十五、傍観。その2
十五、傍観。その2
出口を通り過ぎた二人。
そこには複数の望遠鏡が設置された展望台とお土産が並んでいたであろう売店が二人の視界に入ってきた。売店は扉が開いており、売店内部の様子が見えた。
売店前に一本通った歩道に立つ二人。周囲を眺める司。
そこには木々が薙ぎ倒された痕跡や、燃え上がり黒焦げになった木々の痕跡がある。
この歩道の先では激しく損傷し崩壊していた。
遠くで破裂音が続いている。
「父ちゃん。ここも襲われたみたいんだね」
「そうみたいだな。この売店が残っているのが奇跡だな」
二人はゆっくりと売店へと近づいていく。
売店の室内は並んでいた棚は倒れている。床には色んなチラシが散乱していた。
「ここも慌ててみんな出ていったんだな」
その様子を見てて司が思わず呟いていた。
「この中に何かあるか探してみよう」
二人は二手に分かれて、室内を物色し始めた。
司は従業員の部屋に入室する。
従業員室も売り場と同様に室内が激しく散乱している。司は入室し数秒間首を左右に降り続けた。そして、金属製のキャビネットが目に入る。そのキャビネット前に数歩歩いて移動する司。両手で持ち手を握ると引いてキャビネットの扉を開いた。その中には多くの資料と一番下の段にダンボールが配置されていた。
一旦、上から下へ視線を動かした司は、腰を落としダンボールを抱えキャビネットの中から動かした。抱えたダンボールを床に置き、司はダンボールを開封した。そこには銀色のリュックサックが2つ収納されていた。
「よっと」
二つあるの内の銀色のリュックサックをダンボールから引っ張りだすと、袋を開き中身を確認する。銀色のリュックサックの中には、飲料水や絆創膏等の医薬品、他にもタオルや非常食が入っていた。
「これ非常用リュックか。これを持ち出せない程に慌ててたんだな」
そのまま司は二つの非常用リュックを背中に背負う。そして、そのまま備品捜索を継続していく。歩いていくと蹴った荷物が空のブリキ缶と衝突し音が響く。若干、ブリキ缶が少し位置が奥に動く。部屋の最深部へと移動する司。最深部へと進むとそこにも金属製で観音扉の棚があった。その扉の前に立つと両手で扉を空けた。そこには緊急箱が収まっていた。それを手に取り救急箱を開けた。緊急箱の中身は未使用の薬品類があった。
「これも使える」
そう言うと司はリュックサックの中に医薬品を投げ入れていく。
一方、康義は売店で使えるものを探していた。
「まだ、電気は届いているみたいだな」
多様多種庫なジュースが格納されている冷蔵庫が稼働しているのを見て康義は呟く。
冷蔵庫を開けてミネラルウォーターや緑茶を数本抜き出す。籠に抜き出した数本の飲料水を格納する。立ち上がり次の場所へと移動する。次に向かったのはアルコール売り場の前に立った。そこには複数種類のアルコールが並んでいた。瓶や缶。それに紙パック。
「これほど並んでいれば大丈夫そうだな」
康義は上から下へと移動させながら確認していく。
「父ちゃん」
背後から声をかけてくる司。それに気づいて振り向く康義。
「おう。そっちどうだった?」
「あたり」
そう言うとにんまりとし司はた表情で、両手に持っていた非常用リュック掲げる。
「一つ俺に渡してもらっていいか? こっちも荷物入れるのに使いたいから」
「うん」
司はそう返事すると一つ袋を康義に渡した。康義は非常用リュックを右手で受け取る。
「父ちゃん、お酒売り場の前に来てこんな時にお酒?」
「そんな訳ないだろう。アルコールは燃料になるから、アルコール度数の高いお酒を探しているんだよ」
そう司に応える康義は、視線で目的の品を探す。棚にはビールやワインに日本酒が並んでいる。容器の形状も色々あり、ビンの容器や、缶の容器、プラスチックに紙、丸いものもあれば、四角の容器も存在している。数あるお酒の中で、一本の透明なガラスで造られているビンを手に持った。そして、裏のラベルを見る。
「アルコール度数二十パーセントか。ちょっと弱いなあ」
そう呟いた康義は、手にしたガラス瓶を所定の位置に戻した。
「なんか基準でもあるの?」
そう尋ねる司に顔を振り向いた康義は応えた。
「当然の話ではあるけど度数が高ければ高い程、着火がしやすいわけだ。そうした時にアルコール度数が二十パーセントだと火が着かない。最低でも四十から五十は、いや、四十パーセントじゃ不安だな。やっぱり最低でも五十パーセントは必要だと思う」
「へ~え」
康義の知性が光る言葉に司は、自分の父親が博識なことに軽い感動を覚えた。
康義はそのまま棚をアルコール度数が高そうなお酒を求め、視線を激しく上下左右へと動かしていく。そして、今度は茶色のガラス瓶を手にする。そして、ガラス瓶をひっくり返し、裏のラベルに書かれた情報を確認した。そこにはアルコール度数五十パーセントと記載されていた。
「よし」
満足した表情で防災リュックに収納する。
「今のは?」
「ウォッカだな。幸いなことに棚に数本ある」
そう促され、視線を棚に目を移すと先ほど手にしたウォッカと同じものが縦一列に並んでいる。康義はそれを手にしては防災リュックに格納し、また次を手にし防災リュックへと格納していく。そして、また棚に視線を戻し上下左右に動かしていく。そして、他の茶色に染まったガラス瓶のアルコールを手に持つ。
「このウオッカは六十度かこれもいけそうだな」
そのウオッカを何本か康義は更に数本程度を防災リュックに格納していく。
「よし」
そう言って周囲を康義は見渡す。すると、何かを見つけてそれがある棚へつかつかと向かっていった。康義が動くその後を司も追う。康義はピタリと棚の前に立ち止まり、両手にチャッカマンとマッチ箱を手にする。
「確かにそれは必要だね」
司は康義の両手に持っている道具を確認して呟いた。
「あとは食べ物かな」
そういうと周囲を見渡し、康義は何かを発見する。
「司。あの買い物バッグを二つ持ってきてくれ」
「わかった」
司は促されると視界に入った買い物バックの置き場へと走って向かう。そして、その棚の前で立ち止まり康義は振り返った。
「いくつ?」
「二つ」
その返事を聞いて、目の前にあった買い物バックを二つ手にし康義の元に戻った。
「一つ貰うよ」
買い物バックを手渡す司。それも手にする康義。
「保存期間が長いものを中心に買い物バックに入れてくれ」
「保存期間が長いもの? 了解」
二手に分かれて、保存期間が長いものを中心に買い物バックの中に缶詰めなどをどんどんと収納していく。
それから数分間が経過する。
「司。終わった?」
「うん」
そう返答すると買い物バックの中身を見せる。そこにはサバやシーチキンの缶詰めや複数種類のパンが沢山収まっていた。
「父ちゃんは?」
「これくらいだ」
同じように康義も買い物バッグを広げ、同じように買い物バッグに沢山の食べ物が収まっていた。
「よし、そろそろ行くか」
そういうとカウンターの前に向かい康義はポケットから財布を取り出し、財布の中にある三万円を壊れたレジの中にいれた。
「これでOK」
康義はレジに背を向け、店の外へ出ていった。その後を追っていく司。




