十四、傍観。その1
十四、傍観。その1
二度目の巨人兵襲来から数時間が経過していた。
五人は浅瀬の川を歩いていた。歩き前に進む度に少しばかりの水飛沫舞う。
巨人兵が破壊活動をし始めてから五人は、横穴に隠れ周囲から騒音が鎮まるのをまっていた。しかし、その場で待つも状況が変わる事もなく、そんな状況が十数分続き、仕方なく五人はその横穴を進むことを選んだ。
非常に暗く五人は壁を触り、慎重に横穴から続くトンネルを前に前にへと進む。
五人の肌を水の冷たさと石壁の触感が肌を通し伝わっていく。
トンネルを進み続けた五人の前に出口が訪れる。トンネルを抜けると両脇に森林が谷の様に並び立っていた。
野鳥の囀りが空間に響いていた。
空は日光が照らし続ける。時折、木漏れ日が五人のもとへ届く。
それから五人は川を歩き続けていた。
アクティビリティとして川歩きをしているのであれば、これだけ気持ちい状況はない。
しかし、その場に居る人間にはそんな気持ちを持つものは居なかった。
「父さん」
先頭を行く康義に恵は声をかけた。
「どうした?」
前を進みながら康義は言葉を返す。
「質問いい?」
「ああ」
他の三人の視線が、二人に向く。
「どうして父さんは、あの時にみんなを用水路へ避難するように判断できたの?」
恵はその言葉を言い終えた後に康義以外の視線が自然と康義へと向かう。
「それか」
康義が一瞬間を空ける。水の音が足元を流れる水と共に流れていく。
「あの瞬間、どうして自分たちが生き残れたのかを考えてた」
瞬間的に康義は顔を上げ空を見上げる。
「自分は、学校。恵は海岸。司と雪さんは地下鉄。そして、さゆみさんは自宅。そこで、それぞれ助かることができた。その中で共通項はあるかを探したんだ」
「父さん。それで?」
その間も足元の間を水が流れ過ぎて行く。
「昨晩、みんなの話を聞いた内の三つに共通するものがあった。それが今自分たちの足元を流れているこれ」
康義は一旦立ち止まり足元で流れる水を指さした。他の四人も立ち止まり、康義に促され皆足元の川に視線を落とした。
「水……」
「康義さん、水って?」
康義は止った足をまた動き始める。
「スプリンクラーに海水、浴槽。みんな共通してる点とし身体に水を浴びているってことが共通点としてあげられるんだ」
「でも、父ちゃん。俺と恵は水を浴びてないよ」
「そう。だからこそさらに考えた。二人との共通点を」
「それで何か気づいたことはありましたか?」
「ここで少し視点を変えて、なぜ我々三人をあいつは攻撃しなかったのか。それを考えてみると、あいつらはあの時に自分を含めた三人を攻撃対象として認識できていなかったんじゃないかと思うんだよ」
「なぜ?」
「そこに自分たちがずぶ濡れになったことが関わってくるんだけど、あいつらには目といったものがなくて、その代わり体温で判断しているんじゃないかと思うんだ。あいつらは三十六度前後の温度を検知し攻撃する。しかし、その範囲が温度が外れるとあいつの攻撃対象から外れるようになる。だからこそ、自分たちはずぶ濡れになって表面温度が下がり、あいつの攻撃対象から外れることになった。そして、生き残ることができたということなんだと思う。司達も地下道にいたからあいつらは温度を感知することができず攻撃を受けることはなかったということなんだろう」
「なるほど」
司は康義の話に想定外だったらしくつい唸ってしまった。
司の表情とは反対に雪は納得のいかない表情を浮かべていた。
「でも、それじゃ人類を全滅させるのに攻撃として不十分じゃないのでは?」
「それが目的じゃないのかも」
「え?」
雪は想定外の言葉に言葉を詰まらせた。
「確かにあれだけの破壊活動をしていたらあいつらの行動目的は人類全滅が目的なんじゃないかと雪さんみたいに考えてしまうとは思う」
「そうね。わたしも康義さんの言う通り雪さんと同じこと思ったわ」
さゆみも雪の意見に同意する。
「でも、さっきも言った通りあいつの攻撃は仮に人類を全滅させるという目的だとしたら、あまりにもザルといっても過言じゃないと思う」
「たしかに」
またも唸る司。
「それでもあいつの目的はわからんがね」
前に進み続ける一堂。水飛沫は進み続けると同時に宙を舞った。
巨人兵による二回目の衝撃からもう数時間が経過していた。しかし、遠くのところで未だ音が疼いていた。流れる水音と重なる。
「まだ続いてますね。今回は長いな」
空を見上げながら雪は呟いた。その表情には不安の文字が表れていた。
「本当に何が目的なんだろうな」
司も巨人兵の攻撃音が疼く空を見上げる。
彼ら歩いているの川の角度が少しばかり高くなっていく。
段々と川から渓谷へと変化していく。
当然ながらあの襲撃を受けてから逃げる為に歩き続けていた。
「お父さん。疲れた」
「そうね。ここまで歩き続けてきたから。康義さん、少しばかり休みませんか?」
「そうだな」
さゆみと恵のお願いに同意する康義。すると康義は周囲を見渡した。
康義の視線の先には、石が積もった岸辺を見つけた。
「あそこにしよう」
康義は指を指し、河岸を指さした。
「そうだね。あそこにしよう」
司の宣言をきっかけにに五人の方向を河岸に変え、そこへと真っ直ぐ進んでいく。
徐々に川の深さが段々と高さがどんどんと下がっていく。
河原に転がっている軽自動車用タイヤ位程の大きな石の上にそれぞれ腰かけた。
さゆみは上着の下部を両手で握りぞうきんを絞るように捩じった。それと同時に多く上着に含まれていた水分がばたぼたと零れ落ちる。
「さて、どうしますか」
恵は一言呟いた。
皆周囲の様子を見渡した。すると、小さな道があることに気が付いた。すると、そこに展望台方面と書かれた木製の看板を見つけた。
「よし、展望台方面に食品があるか言ってみるか。よし。ここで待機するグループと展望台へと向うグループとで二手に別れよう」
その言葉に恵が反応する。
「父さん。どう分かれるの?」
「展望台方面へは、俺と司で行く。三人はここで待機してくれ。ここであれば、奴らが近くに出現してもすぐに川へ潜れば、命は助かる可能性が高い」
「わかりました」
雪は康義の指示に頷く。
「もし、自分たちが一時間以上戻って来ない場合は、川を歩きここを離れるんだ。いいかい?」
「ご無理なさらないでくださいね」
さゆみは心配そうに二人を見つめている。
「ああ。気を付けるよ」
さゆみの言葉に少し笑顔で応えた。
「父ちゃん。行こう」
二人は立ち上がると小道へと向かって歩き始めた。
小道を進む姿が徐々に山道に消えていく。その姿を三人はじっと眺めていた。
小道を進む康義と司。
足元の枯れ葉を踏むをザクザクと踏みしめる。木漏れ日が二人を照らす。
「展望台まではどのくらいかかるんだろう?」
「流石に一時間も歩くってことはないだろうとは思うがな」
歩き続ける二人。時間が十五分程過ぎる。すると、道の出口が見えてきた。
それと同時に小さい破裂音が響く。耳に届く音に警戒しながらもその足を一歩前に進める。その速度は少し前に進めていた速度よりもゆっくりとスピードを落としていく。
二人は山道の出口へたどり着く。




