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9/10

未明

大晦日は、思っていたより早く来た。


冬休みは、何かとやることが多くて、

気づいたら年末になっていた。



受験はせずに働く。


それが多分自分のだした答えだった。




――結婚。



自分で口にした言葉が重かった。


頭の中では、自分と向き合っている気がした。



________________________________________



家を出たのは、夜の10時過ぎだった。


この時間に外に出ること自体は珍しくなかったけど、


そのまま電車に乗って、埼玉まで行くと思うと、

落ち着かなかった。




寒さのせいか、


それとも別の理由か、


体が震えていた。




電車の中は思ったより人が多くて、

ダウンジャケットの中でじんわり汗をかいた。



遥の地元の駅に着くと、


先に待っていた。




「おそい」


笑っていた。


「ごめん、電車混んでてさ」



「うそ」


「ほんとだって」




話してから、家に寄った。



「寒いでしょ、おそばあるからね」



遥のお母さんは、前よりも自然に話してくれた。


二人で食べた。



「ちゃんと食べなさいよ」


「はい!」



それだけの会話だったけど、

受け入れられている気がした。



時間が近くなって、外に出た。



________________________________________


神社までは距離があったけど、

そのまま歩くことにした。



夜の道は静かで、


吐く息が白かった。



「寒いね」


「ほんと」



しばらく歩いていると、

会話が変わった。



学校の話じゃなくて、


これからの話。



「卒業したらさ」


遥が言った。


「どうするの?」




考えてから答えた。


「働くと思う」


「そっか」


「就職?」


「いやアルバイトかな、都内で」



間があった。



「いつか一緒に住めたりするのかな」


遥が言った。



その言葉に、

夢が叶えられそうな嬉しさと、

すぐに叶えられない自分がいることもわかった。



「できるようにしたいね」


「働くしさ」


遥は、黙っていた。




神社は、人が多かった。


甘酒の匂い。


ざわざわした声。



並んで、手を合わせた。

何を願ったのかは、覚えていない。


ほんとに覚えていない。



そのあと、少し歩いて、


近くの高台に向かった。




人は少なくて、

空が開けていた。



持ってきた上着を、遥に渡した。



「いいの?」


「いると思ってさ」



少し体を寄せると、すぐ隣にいた。


特に何を話すでもなく、

時間だけが過ぎていった。



「楽しみだね」


遥が言った。


「そうだね」




少しだけ息が白く重なった。



そのまま、キスをした。






空がふんわり明るくなって、

日が昇った。



「きれいだね」


遥が言った。



「また見に来たいね」



「うん」




帰り道、


手を繋いだ。


離さなかった。


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