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全知の脇役令嬢は不幸な未来をぶっ壊す  作者: 楠ノ木雫


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第二十六話 嵐の前の静けさ ③


「――なるほど、それは困りましたねぇ……」



 白薔薇の茶会から数日後、ブランシス大公邸にとある方が来訪された。私が招待し招いたのは……ラユース辺境伯。



「ただでさえ関税が増税されることが決まってしまい困り果てているというのに……」


「心中お察しいたしますわ」



 お茶会の最後にリトナ夫人から報告された、イシス子爵の密輸疑惑。これはまだ公に発表されておらず、すぐにラユース辺境伯にお伝えした。彼に情報提供した理由は、一つ。



「このままではイシス子爵領は国に返上される事になります。となれば、この〝列車計画〟に王室が加わってしまう事になる。試運転前まで来ていたのですから、さすがにこれは黙っていられません」



 列車計画。それは小説にも出てきた。この世界には〝電力〟というものがある。この列車計画は、電力を用いた貨物列車を貿易業に導入するというもの。


 貿易業の荷運びの最適化を図るためにラユース辺境伯が開発したもので、領地で一番近く果樹産業を行っているイシス子爵と契約を結び列車を動かすために必要なレールを敷く工事を時間をかけて進めていた。


 今回関税が増税される事となり、彼らはきっと増税前に列車を導入したいと考えている事だろう。そうすれば、これまでかかっていた荷運びなどにかけていた経費を削減できるのだから。


 けれど、これに国が絡んできてしまうと面倒なことになるし増税前に導入する事が出来なくなる。それに何より、このままではこの計画に資金すら費やさなかった王室に利益を分ける事になってしまうのだから、ラユース辺境伯とイシス子爵はいい顔をしないだろう。


 だからラユース辺境伯は私の情報提供を受け、冗談じゃないといち早くこちらに出向いた。


 私としても、この状況はあまり都合はよくない。



「実は私、その列車というものに大変興味がありますの。それに、辺境伯にはお世話になっておりますし……もしよろしければその事業に一枚噛ませていただきたいですわ」


「ほぉ……なるほど、それは心強いですな。大公妃殿下のお力添えをいただけるとは大変光栄です」



 私はまだ大公家に嫁いだだけの元下位貴族の子爵令嬢。そんな私が出来るものと考えると……辺境伯はきっと私の力量を図っているでしょうね。ここで大公殿下が加わってしまうのは少し骨が折れるでしょうし。


 でも、お困りな事は事実。となれば……



「お力になれるかどうかは分かりませんが……」



 そう言いつつ、近くにいる使用人に目配せを。そして、この客間から出ていくところを確認する。


 そして、数分後にこの部屋に入ってきた者を見た辺境伯は……



「お久しぶりでございます、ラユース辺境伯」


「……はは、これはやられましたな。流石、ブランシス大公妃殿下だ……久しぶりだね、イシス子息(・・・・・)



 使用人が連れてきたのは、20代くらいの男性。今回密輸疑惑をかけられたイシス子爵の嫡男だ。そして今、イシス子爵家の当主だと主張するものであるシグネットリングを付けている。という事は、彼はイシス子爵の代理という事になる。



「さて、どこから話し合いましょうか。まずは……海賊?」


「……はっはっはっ! やはり敵いませんなぁ……――敵に回したくないお方だ」



 ウェルディエ・ワインズの所有者としても、この列車計画に国が関わってしまうのはあまり気分が良くない。それに、ラユース辺境伯には実家の事もあるし、大きな恩を売っておくのもいいかもしれない。……ラユース辺境伯の貿易業もそうだし、彼自身にも。


 敵に回したくない、というセリフは私が言いたいくらいだ。


 さて、これからどうなるかしら。


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