第二十二話 呪言を聞いた王宮の人々の呪言を聞いた侯爵令嬢と伯爵令嬢
ヴィオレッタとミリアは手を取って踊っていた。
「クラリッサ様、世界を支配」
「クラリッサ様、世界を支配」
親衛隊の精鋭二人は、多幸感に包まれ、熱に浮かされたように踊っていた。
王国中の、そして世界中の誰もがクラリッサのすばらしさを認め、クラリッサのために生きる。その理想の世界が突如現れたのだ。
その多幸感に酔っていた二人だが、ふいに浮かんだ疑問によって我に返った。
「……なぜクラリッサ様は、これほど一瞬にして世界の支配を進めたのかしら?」
ヴィオレッタが呟いた。
「言われてみれば……『クラリッサ様、世界を支配』って、至極まっとうなことを言ってはいますけれど……何か様子が変です」
ミリアも首を傾げた。
「まさか……『呪言』?」
ミリアがそう口にすると、ヴィオレッタが頷いた。
「クラリッサ様がすばらしいのは誰にでもわかることだけれど、一瞬にしてその真のすばらしさが理解できるほど、底の浅いすばらしさではないわ。あの方々は、きっと『呪言』によって、誤った理解をしているのだわ……」
「許せない……。これは、クラリッサ様への冒涜です。まやかしに浮かれてしまった私自身も許せません」
「そうね、ミリア……。私もクラリッサ親衛隊隊長として、恥ずかしいわ……」
ヴィオレッタとミリアは表情を引き締め、唱和しながら行進を続ける人々を見た。
「……あの人々は行進して……王宮を出て行っていますけれど……どこに向かっているのでしょうか……?」
ミリアの問いに、ヴィオレッタが目を見開いた。
「嫌な予感がするわ。追ってみましょう」
二人は早足で王宮を出て、行進する人々の向かう先を確かめた。すると、その行列は貴族街の方へ伸びていた。
「しまった! クラリッサ親衛隊隊長の私としたことが……何という失態!」
ヴィオレッタが叫んだ。
「ヴィオレッタ様……まさか……」
ヴィオレッタの顔には、ミリアがかつて見たことがないほどの焦燥の色が浮かんでいた。
「この者たちは、レーヴェンハイト公爵邸……クラリッサ様のところに向かっているわ。世界の支配者として、戴冠していただくために」




