第五話 公爵家のお茶会と末端親衛隊員
「まさか、叛逆者の方と婚約していただなんて、信じられないわ」
クラリッサが言った。
レーヴェンハイト公爵家の屋敷で開かれたお茶会には、ヴィオレッタ、ミリア、そして王太子ユリウスが招かれていた。
「でもよかったですわ。クラリッサ様があの男と結婚する前に悪事が明るみに出て、婚約破棄できたのですもの」
ミリアが上機嫌に言う。
「本当にあなたたちのおかげですわ。ありがとうね。『腰巾着』なんて揶揄されたようですけれど、とんでもない。あなたたちは私の大切な友人ですわ」
クラリッサが小さく頭を下げた。
「もったいないお言葉ですわ。親衛隊として当然のことをしたまでです」
ヴィオレッタも満足そうに小さく笑みを浮かべて言った。
「もう、ヴィオレッタったら。親衛隊なんて恥ずかしいからやめて」
そう言いながら、クラリッサが微笑む。
ヴィオレッタもミリアもその美しい微笑みを見て恍惚とする。
「クラリッサ様が嫌だと仰っても親衛隊は永遠に続けますわ」
ヴィオレッタがそう言うと、ミリアも頷く。
「私たちはクラリッサ様の笑顔を必ず守り続けます」
そこにユリウスが口を開いた。
「僕も親衛隊の末端に入れていただくことになりましたので、よろしくお願いします」
ユリウスの言葉に、クラリッサが目を見開く。
「もう……。ユリウス殿下までからかわないでください」
クラリッサがまた笑うが、ユリウスは真剣な顔をする。
「いえ、からかってなどおりません。兄上の手前、ずっと遠慮しておりましたが、ずっとクラリッサ様のことをすてきな方だと思っておりました」
「えっ……」
クラリッサが顔を赤らめる。
決められた婚約に従うしかないと考えていたクラリッサは、レオンハルト以外の男について考えないようにしていた。けれど、そのしがらみがなくなった今、ユリウスのことを想うと胸の辺りが高鳴るのを感じた。
「親衛隊では末端ですけれど、どうやらユリウス殿下にはクラリッサ様の笑顔を生み出す力があるようですわね」
ミリアがユリウスに言った。
「そうね。ユリウス殿下なら、親衛隊としても婚約を認められるわ」
ヴィオレッタも同意する。
クラリッサとユリウスは恥ずかしそうに見つめ合い、微笑み合うのだった。
しかし、この王太子レオンハルトの叛逆事件は、クラリッサ親衛隊が巻き起こしていく、王国を揺るがす諸々の大事件の端緒に過ぎなかった。
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