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全知の脇役令嬢は不幸な未来をぶっ壊す  作者: 楠ノ木雫


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第三話 舞台に引き込まれたエキストラ ③


 そして、数日後。



「久しぶりだね、ローズ」


「……おひさしぶり、です……」



 同じガーデンテーブルに座る男性は……ロラン・ベルナール。ベルナール侯爵家の次男であり……原作通りに行けばのちの私の旦那となる予定の相手だ。


 顔が整っており、緑色の短髪に青い瞳がとてもよく似合う方。……らしい。小説ではそう書かれていた。世間的にはかっこいい分類みたいだけれど……大の女好き。小説では、断罪イベント後カロリーヌに手を出して即退場する運命にある男だ。


 婿養子として我がアルベール子爵家に婿入りする事になるのだけれど、王太子を怒らせ国外追放される。そして、アルベール家はお家潰しとまではいかずとも降爵され男爵家となり、一生旦那の事で後ろ指を差される事になる。


 そして、王太子とヒロイン、のちの国王と王妃に恐怖心を抱きながら生活する未来が待っているのだ。


 そんな事は絶対にごめんだ。私だけならまだいい、お父様とお母様まで巻き込むのだけは絶対に避けたい。


 けれど、どうしたものか。


 お母様の姉はベルナール侯爵家の夫人だから、彼とはいとこ関係にある。だからすぐに縁談話を持ってこられたのだと思う。けれど、私は下位貴族であり今回婚約破棄されたメルリアナ嬢のグループにいた令嬢。他の殿方、となると簡単にはいかない。



「見ない間にまた美人さんになったね。もう19だっけ。今日のお洋服も似合ってるよ。僕が来るからっておしゃれしてくれた?」


「……はは」



 別におしゃれとかしていませんが。


 普通のご令嬢なら、この褒め言葉と微笑みでノックアウトなのだろうけれど……私は全くもってときめかない。


 けれど、これは我が家の命運がかかった縁談話。お母様の姉が侯爵家に嫁いでいるから一応繋がりはあるけれど、そこまで強いわけではない。もしこの家に何かあったとしても、ベルナール侯爵家がそっぽを向いてしまえば終わりなのだから。


 だから、上位貴族の子息が婿養子となるならそっぽを向く事は出来ないはず。上位貴族なのだから、世間体を気にするはずだから。そうすれば、何かあっても大体は助かるはず。



「で、次のデートはいつがいい?」



 ……デート?


 右から左に聞き流していた私も悪かっただろうけれど、まさかいきなりデートを言い渡されるとは思わなかったわ。


 私達は一応いとこではあっても、前に会ったのは……いつ、だったかしら。彼は今27歳らしいけれど、学園卒業後だったから、恐らく彼が20歳くらいの時だったかしら。となると、私は12歳?


 それから全然顔を合わせていなかったから、そこまで親しい仲、というわけではない。顔を合わせた時だって、ちょっと挨拶をしたくらいだったはず。


 それなのに、いきなりデート……



「最近人気のブティックに連れていってあげるよ。次のデートで着る洋服、買おっか」



 ……私、何も言ってないような気がするのだけれど。いつがいい? と聞いてくるという事はもう私がデートに行く事が彼の中では決定されているのね。結構強引すぎるような気がするのは私だけかしら。私、相手の意見を聞かずに勝手に決める人、苦手なんですけど。



「あぁ、そういえば……リトナ夫人が近々パーティーを開くらしいんだ。ローズは知ってる?」


「……はい」


「と、いう事は招待状は来たって事だよね? なら、僕がパートナーになってあげるよ」



 ……上から目線なところが非常に腹が立つ。しかも、招待状が来なければリトナ夫人がパーティーを開く事は知ることが出来なかったという事よね、今の言い方で言うと。


 確かに今は婚約破棄の件があってパーティーや社交界で顔を出す事が皆出来ないけれど、最新の情報が手に入れられないほどの家ではないのですが。実に腹立たしいわ。


 それに、リトナ夫人のパーティーだなんて正気? リトナ夫人がどんな方か分かっていて言ってるのかしら? あんな恐ろしいところに私を連れて行くですって? 頭がおかしいの? あぁ、そういえば小説でカロリーヌに手を出すほどのお馬鹿さんだったわ。



「パーティーは――」


「……」



 私は黙ったまま、話はどんどん進んだ。


 さも当然のように。


 確か、小説で出てくるロランも結構強引ではあった。カロリーヌに言い寄る時も。これで女性達に人気があるだなんて、疑ってしまうわね。騙されているのではなくて? それか、上位貴族である侯爵家の子息だから? でも、家督は継げない次男だし……


 よく分からない……この男のどこがいいのか……これが俗にいう『面食い』というやつなのね。


 内心ため息を吐きつつも、笑顔は絶やさなかった。得意げに話してくるけれど、この人は一体何を考えているのか聞きたいところね。


 優しくすればいいというだけの女に思われているのであれば……腹は立つけれど。他の女性と一緒にされては困るわ。



「いい?」


「……はい」



 最後の最後でそう聞かれたけれど、もう遅い。


 ここは、仮病を使うべきね。えぇ、それがいいわ。王太子殿下、この男を国外追放にして正解だったわ。今すぐにでも国外追放しちゃいましょう。


 そして私は……近くに立つメイドに視線を送ったのだ。


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