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【連載版】腰巾着(親衛隊)の伯爵令嬢に婚約破棄の伝言を託したのが、王太子の間違いだった  作者: Vou@書籍化進行中
【第二の伝言】夜会での噂

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第八話 親衛隊隊長との密談

「皆様、本日はお集まりいただきましてありがとうございます」


 王太子ユリウスが参加者の一人一人を確認するように、夜会場を見まわした。


「この度は王家の内部での問題でお騒がせして申し訳ございませんでした」


 クラリッサはユリウスの演説に真剣に耳を傾けているようだった。

 ユリウスを見るその目は恋をする乙女のそれで、何だかいつもの倍、可愛らしくて魅力的だわ、と親衛隊の二人はクラリッサから目が離せなくなっているのだった。


「ですが、問題はしっかり処理し、王家は速やかに体制を整え直しましたので、ご安心ください」


 「問題」という言葉に反応し、ミリアはふと我に返った。


 ——何だか話が長くなりそう……。


 そう思うとミリアは無性に焦りが募ってくる。


 横のヴィオレッタを見ると、クラリッサに釘付けだった。きっとユリウスの話など一言も耳に入っていないだろう。

 しかし、ことは一刻を争うのだ。


「ヴィオレッタ様」


 ミリアはヴィオレッタの耳元で小さく言った。

 クラリッサに聞かれるわけにはいかない。


 けれど、ヴィオレッタは何も反応しない。


 ——まずいわ。陶酔(トランス)状態に入ってしまっている……。


「ヴィオレッタ様! クラリッサ様に危機が迫っています!」


 小さい声になるよう努めながらも、強く言った。


 すると、ヴィオレッタの表情がみるみる歪み始め、気づくと鬼の形相に変わっていく。

 その顔が向けられると、ミリアも恐怖で一瞬すくんだが、次の瞬間には頼もしく感じていた。


「どういうことなの、ミリア?」


 ヴィオレッタも声をひそめてミリアに言った。


「クラリッサ様とヴィオレッタ様がここにいらっしゃる前に、令息方が声をひそめてお話するのを耳にしてしまったのです。どなたかはわからなかったのですが……」


「あなたの耳の良さはよくわかっているわ。それで、何を聞いたの?」


「『王太子レオンハルト派』の方々が、レオンハルト元殿下の廃嫡にともなって失脚しているそうなのですが、どうもクラリッサ様に逆恨みをしているそうなのです」


「なるほど。それはありそうなことね」


「リュシアの聖女認定を取り消され、叛逆の芽を摘まれた聖教会も、同じようにクラリッサ様に恨みを持って……『王太子レオンハルト派』と手を組んで、クラリッサ様を狙ってくるのだとか……」


「偽聖女と偽女神を信奉する邪教徒どもね」


「……一応、正規の聖教会のことだと思いますが」


「クラリッサ様以外を信奉する者はすべて邪教徒よ。しっかりなさい、ミリア」


 ミリアは、はっとした。


「申し訳ございません、ヴィオレッタ様。邪教に惑わされるところでした」


「わかれば大丈夫。あなたはまだ正気よ。

 つまり、その二つの叛逆勢力が手を組んで、クラリッサ様を陥れようとしているのね」


「いえ、もうひとつの勢力が……」


「クラリッサ様に歯向かおうとする勢力がまだいるというの?」


 ヴィオレッタの顔が悪鬼のようにさらに歪む。


「はい、クラリッサ様を攫い、私物化しようとする者がいるようです」


「確かに、クラリッサ様を手に入れれば、女神を手にするのと同じ……そんな身に過ぎる野心を抱く愚か者もいるということね……」


「はい、その人物もこの夜会場におります」


「その人物に加え、『王太子レオンハルト派』の残党貴族や聖教会と結びつきの強い貴族も紛れ込んでいるわね。つまり、クラリッサ様は大きな危機の渦中に、自ら足を運んでしまったということね」


 ヴィオレッタのその言葉に、ミリアがうっすらと目に涙を浮かべる。


「私たちがレオンハルト様を追い込んだことで、クラリッサ様に危険が及ぶかと思うと申し訳なくて……」


「何を言っているのよ、ミリア。私たちはクラリッサ様に襲いかかった害虫を振り払っただけよ。

 クラリッサ様がこの地上の女神様である限り、不浄の悪魔たちの妬みや攻撃が止むことはないの。それを全力で守るのが、私たち親衛隊の、女神様から賜った大事な役目なのよ。私たちはただその任務を一生懸命果たすだけ。しっかりなさい」


「はい、ヴィオレッタ様」


 今日は何度も「しっかりなさい」と言われてしまった。ミリアは気を引き締めた。


「とはいえ、『王太子レオンハルト派』に聖教会に盗っ人貴族までとなると、あなたの手には負えないわね。この件は私に任せなさい」


「はい……。ありがとうございます」


 本当に頼りになるお方だ、とミリアは思った。



「では皆様、今宵は存分にお楽しみください」


 王太子ユリウスがようやく長い演説を終えたところだった。

 その視線は、最後にクラリッサに向けられ、ユリウスは微笑んでいた。


 その視線に応えるようにクラリッサの頬は紅潮し、はにかんで微笑んだ。


 この尊い笑顔を絶対に守らなければならない——親衛隊の二人は改めて決意を強くするのだった。

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― 新着の感想 ―
「クラリッサ様以外を信仰するものはすべて邪道よ。しっりしなさい!」「はいっ!」 の、やりとりが、めちゃくちゃかわいい。 ヴィオレッタ様、ガチ勢。聖教会よりクラリッサ様なのね。
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