第十一話 王国騎士団長
その後、ヴィオレッタは夜会場に戻り、アレクシスは王宮内を歩いていた。
アレクシスが向かった先は王国騎士団の詰所だった。
彼はそこに目当ての騎士を見つけた。
「やあ、オスヴァルト。夜番だったか。ちょうどよかった」
アレクシスが声をかけると、夜会警備の責任者オスヴァルト——現王国騎士団長が振り返り、アレクシスに向けて大きな笑顔を見せた。
「アレクシス様ではないですか。ここにいらっしゃったということは、ついに王国騎士団への加入……いえ、王国騎士団長になっていただけるのですね。やはり王国最強の剣聖にこそ、この職はふさわしいのです。私には荷が重すぎます」
「王国騎士団になど入らんわ。俺は王国のために振るう剣は持ち合わせんのだ」
それを聞いてオスヴァルトは露骨に落胆の表情を見せた。
「考えは変わりませんか……。それでしたら本日はどういったご用件で?」
「王国騎士団は、王国のための剣だと考えてよいな?」
「はい? それはそうですよ。だからこそ『王国』騎士団なのです」
「そうだよな。では、おまえたちの出番だな」
オスヴァルトは首を傾げる。
「……どういうことです?」
「王国の危機が迫っているのだ。戦争だ。俺はそれを伝えに来てやったのだ」
「はい?」
「先日、王太子が廃嫡されて投獄されただろう? それで『王太子レオン派』が現王国に逆恨みをしているのだ」
「『王太子レオンハルト派』ですね。レオンハルト元殿下のお名前を間違える方に会ったのは初めてですよ」
「間違えたのではない。省略したのだ!
ともかく、そいつらが近衛騎士団を牛耳って挙兵するので、まず近衛騎士団を抑えなければならない」
「は?」
「それは俺が適当に対処しておくからいい。それよりも問題は聖教会騎士団だ」
「え? 聖教会騎士団? 何の話をされているのかぜんぜんついていけないのですが……」
「『王太子レオンハルト派』が聖教会とつながっていて、挟撃してくる作戦だろう」
「聖教会騎士団が王宮に攻めてくるのですか?」
「王宮というか、クラリッサ様だ」
「クラリッサ様? 公爵令嬢の?」
「そうだ」
「なぜクラリッサ様に?」
「それはクラリッサ様が前王太子を追い詰めたからだ」
「え? それならユリウス殿下の方が狙われるのでは?」
「ユリウス殿下?」
「えっ? ご存じないので? 新しい王太子ですよ」
「ああ……。そっちは一人二人の護衛で大丈夫だ。やつらの狙いはクラリッサ様だからな」
「……」
「クラリッサ様がすべてを操っていらっしゃるのだ。レオンハルト元殿下を追い詰め、ユリウス?殿下に王太子への道を作ったのもクラリッサ様なのだからな」
「はあ……」
「それからもう一つ」
「まだあるのですか?」
「闇ギルドも動いている。クラリッサ様を誘拐して、王国の実権を握るつもりだ」
「いや……」
「すべての襲撃が今夜起こるのだ」
「何の根拠があって、そんな大それた話を?」
「とても信頼できる筋からの情報だから絶対に間違いない。俺ももちろん協力するが、王国騎士団も対応しなければ、王国が破滅してしまうのだ。やってくれるな?」
「王国騎士団を動かすには国王陛下の許可が必要です」
「王国の存亡がかかった緊急事態なのだぞ。王国騎士団長には非常時の出陣決定権があるだろう? 陛下には俺が後で説明しておくから心配するな」
「しかし……」
「わかった。では数十人くらいでよい。王国への忠誠心が強い者を頼むぞ」
荒唐無稽な話としか思えなかったが、それが「剣聖」アレクシスの言葉であるために、オスヴァルトは無碍にすることができなかった。




