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十六、傍観。その3

十六、傍観。その3


売店の外に出る二人。

康義は急いで戻ろうと元来た道へと向かっていく。しかし、相反して司は足を止める。

司の耳に遠くで行われるような花火大会のような破裂音が届く。

「なんか音がする」

「音?」

「うん。やっぱり音がする」

 すると展望台をの方角から音がする。その音がする方向へ足をすすめる司。そんな司の後を追い、康義もその方向へと続く。

距離が段々とブロック塀に近づいていくと徐々に狭まれていた視界が少しずつ解放されていく。その間も破裂音は今も響き続けている。

「この音は?」

 石垣付近で立つ二人の前に広がった景色は、複数体の巨人兵と急襲を逃れた自衛隊が戦闘を行っていた。

無数に並ぶ無骨な戦車達。その上空を戦闘ヘリが飛んでいる。

「身を屈めるだ!」

 右手を上下に動かし、康義は司に向けて指示を与えた。その指示を聞いた司は、康義に促される通り、身体を石垣よりも低い位置まで屈めた。石垣の前に横に並ぶ二人は、ゆっくりと目の高さまで、石垣より少し高い位置まで揚げた。

「戦っている」

 じりじりと前進する巨人兵達。戦車と戦闘ヘリも相対し、直進していく。戦闘ヘリからミサイルが放たれる。ミサイルはまるで白煙が糸引き納豆の様に線を引き、数秒後には巨人兵の身体に次々と直撃する。次々と直撃し黒煙と炎があがる。戦闘ヘリの攻撃に反応するかの如く、戦車も大砲が唸りをあげる。戦車から放たれた砲撃もミサイル同様に次々と直撃し、轟音が鳴り響く。しかし、巨人兵は微動にならなかった。

「これがさっきから響いていた音の原因か」

 康義はその様子を凝視しながら呟いた。

「そうみたいだね」

 それに司は頷き答える。

巨人兵のスピーカー似た形状をした口部分から熱戦が放たれた。

放たれた熱線が戦闘ヘリを襲う。しかし、戦闘ヘリは空中を多方向に移動し、熱戦を回避する。ターゲットを失った熱戦はそのまま直進し、近隣にあった山の頂上に直撃する。

熱戦が直撃した山が大爆発する。黒々とした黒煙と赤々とした炎が混ざり、青一色のキャンバスに上昇していく。と、同時に多数の飛翔物が周辺へと広がっていく。

「改めて見て思うが、なんて威力なんだ」

巨人兵から放たれた熱線は爆発の影響で、爆発地点の周囲から徐々に周囲の樹木に火が移り、更に延焼していく。数多くの炎に木々が包まれてる。

 またも強烈な熱線を巨人兵は放った。放たれた強烈な熱線は戦車達が並んでいた傍らに直撃し大きく爆発した。飛び散る小石が戦車の本体にあたり、高い音が響く。戦車は爆発に反応し、後退し炎上しているエリアにから退避する。このエリアでも激しく木々が燃えている。数十秒後にまたも熱線を放つ。しかし、その熱線は戦車に直撃せず、またも地面にて爆発する。巨人兵が熱線を放ち終えるとその熱線の跡が、地面にオレンジ色の線が緑色のキャンバスに何本も描かれていた。そして、オレンジ色の炎は周囲を浸食し、黒い煙をが数々の場所で立ち上る。

「熱線が直撃していない。なんでだ?」

 その康義の言葉に反応した司は康義の方を見る。

「あいつの攻撃が外れたの」

「みたいだな」

 二人は巨人兵をじっと見つめる。

戦闘ヘリと戦車隊からの攻撃が巨人兵に向け、再び実施された。幾つものミサイルや砲撃が巨人兵へと向けて降り注ぐ。無数の攻撃が受ける巨人兵の身体に幾つもの爆発が繰り返し発生する。しかし、幾つもの爆発に襲われた巨人兵は、全くものともせず一歩前に足を出した。巨人兵の脚が複数の木々を簡単にへし折り、踏み潰した。

