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全知の脇役令嬢は不幸な未来をぶっ壊す  作者: 楠ノ木雫


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第四十一話 思わぬ助力者 ③


 とりあえず、この川の下流がどうなっているのか調査した方がいいわ。あとは、この毒の解毒薬。



「ディオン、ブランシス家の薬師と医師を連れてきても?」


「あぁ、好きにしろ」



 薬師たちを連れてくる事と、あと下流の調査を山の麓で待機する騎士達に指示するよう護衛を一人下山させた。帰り道が分からないから、弟が道案内をしてくれるらしい。



「私の妻は優しいな」


「……貴族達のわがままに付き合わされて命を落とすだなんて、馬鹿馬鹿しいでしょう?」


「ほぉ、これを貴族達のわがままだと思うのか」


「毒なんて高価なものを用意出来るのですよ? それに、戦闘民族達に喧嘩を売るような馬鹿げた事をする愚かな者達です。となると?」


「私の妻は賢いな。おおかた、先ほど怒鳴りに来ていたハエだろうな」



 ハエ、ね……流石ディオンだわ。


 とりあえず、まずはその毒に犯された子供達を解毒させ回復させるのが先決。あとは、水が使えなくなってしまい食べられる食料もないのだからどこかから物資を運んでもらわないといけないわね。


 私が指示した物資は、私が思うよりもすぐ用意され運ばれてきた。


 ブランシス大公邸にいる、アルビーナ民族の者達によって。もちろん、解毒薬は服用している。それだけ、ブランシス大公家お抱えの薬師と医師は優秀だという事だ。


 そして、薬師と医師にすぐに子供達の診察を始めてもらった。けれど……



「旦那様も診てちょうだい。毒物のある水で淹れたお茶を飲んでしまったの。すぐ吐き出したのだけれど、少し飲んでしまったかもしれないわ」


「飲んでしまわれたのですか!」



 ディオンの腕を掴み半強制的に医師のところへ連行した。医師はだいぶ驚いていたけれど……



「いや、私は後でいい。妻に診てもらったからな」


「ディオン! おふざけはいりませんっ!」


「だが熱もない。それはローズが診ただろう」


「あとから症状が出るかもしれませんよ」


「なら出てからでいい」



 と、医師を行かせてしまった。もう……人手が足りないからという気遣いではあるのかもしれないけれど……かも、しれない、けれど……?


 それより、だいぶご満悦のようではある。心配されたのがそんなに嬉しかったの? 毒を飲んだのに?


 内心呆れたけれど、ディオンの事はちゃんと見ていようと思いつつ先ほどまでいた建物に戻った。



 そして、この里での今の現状をルニから話してもらった。



「一年前くらいから、いくつもあったはずの依頼がパタリパタリと少なくなっていったんだ。知り合いからの依頼もあっていくつかはこなせていたんだが……最近全く来なくなってしまった」



 なるほど。バリエ侯爵領だから、おおかたその侯爵の仕業でしょうね。



「そして、最近のいざこざのせいで麓近くの店では食料などを売ってもらえなくなってしまい、遠くまで買いに行かねばならなくなった。だが、遠くに行くにも金がかかる。こうなってくると大量に買わねばならなくなるから荷物も多くなる。そして、その時に舞い込んできた、ブランシス夫人の誘拐依頼」



 なるほど。依頼したバシュラール伯爵は、この現状を知り絶対にこの依頼を受けるだろうと踏み依頼したという事ね。けれど、何故それを知っていたのかしら。



「依頼の対象である私の妻は上位貴族である大公夫人。護衛も優秀なため誘拐となれば一筋縄ではいかない。となると人手がいるため、里が手薄になる。それを狙い、隙を見て毒を川に流したのだろうな」


「見つかるリスクを下げた、ということかしらね」


「あぁ」



 まぁ、ディオンのおかげで誘拐される事はなく、ここの川に毒素が含まれている事に気が付くことが出来た。



「奴は、俺達を自分が治める領地の領民とすれば金を払わずとも利用出来ると思い込んでいる。おおかた、この毒の解毒薬を用意して首を長くし待っている事だろうな」



 まぁ、もうこの里の者達全員を医師に診察させ、薬師に解毒薬を作ってもらっているけれど。


 けれど、里の者達には生活がある。私達が支援するにも、川に毒素があるためここで生活をするには難しくなってしまっている。


 となると、引っ越しよね。小説でも、やむなく違う山に引っ越しをしていた。カロリーヌ、そしてエリク殿下と共に事件を解決し、その報酬として支援をされる。そのおかげで友好関係を築く事に成功する。


 でも、その時はもうすでに死者が出ていた。恐らく、今毒の症状が出ている子供達だ。だから、それでは遅かった。けれど、今ならまだ助けられる。



「まだ、依頼の報告はしていないのよね?」


「あぁ。とはいえ、俺がここにいる事がバリエ侯爵の耳に入った。もし奴が依頼主と繋がっているのであれば……」


「なら、早い方がいいわ。殺害、ではなく誘拐。なら、私を誘拐した後どうするつもりだったのか、興味があるわ」



 依頼主の伯爵も、その煩い領主のバリエ侯爵も貴族派。果たして、私の事をどう思っているのかしら。着々と力を付けてしまっている私達を煩わしく邪魔な存在だと思っているのであれば……始末するつもりだったのかしら。まぁそれは、本人達に聞いてみないと分からないわね。


 けれど……隣のディオンは少し不機嫌そうに私を軽く抱きしめてきた。



「まさか、わざと誘拐されるなんてことは言わないだろう?」


「あら、旦那様にはそんな無謀な事をするような女に見えるのですか?」


「私の妻は強かで男らしいところはあっても、時には無茶をするからな。夫の私は釘を刺す役目を取らねば怪我をするだろう。だが、それは勘違いだったな」



 まさか、自ら怖い目に遭いに行くなんて馬鹿な事はしませんよ。そんな怖いもの知らずだったとしたら命がいくつあっても足りないわ。まぁ、族長のルニがいるから危険はそんなにないとは思うけれど。


 私と同じような背丈の女性を里の中から探し、私の服を着せればいい。まぁ、マーメイド服であれば体格が見えてしまうから……それを重視して選ばないといけないわね。



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