません」
「アヤカシのなかには、ニンゲン並の知性を持ってるヤツもいる。っていうコトかい?」
「数はすくないですが。そういうヤツもいます」
「いずれにせよ、ソレがニンゲンにせよ、上級レベルのアヤカシにしろ、なんの動機・ねらい・もくてきがあるのか、サッパリ検討もつかないね、オレには」
「ソウですね。ワタシもまだ、ピンときません」
こういうと、岩羽は、あたりをキョロキョロと見渡しだした。