その数秒後に空に爆音が轟き渡る。その音に反応し、二人は空を見上げる。

雲もなく青色の空には二機の青色の戦闘機が飛行している。

「自衛隊の戦闘機か」

 飛行機が居る方角の空を目にしたまま康義は呟いた。

 戦闘機が段々と目視できる距離になり、二人は戦闘機の姿を瞳に映していた。

空に響く爆音が、巨人兵との距離が縮まるにつれて徐々に音量があがっていく。巨人兵は強烈な熱線を放つが、全く命中する様子はなかった。

直進する戦闘機。距離が更に縮まり、巨人兵と手前の位置に達した時点で、戦闘機の下部が動き搭載していた複数の対地ミサイルが放たれ、巨人兵へと向かっていく。空を見る巨人兵へと向かった対地ミサイルは急速に降下していく。そして、複数の対地ミサイルが巨人兵の身体に接触した。接触と同時に強烈な光が対地ミサイルから幾つも漏れ、直後には巨人兵の周囲をけたたましい炎が包み、台風のような強風が周囲へ広がり、小規模火山噴火のような轟音が轟き渡り、激しい振動が地面を伝わっていく。

 幾つもの衝撃が二人を襲う。康義は石垣によりかかり、また司は両腕を地面に抑えながら、二人は激しい衝撃を耐えていた。地面が上下に揺れ、二人はしっかりとその揺れを体感してる。

「おおおおお」

 あまりの揺れについ言葉が漏れる司。

 対地ミサイル爆撃による揺れは数秒継続した。そして、揺れは終息する。

「おさまった」

 康義は立ち上がり、ゆっくりと頭部の上半分を石垣よりも高さまで立ちあがり、石垣の向こう側にある状況を覗き込んだ。

「どう?」

 康義の眼に何が映っているのかを司は尋ねた。

石垣の向こう側で大半を占めていたのは、酷く広がった黒煙だった。広がった黒煙も徐々に薄れ始め、正確に状況を把握できるまでになった。

 爆撃の中心地には巨人兵が完全に頭部にあるライトの部が消失していた直立不動のままその場に居た。

「止った」

 司もその言葉を聞いて、ゆっくりと頭の位置を少し高くする。司の視界にも静止する巨人兵の姿が映った。

「本当に止っている」

 見上げる司。

体中から白い湯気が複数個所から立ち上っている巨人兵。その巨人兵の上空を自衛隊の戦闘機が通過する。そして、空中でUの字を描きながら旋回し、巨人兵にトドメを刺そう再び対地ミサイルを放とうと急激な速度で向かってくる。

その時だ。

巨人兵の頭部にある光を失っていたランプが、急にランプが点灯した。しかも、康義達が眼にしてきたのは今まで黄色だったが、今回は赤色の光が点灯する。それだけでなく、赤ランプは徐々に点滅を始め、徐々に早くなる。

「あぶない!」

 康義は巨人兵の行動に気づき、巨人兵に背を向け司に飛び掛かった。

「うわっ」

 康義に飛び掛かられた司は抱き合うような状態のま地面にま倒れ、土煙が舞った。

その数秒後には、巨人兵の身体から光が漏れ、直前まで行われていた自衛隊の戦闘機による攻撃を上回る規模の爆発が発生する。その規模はハリウッドのディザスター映画で見られるような、もしくはネット上で配信されている衝撃的映像集に収められている規模の爆発と遜色ないほどの爆発だった。

熱・衝撃・風・音などの波が周囲を襲っていく。

オレンジ色のエネルギー波は、自衛隊の戦闘機や戦闘機を爆破し、樹木を薙ぎ倒し、岩や土を空中に巻き上げていく。

 司は苦悶の表情で、歯を食いしばっている。康義もへの字を浮かべ、その衝撃に耐え忍んでいた。二人の上空を石や風が通過していく。

その状態が十数秒後続いた。

 二人がゆっくりと眼を開けると先ほどの幾多の波が治まっていた。

 ふらふらな状態のまま立ち上がる二人。

立ち上がった二人の目の前に広がっていた状況は、大規模な森林火災のような有様がそこにあった。所々で黒煙があがり、多数の部分が炎上している。破壊された戦車や戦闘ヘリも燃え上がっていた。そこに巨人兵の姿はない。

「なんだこれ」

 言葉を失う二人。

「まるで核爆発じゃないか」

 じっと眼前のまるで地獄のような惨状をじっと見つめていた。

”ドーン! ドーン!”

 立ち尽くす二人の耳に何かを踏み潰す音が届く。その音に気付き、司は眼を凝らして遠くを見つめる。すると、徐々に薄い大きな影があった。そして、その影は徐々に色の濃さを深く濃ゆくなっていく。

「ヤバイ! あいつが来る!」

 その言葉を合図に振り返り、大きな影とは反対の方向を向き、森へと続く道へと多くの荷物を抱えながら走っていった。

そんな二人の背中をずっと見つめている視線があった。

 

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