今げんざいのコト
「オレも?」
おもわず徳康は、ソレまでつかっていた、敬語やていねい語をつかわずに、答えてしまった。
「ソウです。徳康さんも、この場にひつようなニンゲンだと、はんだんしたんだとおもいます。
だから、ココから避難をさせず、ワタシとこのばしょに、いっしょにいるように、言ったんだとおもいます。
ソレと、もう敬語やていねい語は、つかわなくていいですよ。初対面とはいっても、こうして結構、ハナシをしてますし。もう十分に、『見知らぬニンゲン』っていうワケでもナイとおもうので」
「ナルホド、じゃあおコトバにあまえて、チョット雑な話しかたをさせてもらうけれども、あの大空さんは、ナンでまたオレを、このばしょにのこしたのか、その動機・りゆう・もくてきが、イマイチわからんのだけれども」
「エサじゃないですか?」
「エサ?」
「ソウ、エサです。ろこつにいっちゃえば、アヤカシたちをおびき寄せて、あつめるためのエサっていうコトです。
ナニセ徳康さんは、さっき公園にいたときに、目にしたとおもいますが、まわりから、不運や不幸となりうる負のエネルギーを、吸いよせて、あつめてしまう体質・とくちょうを、持っているくらいですから。
そして、アヤカシたちは、そういうモノが、大スキなんですよ。大好物なんです。
だから、徳康さんがいれば、おそらく、アヤカシが寄ってくるっていうコトを、見越してたんだとおもいます。
というか、もうすでに、さっそく負のエネルギーをあつめてますよ。アタマの上を見てください」
岩羽にいわれ、アタマの上を見てみると、先ほどみたく、また雲みたいな渦のカタマリが、デキあがっていた。
「またコレがデキてんのか。イヤになるなあ。チョット時間が経つと、オレはコウなるのか。というか、今までずっと、オレはコウなってたのか」
「さっき大空さんがいってましたけど。徳康さんが、今もこうして、五体満足で、ケンコウなカラダを維持してるっていうのは、ほとんどキセキに近いコトなんです。
ですので、徳康さんが持ってるのであろう、不運や不幸にたいする抗体や免疫っていうのは、チョット想像以上につよくて、スゴイんだとおもいます」
「ソウいわれても、じぶんじゃ実感がナイんだよね」
「ソレはしかたないですよ。今こうして、はじめて、こういうモノをいしきして、にんしきして、知覚したワケなんですから。
そして、不運や不幸にたいする抗体や免疫が、つよくてスゴイっていうのは、いいかたを変えれば、『アヤカシにたいしても、つよい抗体や免疫をもっている』っていうコトにもなります。
大空さんは、こういう点も見こして、超常のチカラの訓練をしたコトがナイ徳康さんを、このばしょに、のこしたんだとおもいます。
いつもだったら、フツウのいっぱん人を、まっさきに、にがしてるハズですから。
つまり、もう徳康さんは、『フツウのいっぱん人じゃナイ』っていうコトです。そういう、別格のあつかいになっています」
「ソウいわれても、オレとしては、まったくナニも知らないし、デキないシロウトなんだから、ソコはいっぱん人として、あつかってほしいところなんだけど」
「でも、今さらですよ。もう手遅れですね。ハラを括ったほうが良いとおもいます。
徳康さんには、アヤカシにたいする、つよい抗体や免疫があるんですから。ですから、今から起こるコトにたいしても、たぶん、ナントカなるとおもいます」
「というと、コレから先、アブナイ、キケンなコトでもあるとか?」
岩羽のコトバにたいして、しょうじきなところ、徳康は、不安をかんじてしまった。
(コレから先、どういう目に遭い、一体ナニをけいけんするコトになるのかが、サッパリわからん。アブナイ目に遭うんだろうか)
「いえ、コレから先じゃなくて、今げんざいのコトです」
「今げんざい?」
このようにいわれ、徳康は不安になり、まわりを見わたしたのである。だがしかし、べつだん、変わったようすはない。
(変わったコトは、ナニもナイんだが)
徳康が、そのようにおもった、まさに、そのときである。
「じゃあ、スガタが見えるようにしますね」
岩羽がそういうと、まわりの景色というものが、一瞬で変わったのである。いや、「景色が変わった」というよりは、「ソレまで見えていなかったモノが、見えるようになった」といったほうが良いであろう。
徳康は、カラダが凍ってしまったように、うごかなくなった。いや、「うごけなくなった」といったほうが、正解かとおもわれる。ソレは、おどろきからであり、きょうふ感が、りゆう・げんいんであった。




